東邦大学

東邦大学の院生らによる論文がアメリカ化学会の「2012-13 Virtual Issue」に選出 ――ケージド核酸にモジュール化の考え方を適用したプラットフォーム分子の開発

大学ニュース  /  教育カリキュラム  /  先端研究  /  学生の活動

  • ★Facebook
  • ★Twitter
  • ★Google+
  • ★Hatena::Bookmark

東邦大学大学院理学研究科 生物分子科学専攻 古田研究室(古田寿昭 教授)所属の寺岡葵さん(博士後期課程3年)と真鍋香織さん(博士前期課程修了生)が中心となって研究した論文が、世界最大の化学会であるアメリカ化学会のVirtual Issue (注目論文:核酸化学分野)に選ばれ、「Nucleic Acids – Chemistry and Applications」の号に掲載された。

 アメリカ化学会では多数の学術雑誌を出版しているが、そこに掲載されている膨大な数の論文の中からトピックごとに注目の論文を選び、Virtual Issueとしてまとめている。2012年から2013年にかけてJournal of the American Chemical Society、The Journal of Organic Chemistry、Organic Lettersの3誌に発表された核酸化学に関する論文から「Nucleic Acids - Chemistry and Applications」の号がまとめられ、その25報の論文の中に、寺岡さんと真鍋さんが中心となって研究した論文が選ばれた。

 古田研究室では、細胞内あるいは細胞間の情報のやりとりを、高い時間および空間分解能で操作し、リアルタイムで解析する研究手法を開発しており、「細胞機能を制御するケージド化合物の開発」を主な研究テーマとしている。このテーマは生きた細胞内で狙った遺伝子の働きを自在に操ることを目指すもの。その成果は生命科学の基礎研究への貢献や、疾患関連因子の生理機能解明等への応用が期待される。

 ケージド化合物とは、生理活性分子に光で働くスイッチを付けて〔ケージに閉じこめる〕、その活性を光でオンにできる〔ケージから出て機能を発揮する〕機能性分子のことで、付ける場所・機能に応じたスイッチを有機合成により作成する。これまでの研究で、核酸に光で働くスイッチを付けてケージド核酸にすることに成功している。しかし、スイッチを付けても完全オフの状態を作り出せない場合があること、狙った遺伝子だけにスイッチを付けることが困難なこと、生きた細胞内で期待通りに作動するとは限らないことなど多くの課題が残されている。従来の方法では、これらの課題をクリアするために多段階の合成を要するため多大な労力と時間が必要で、しかも必ずしも目的を達成できるとは限らないという問題があった。

 今回選出された論文(※1)は、ケージド核酸にモジュール化の考え方を適用して、1段階の反応だけで多様な機能性を持たせられる共通のプラットフォーム分子(NHS-Bhc-hydrazone)を開発した成果によるもの。NHS-Bhc-hydrazoneを用いるとケージド遺伝子に様々な機能を容易に導入可能であることを示し、また従来のケージド核酸合成法の問題も解決した点が評価された。また、この研究成果で合成したBio-Bhc-ケージドDNAにおいては、その性能を哺乳動物細胞で発揮することが明らかになっている。(※2)

(※1)T. Furuta, K. Manabe, A. Teraoka, K. Murakoshi, A. Ohtsubo, A. Suzuki, Design,synthesis and photochemistry of modular caging groups for caged nucleotides, Org. Lett. 14, 6182-6185 (2012).
(※2)A. Teraoka, K. Murakoshi, K. Fukamauchi, A. Z. Suzuki, S. Watanabe, T. Furuta, Preparation and affinity-based purification of caged linear DNA for light-controlled gene expression in mammalian cells, Chem. Commun. 50, 664-666 (2014).

▼本件に関する問い合わせ先
 東邦大学 経営企画部 広報担当 森上 需
 〒274-8510 千葉県船橋市三山2-2-1
 E-mail: press@toho-u.ac.jp
 TEL/FAX: 047-494-8571

5077 ケージド核酸