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岩手県大船渡市で救護活動を展開した「北里大学医療支援チーム」が隊長の手記を公開

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3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に対し、北里大学病院・東病院では医師や看護師、薬剤師等の職員が一丸となって救護活動に携わり、チーム医療を展開した。同大ではこのたび、「北里大学医療支援チーム」隊長の竹内一郎氏の手記を公開した。

 北里大学病院・東病院では、このたびの東北地方太平洋沖地震の救護活動において、医師や看護師、薬剤師等の職員が一丸となり、北里大学のチーム医療を以下の体制で展開した。
 ●3月18日(金)19:20出発~3月21日(月)18:40病院着 第1陣
 ●3月20日(日)23:30出発~3月23日(水)19:10病院着 第2陣
 ●3月22日(火)21:00出発~3月25日(金)20:30病院着 第3陣
 ●3月24日(木)21:00出発~3月28日(月)00:00病院着 第4陣

 チームは医師3名、看護師2名、薬剤師1名、事務職1名の計7名で構成し、車両はもとより、衣・食・住等はすべて自己調達の体制で臨んだ。現地では、大船渡市職員や他の機関からの派遣チームと共同で、救護所を廻っての診察活動、診療協力体制の確立、他施設への患者受入れルートの作成など、多岐にわたる活動を行った。

◆「北里大学医療支援チーム」の隊長の手記
 北里大学医療支援チーム先遣隊の報告
 救命救急医学 講師
 竹内 一郎(支援チーム先遣隊隊長)

 報告の前に、今回の東北地方太平洋沖地震で被災されました皆様、そのご家族の方々に心よりお見舞いと犠牲になられた方々のご霊前に対して謹んでお悔やみを申し上げます。
 北里大学病院では、急性期のDMAT活動を行いました。地震発生の翌日の3月12日と13日に羽田空港滑走路脇に設営した長距離患者搬送拠点(SCU)へ隊員を派遣しました。また、3月14日早朝から3月16日まで、宮城・岩手両県へのドクターカーによる人員派遣を行い、急性期の現地での活動を行いました。
 急性期の活動に続き、DMATとは異なる病院独自支援として「北里大学医療支援チーム」を組織し現地入りしました。北里大学医療支援チームの構成は、医師3、看護師2、薬剤師1、事務職1の7名。先遣隊の主な任務は、ライフラインが寸断された現地での活動拠点の立ち上げ、災害対策本部や現地に入っている様々な機関と調整を行い、我々に続く第2陣、第3陣の現地医療活動を円滑にすることでした。
 3月18日に出発、翌日5時半に現地に到着。到着した午前中に大船渡市役所に北里大学医療支援チームの現地本部を立ち上げ、そこへ寝袋や持参した食料を持ち込み現地活動の拠点としました。
 現地本部と薬備蓄本部の立ち上げ後に、北里大学専用のワゴン車に薬剤・診療器具一式を積み込み出発。大船渡市末埼町の避難所で診療活動を開始しました。元々高齢化の町です。受診者は1日100人から150人で、風邪や腸炎、喘息などの急性疾患以外に高血圧や脳梗塞で処方を受けていた人も大勢受診されました。
 医療支援チームは現地救護所で診療活動を行いながら、薬局機能として薬も自分たちで処方しました。絶対的な人手不足であり、7人で手分けして問診・処方・薬準備、患者への説明を同時に行いました。カルテを作成する暇もなく、メモ用紙に患者さんの最低限の記録を取り、夜、現地本部でカルテの作成と仕分けをしました。
 今後の課題としては、北里大学の現地用カルテを作っておくこと。震災時のカルテなので簡便ながらも、複数の医療チームがそのまま使えるものを考えておく必要があります。我々は他施設に入っていたDMAT日赤チームのカルテを参考に新規のカルテを作成し、その後、第2陣、第3陣も引き続きこのカルテを使用しました。今後、それらをいかに有効に地元の医療機関に引き継ぐかが問題です。
 大船渡市の県立大船渡病院のライフラインは復旧していました。しかし、入院が必要な患者を多数受け入れていて、院内スタッフは不眠不休で働いており、スタッフの休息時間の確保も大きな問題と感じました。我々先遣隊は、大船渡病院の救急医師と連絡を取り、救護所の診療で入院が必要な患者の受け入れルートを確保し、大船渡病院で対応不可能な急性心筋梗塞などの重症患者をヘリで岩手医大へ搬送することとなりました。
 日々救護所を回る診療、救護所に足を運べない在宅の人々のお宅を数人で回る活動、そして災害対策本部に詰めている人々の診察も同時に行いました。しかし、救護所の医療活動はあくまでも地元が復興してくるまでの「つなぎ」であり、今後大事なのは地域の核となる医療機関・薬局の決定です。避難所からそこへの送迎方法などを考え、地元の核となる医療機関への継続した支援を行う必要があります。一時しのきではなく継続的な態勢を「地元が」とれるように、今後とも、大船渡医師会、県立大船渡病院、地元薬局と協力しながら地元の意向に沿った復興に向けて支援の継続が不可欠であると実感しています。

■北里大学医療支援チーム先遣隊
 竹内一郎(救命救急センター、日本DMAT隊員)、山本賢司(精神神経科)、狐崎雅子(小児科)、
 斉藤耕平(看護師)、戸田はるか(看護師)、佐々木寿子(薬剤師)、金子弘幸(事務職)

▼本件に関する問い合わせ先
 学校法人北里研究所 法人本部総務部広報課
 〒108-8641 東京都港区白金5-9-1
 TEL: 03-5791-6425
 E-mail: kohoh@kitasato-u.ac.jp

2099 現地へ持ち込んだ車両(医薬品を積み込み巡回)

2100 大学から現地へ持ち込んだ医薬品等

2101 救護所での診察風景

2102 毎朝、自衛隊から給水を受けるのも日課