北里大学

北里大学の学生約1,100人が一堂に会し、「オール北里チーム医療演習」を実施――テーマには「大災害時の避難所における維持治療」も

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医療系4学部と2専門学校を擁し、14に及ぶ医療専門職を育成する教育を展開している北里大学では、5月6日、7日の2日間にわたって「オール北里チーム医療演習」を実施。当日は学生約1,100人が一堂に会し、医療に関するさまざまなテーマについて議論を重ね、求められるチーム医療のあり方などを発表した。今年は3月11日に発生した東日本大震災を受け、テーマの一つである「大災害時の避難所における維持治療」にも力が入った。

 近年の生命科学、医学の進展に伴って医療は急速に高度化・細分化している。また、疾病構造や人口構造も大きく変わってきており、医療は複数の医療専門職の知を結集して行うことが必要とされている。
 さらに、医療に対する社会のニーズも大きく変化してきている。単に病気を治すばかりでなく、どのように診断・治療が行われるかというプロセスや倫理的、心理的、社会的な側面も含めた対応が必要になるなど、医療の質が大きく問われている。このように、患者を中心にした良質の医療を実践するためには、多種類の医療専門職の協働(チーム医療)が不可欠であり、そのための優れた人材の育成が急務である。

 北里大学では医療系4学部と2専門学校を擁し、14に及ぶ医療専門職を育成する教育を展開している。また、大学附属の4病院と連携した臨床教育も大きな特徴となっている。これらの特性を生かし、2006年に「チーム医療教育プログラム」を教育面での重点事業として推進することを決定し、具体的な取組みとして「オール北里チーム医療演習」を実施してきた。
 
 6年目となる今年度の「オール北里チーム医療演習」は、5月6日、7日の2日間にわたって開催。学生約1,100人が一堂に会して、異なる学部の学生約10名からなる混成チームを110編成し、各チームに1名ずつ配置した教員をファシリテータに、相模原キャンパス全体を使ってチームディスカッションを行うという大規模な演習を実施した。

 同演習では毎年テーマの一つとして「大災害時の避難所における維持治療」を実施している。これは、湘南沖の海底を震源としたM7.8クラスの大地震が発生したという設定で、避難所にいる人々を対象にチーム医療を行うというもの。津波による二次被害の発生や、余震が続く避難所の生活における健康被害などを想定に入れて行うこのプログラムは、3月11日に発生した東日本大震災に重なる部分も多い。
 北里大学病院・東病院ではこのたびの震災に対し、医師や看護師、薬剤師らが現地でチーム医療を展開している。学生は医療人として災害時に現場活動するためには学生時代の経験が大切との認識を新たにした。

■「大災害時の避難所における維持医療」をテーマに取り組んだあるチームの学生の意見
 東日本大震災の被災地支援に赴いた講師をファシリテータに、現場での行動イメージを膨らませつつディスカッションを行ったチーム。
●薬学部6年(男)
「さまざまな職種について学ぶメンバーがいたので、それぞれの視点に立った考え方を知ることができた。チームとしてディスカッションを行い、ひとつのものを作り上げていくことの大切さを学んだ」
●看護学部4年(女)
「先日の東日本大震災を意識して実習に取り組んだ。もしまた次に大きな震災が起こったときには、自身も看護に携わることになるかもしれない。その場面を想定しながら他職種のメンバーと、自身の役割について考えた。私は5月9日から北里大学病院で実習が始まるが、今回学んだことを現場で活かしたい」
●医療衛生学部4年(男)
「他の医療職種の役割を知ることができたほか、災害救助や支援には自衛隊、民生委員、ボランティアの方々なども関係することを知り、医療人になる身として視野を広げるいい機会になった。それぞれの連携により初めて質の良い医療が提供できることを学んだ」
●保健衛生専門学院臨床工学専攻科1年(男)
「高校生のときに新潟県中越沖地震でボランティアを行った経験を思い出しながら、今回の演習に臨んだ。今後災害が発生した際、またボランティア活動を行うときには、他職種や地域との連携の重要性を意識し、もっと自身の活動の幅を広げたいと思う」

※参考記事:
 岩手県大船渡市で救護活動を展開した「北里大学医療支援チーム」が隊長の手記を公開
 http://www.u-presscenter.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=2775

◆平成23年度「オール北里チーム医療演習」―より安全で良質な医療の実現を求めて―
【開催期間】
 5月6日(金)~5月7日(土)
【開催場所】
 北里大学 相模原キャンパス
【対象学生】
 薬学部、医学部、看護学部、医療衛生学部、北里大学保健衛生専門学院、北里大学看護専門学校より約1,100名
【担当教員】
 110名
【チーム医療教育のGIO(一般目標)】
 医療上の問題を解決し、患者を志向した質の高い医療の提供を目標に、チーム医療の構成員として自身の専門性を活かし積極的に医療に参画できるようになるために、医療の流れ、医療の構成員、チーム医療に関する基本的知識、技能、態度を修得する。
【チーム医療教育のSBO(到達目標)】
 (1)患者の診療過程を理解し、そこに携わる職種を列挙できる。
 (2)各職種の専門性、役割および責任を相互に関連づけて説明できる。
 (3)チームで取組むべき事例を挙げ、職種毎に問題点を明確化し、
    自らできること、やるべきことを列挙できる。
 (4)チーム医療とは何かを討議する。
 (5)チーム医療の目標を説明できる。
 (6)チームにおける患者の役割を説明できる。
 (7)チーム医療の立場にたって、医療を考えることができる。
 (8)チームの構成員とコミュニケートできる。
【チームディスカッションのテーマ一覧】
 (1)救急医療:心筋梗塞患者の急性期治療
 (2)大災害時の医療:大災害時の避難所の維持医療
 (3)感染:インフルエンザの流行
 (4)がん医療1:食道がんに対する集中的治療
 (5)がん医療2:末期がん・骨転移
 (6)臓器移植:腎移植―糖尿病患者の合併症
 (7)高齢者医療:転倒後緊急搬送された、認知障害のある女性高齢者
 (8)生活習慣病:メタボリックシンドローム
 (9)周産期医療:妊娠高血圧症候群・母子のケア

▼本件に関する問い合わせ先
 北里大学教学センター
 〒252-0373 神奈川県相模原市南区北里1-15-1
 TEL: 042-778-9725
 E-mail: gakuji@kitasato-u.ac.jp
 http://www.kitasato-u.ac.jp/

2168 「大災害時の避難所における維持医療」をテーマに取り組んだチームのメンバー

2169 チームディスカッションの様子

2170

2171 発表会に向けて作成した模造紙の1枚

2172 演習後に実施された合同懇親会の様子