立命館大学

常識を覆す新発見 高強度と高靭性を両立させる金属材料の創製法を開発 ~医療・航空宇宙分野での金属機器の安全性・耐久性を向上

大学ニュース  /  先端研究

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立命館大学理工学部機械工学科の飴山惠(あめやま けい)教授が、金属材料の力学特性を飛躍的に向上させることが可能な、世界初の材料創製法の開発に成功した。

 現在、医療分野(インプラント、人工関節、微小医療器具など)や航空宇宙分野(ロケット、人工衛星)など、より高品質な金属材料が求められる分野において、安全性や耐久性を担保しつつ、部品を小型化・軽量化することが求められている。一方、従来の常識では金属材料は様々な方法で高強度化しても延性(伸び)を損なうといった強度と延性のトレードオフが避けられず、当然、靭性(壊れにくさ)も低下してしまうという課題から、金属材料を使った部品の小型化・軽量化には限界があった。

 今回、開発した技術は「調和組織制御法」という金属材料創製法である。創製プロセスは、(1)原料金属粉末の表面超強加工、(2)成形・焼結、(3)仕上げ。従来の粉末治金法との違いは、(1)の表面超強加工のみである。原料金属粉末の表面にのみ大きな歪を与えることで、粉末表面にナノメートル寸法の超微細結晶粒組織が形成される。その後、(2)の成形・焼結を行うことで、微細結晶粒のネットワーク組織が、粗大結晶粒を包み込む構造を持った金属材料を創製することができた。微細結晶部分が高強度を発揮し、粗大結晶粒が延性を保つことで、全体として高強度と高靭性を両立させるというメカニズムである。

 これまでに、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Co-Cr-Mo合金(コバルト合金)、SUS(ステンレス鋼)などほぼ全ての金属材料において、従来の創製法に比べ、高強度と高靱性の両方を付与する(高める)極めて有効な方法であることが明らかとなった。例えば、生体材料としても使われる純Tiの場合、従来手法と比較して、引張強さ:1.5倍、靱性:2.2倍、と強度と靱性の両方が同時に向上することがわかり、高信頼性が実証された。2014年4月より、金沢大学医薬保健研究域の山岸正和・教授と、本材料創製法で加工したCo-Cr-Mo合金、純Ti等の金属材料をもとにステントを試作し、将来の実用化を見据えた共同研究を開始する予定である。
 
 今回の研究は、JST産学共創基礎基盤研究プロジェクトにて実施した。また、国際的な学術雑誌Material Transactions誌(2014年1月号)、Material Science & Engineering:A誌(2014年3月号)に掲載されるなど、20編以上の国外・国内の学術雑誌に掲載された成果をまとめて報告するものである。3月22日には日本金属学会2014年春季大会にて発表することも予定している。

▼本件に関するお問い合わせ先
 立命館大学リサーチオフィスBKC
 TEL: 077-561-2802
 立命館大学広報課
 TEL: 075-813-8300

5139 調和組織制御法で創製した金属材料

5140 調和組織制御法で創製した金属材料を持つ飴山教授