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学校法人北里研究所の生物製剤研究所が遺伝子組換えジャガイモを用いた経口投与型インフルエンザワクチンを開発

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学校法人北里研究所の生物製剤研究所(埼玉県北本市)では、独立行政法人産業技術総合研究所の北海道センター(北海道札幌市)との共同で、経済産業省による戦略的技術開発委託事業(植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発/植物利用高付加価値物質製造基盤技術開発に係るもの)により、遺伝子組換えジャガイモを用いた経口投与型インフルエンザワクチンを開発した。

 学校法人北里研究所の生物製剤研究所らは、インフルエンザウイルスのHA(ヘマグルチニン)およびNP(ヌクレオプロテイン)タンパク質を発現する遺伝子組換えジャガイモの植物工場における水耕栽培に成功し、以下の特長をもつワクチン原材料であることを確認した。

1.高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」)に対する家禽用追加免疫素材
 近年国内でも被害が頻発しているHPAIに対して、注射型不活化オイルワクチンが備蓄されているが、接種後の経時的免疫減衰に伴い無症状のままウイルスを排出する無症候性キャリアの発生が危惧される等の理由により、その使用は控えられている。
 同所らは国立大学法人北海道大学と共同して、注射型ワクチンによる免疫が減衰した鶏に対し組換えジャガイモを経口投与することで免疫の再誘導を促し、ウイルス排出抑制効果を確認した。この成果により、注射型ワクチンと併用することで無症候性キャリアの問題が解消されるだけでなく、投与の簡便性、安全性および経済性の向上ならびに家禽への負担軽減などの効果が期待できる。
 現在、最適ワクチンプログラムの確立および防御対象ウイルスの検討等の基礎的研究の継続と、実用化へ向けた大量生産及び供給体制の構築を行っている。

2.マウスで亜型交差的防御を確認
 A型インフルエンザウイルスはHAとNAの抗原性により亜型に分類されており、現行のヒト用ワクチンでは亜型が異なるウイルスに対して十分な防御効果が期待できなかった。同所らは国立大学法人北海道大学と共同で、この遺伝子組換えジャガイモもしくは上記抗原を投与したマウスへの感染試験によりA/H5N1インフルエンザウイルスのみならず、異なる亜型のA型インフルエンザに対しての有効性を確認した。将来、同成果を活用することでいわゆる新型インフルエンザへの対策ツールの開発が期待できるだけではなく、「経口投与型ワクチン」実現の可能性を示唆するものと考えられる。

▼本件に関する問い合わせ先
 独立行政法人 産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 植物分子工学研究グループ
 研究グループ長 松村 健
 TEL: 011-857-8492