法政大学

「パイロット」と「飛べるエンジニア」を育成する航空操縦学専修――法政大学

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2008年に開設された、理工学部機械工学科航空操縦学専修は、航空のメカニズムを学ぶだけではなく、実際に航空機を操縦し、大空を翔ることで、専門的、実学的に工学のカリキュラムを履修することができ、卒業時には理工学士の学位を取得することができる。
大学4年間で自家用操縦士および事業用操縦士免許の取得を目指しているが、パイロットになるという道だけではなく、機械工学の高度な知識と「自家用操縦士」免許を活かし、航空業界や製造業で「飛べるエンジニア」として学んだ知識を生かす道も開けるのが特徴。
パイロットを養成するだけではなく、機械+航空の素養を持ち航空産業エンジニアとして航空業界を支える「飛べるエンジニア」を育成するために、堅実で多様なカリキュラムを組んでいる。

1.航空操縦学専修カリキュラムの概要
 同専修では、3年次までパイロット・エンジニア共通のカリキュラムで学び、4年次進級時にエアラインパイロットを目指すか、エンジニアとして卒業するかを選択する。3年次の必修科目の中で自家用操縦士のライセンス取得を目指すので、4年次にエンジニアを選択して卒業する場合には「飛べるエンジニア」となる。

 1年次は、ライセンス取得に不可欠な航空無線通信士取得や、操縦士学科試験の「通信」合格を目指した、「航空無線」「航空管制」など航空関連科目を受講しながら、エンジニアの基礎となる力学をはじめとした入門科目を履修する。また、夏期集中科目の「フレッシュマンズフライト」では、初めて操縦桿を握り、5時間の操縦実習に挑む。

 2年次は、航空法や、航空力学、航法、気象など、専門的かつ実学的な分野を学びながら、同時に、熱、流れ、機械、材料といった、4つの主要な力学を学び、航空機に関わる技術を身に着ける。「初等操縦実習1」(1はローマ数字)(必修科目)では、5時間の操縦実習を通じて、航空力学など座学で学んだ内容を追体験し、理解を深める。

 3年次は、2年次までに学んだ、航空力学、航法、気象などの知識の理解をさらに深めながら、自家用操縦士ライセンス取得を目指して「初等操縦実習2・3」(2・3はローマ数字)(必修科目)を受講する。約4カ月、60時間の操縦実習では、ファースト・ソロ(単独飛行)、ナビゲーション、夜間飛行など、やや高度な飛行訓練に臨む。また、最先端の航空機素材であるカーボンファイバーの材料強度や、流体力学など、より専門的なカリキュラムを学ぶ。
 自家用操縦士のライセンス取得を目指し訓練に臨んだ後に、学生は、エアラインパイロットを目指すか、「飛べるエンジニア」として卒業するかを選択する。

 4年次は、エアラインパイロットを目指すと進路判断した学生は事業用操縦士課程に進み、「飛べるエンジニア」として卒業することを選択した学生は卒業研究を行う。

2.「飛べるエンジニア」の意義
 日本は、電器、自動車といったものづくり産業が経済を支えてきたが、これらの産業は成熟し、アジア諸国の台頭に押されつつある。日本の高度な技術力を活かした、付加価値の高いものづくり産業は、現在、航空産業を支えている。
 昨今、日本の製造業においても、自動車メーカーが小型ビジネスジェット機業界へ新規参入したり、旅客機の主要部品の需要が増加したりするなど、航空ビジネスが活況を呈してきており、航空の素養を持ったエンジニアの育成が求められている。
 自動車を製造する技術者は、運転ができて当たり前で、運転をしない人がよい車を開発できるとは思えない。飛行機も同様で、操縦できる人、飛行機の特性がわかる人が飛行機を開発するのは当然である。
 同専修が、理工学部機械工学科に設置されているのには、エンジニアとしての専門教育を受け、その素養を身に着けることを決しておろそかにはしない、という意味が込められている。

3.就職先
 2014年4月の段階で、航空操縦学専修の卒業生で事業用操縦士以降の課程修了者をみると、9割以上がパイロットとして航空会社へ就職している。また、「飛べるエンジニア」として航空機メーカーへ就職している卒業生もいる。
[卒業生の主な就職先]
・パイロット
 ANAウイングス、ジェイエア、IBEXエアラインズ、AIR DO、スカイネットアジア航空(ソラシドエア)、スカイマーク、日本トランスオーシャン航空 他
・パイロット以外
 エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン、JALスカイ、日本貨物航空 他

4.今後の展望
 今後2030年までに、世界で必要と見込まれるパイロットの数の見通しは、2010年と比較すると、全世界では2倍、アジア・太平洋地域に限ると4倍の需要が見込まれている。日本においても2020年開催予定の東京オリンピックを一つのきっかけとして、パイロットの需要の増加が見込まれる。
 また、近年の団塊世代の大量退職という問題に加え、羽田・成田空港の拡張展開や地方空港の開設による国内路線の増大、格安航空会社の台頭などパイロットの需要が急速に増えている。
 そのような状況のなか、日本におけるパイロットの養成は、航空大学校もしくは航空会社が独自に自社で養成する自社養成がそのほとんどを占めていた。そしてここ数年、私立大学パイロット養成コースよる養成が加わってきた。私立大学パイロット養成コースの出身者は、航空会社に入社する際にはすでにライセンスを取得しており、自社養成にくらべてより早く即戦力として活躍できる可能性があることや、航空会社にとってもパイロット養成に必要な経費を低減することができるメリットがあるため、航空会社からは私立大学に大いに期待が寄せられている。

■参考 法政大学の航空操縦学専修について
・同大の航空操縦学の成り立ち
 1929年、日本の大学で初となる法政大学航空研究会(後の航空部)が設立され、その2年後の1931年、小さな複葉プロペラ機の「青年日本号」で、日本初の学生による訪欧飛行が行われた。地図と羅針盤だけを頼りにした有視界飛行でローマを目指す「青年日本号」には、正操縦士として経済学部2年生の栗村盛孝、付添教官として熊川良太郎一等飛行士が搭乗していた。まさに同大の校歌にうたわれている「青年日本の代表者」としての面目を発揮した、そして世紀の快挙と賞賛された飛行であった。
 その後、1944年に法政大学航空工業専門学校(工学部の前身)が設立され、2008年に、法政大学理工学部機械工学科航空操縦学専修が開設された。

・最近の動き――大分訓練所を開設
 2014年8月3日には、法政大学飛行訓練センター大分訓練所が開所された。大分県は同大創立者の金丸鉄氏、伊藤修氏の出身地でもあり、法政大学ゆかりの地に飛行訓練センターが開設されることとなった。

▼本件に関する担当者連絡先
 法政大学理工学部機械工学科航空操縦学専修
 担当: 春原
 TEL: 042-387-6415 
 FAX: 042-387-6048
 月~金9:00~17:00(休憩11:30~12:30)、土9:00~12:00