大学通信

コンドル、ヴォーリズ、村野藤吾から現代の国際的な受賞作品まで、大学のさまざまな建築物

ニュース特集

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大学の中には、著名な建築家による校舎や歴史的な価値の高い建築物などを所有しているところが多く、有形文化財などに指定されている場合もある。また、近年竣工した建物や、所属している教授が手掛けた施設などの中にも、その機能やデザイン、省エネ性・持続可能性などが評価され、表彰されたものがある。今回はその中から、大学プレスセンターにリリースが寄せられたもの(一部、中学・高等学校も含む)を中心に紹介する。

北海道科学大学(札幌市手稲区)の中央棟(E棟)が、イタリアのタイルメーカーCASALGRANDE PADANA社が3年に一度開催している''international architecture contest'' grand prix 2016/2018 公共施設部門特別賞を受賞した。同コンテストはタイルを用いた建築に対して、その使われ方や革新性などを審査し、クオリティーの高いデザインを表彰するもの。第11回は世界中から1200件以上の応募があった。(2019.06.27)
( https://www.u-presscenter.jp/2019/06/post-41791.html )

清泉女子大学(東京都品川区)の本館(旧島津公爵邸)は、1917年(大正6年)に建築されたルネサンス様式の洋館で、鹿鳴館や旧ニコライ堂などを手掛け、辰野金吾らを育てた英国人の建築家ジョサイア・コンドルによるもの。建設当時から現存するステンドグラスなどその歴史的価値は高く、通常は非公開だが、毎年、春と秋に一般公開している。(2019.07.11)
( https://www.u-presscenter.jp/2019/07/post-41858.html )

東京都市大学(東京都世田谷区)工学部建築学科の手塚貴晴教授(同大卒業生)らが設計した「ふじようちえん」が、英ガーディアン紙の選ぶ「The best architecture of the 21st century 21世紀最高の建築25点」に選定された。500人の子供のために作られた同幼稚園は、外周183mの楕円形の内部が緩やかに仕切られた一体空間となっており、一つの村になるように想定されている。これまでにも2017年「モリヤマRAIC(王立カナダ建築家協会)国際賞」など多くの賞を受賞している。(2019.10.01 / 2017.10.03)
( https://www.u-presscenter.jp/2019/10/post-42324.html )
( https://www.u-presscenter.jp/2017/10/post-38087.html )

法政大学市ケ谷キャンパス(東京都千代田区)では、2000年に竣工したボアソナード・タワーを始め、近年は富士見ゲートが完成するなど、その再整備が進められている。そうした中で今年2月、新校舎「大内山校舎」の竣工に伴い解体される55・58年館のお別れイベントが開催された。建築家の大江宏が手掛けた55・58年館は、竣工当時から日本有数のモダニズム建築として高い評価を受けてきた同大を象徴する校舎で、60年以上にわたり学生・教職員と共に大学の歴史を築いてきた。また、新たに完成した大内山校舎にも、外観や校舎内に55・58年館を継承したデザインが散りばめられている。(2019.01.24)
( https://www.u-presscenter.jp/2019/01/post-40864.html )

明星大学(東京都日野市)理工学部総合理工学科建築学系の小笠原岳研究室がデザインした厩舎・福祉施設「TCC Therapy Park」が、2019年度「グッドデザイン賞」および、第13回キッズデザイン賞「審査委員長特別賞」を受賞した。滋賀県栗東市に建設された同施設は、引退した競走馬の厩舎であるとともに、地域の子ども達と馬が触れ合う福祉施設という2つの目的を複合した日本初の空間。引退後の競走馬の処遇に関する問題と児童発達支援プログラムを融合させた新規性のある取り組みや、それに応じた施設の特徴などが評価されての受賞となった。(2019.11.01)
( https://www.u-presscenter.jp/2019/11/post-42533.html )

金沢工業大学(石川県野々市市)本館(現・1号館)が建築物としての歴史的価値を評価され、DOCOMOMO Japan(※)による「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定された。設計者は丹下健三の弟子である大谷幸夫で、1969年(昭和44年)竣工。大谷は学園という人間形成の場について、教室というフォーマルなもの以外の部分も重視。学生、教員、事務職員がインフォーマルな相互の接触を誘発される空間として、可能な限り大きな広場を建築内部に創り出すことを提案した。(2019.08.30)
( https://www.u-presscenter.jp/2019/08/post-42153.html )

関西大学千里山キャンパス(大阪府吹田市)には、日本の近代を代表する建築家の一人である村野藤吾による建物群が数多く残っている。もとは図書館であった簡文館(2018年大阪府指定文化財に指定)や、円神館、誠之館など、その設計による建造物は約40棟にのぼり、半数が現存している。このたび、DOCOMOMO Japan(※)の「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選定されたことを受け、12月7日(土)に記念シンポジウムを開催。また、村野建築を紹介する建物見学ツアーも実施する。(2019.11.25 / 2018.03.29)
( https://www.u-presscenter.jp/2019/11/post-42732.html )
( https://www.u-presscenter.jp/2018/03/post-39134.html )

学校法人関西学院(兵庫県西宮市)と近江兄弟社グループ(近江兄弟社中学校・高等学校の設置者である学校法人ヴォーリズ学園など6法人)が、12月4日に連携協定を締結した。その目的として、学校間交流や学生の実習・インターンシップなどと並び「ヴォーリズ建築」に関する共同研究が挙げられている。1905年(明治38年)に来日したウィリアム・メレル・ヴォーリズは、国内に1500件以上の建築物を残すとともに、キリスト教の伝道者としての顔や実業家としての顔も併せ持つ人物。関西学院に関しては、発祥の地である原田の森の校舎や、西宮上ケ原への移転に際して甲山山頂と時計台、中央芝生、正門、ほぼ対称に配置されたキャンパスの全体設計、スパニッシュ・ミッション・スタイルを基調とする各校舎のデザインなどを手掛けている。ヴォーリズが近江兄弟社の創設者であることから、このたびの協定締結に至った。今後は教職員や生徒の相互交流等と共に「ヴォーリズ記念館」の活用による町おこしや、ヴォーリズ建築に関する共同研究などを進めていく。(2019.12.04)
( https://www.u-presscenter.jp/2019/12/post-42813.html )

甲南女子中学校・高等学校(神戸市東灘区)の村野藤吾が手掛けた校舎から、このたび「管理棟」「特別棟」「体育館」「体育研究室」「講堂」「守衛室」の6件が登録有形文化財(建造物)へ登録される見込みとなった。建物としての評価はもちろん、これまでの保存・活用の取り組みが認められてのものだと言える。甲南女子学園では、2020年に迎える創立100周年記念事業の一環として校舎の文化財指定申請を行っており、学園としては2018年度の甲南女子大学校舎(「管理棟」「3号館」「渡廊下」)に続く2例目となる。(2019.11.16)
( https://www.u-presscenter.jp/2019/11/post-42676.html )

※DOCOMOMO(ドコモモ)は、20世紀の建築における重要な潮流であったモダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際学術組織。DOCOMOMO Japanはその日本支部。

■他にもある大学の名建築
 東京にある大学の主な建築物としては、リリースが寄せられたもの以外でも、後に総長も務めた内田祥三による東京大学・安田講堂、東京女子大学のアントニン・レーモンド設計による建築群、チューダー・ゴシック様式の早稲田大学大隈記念講堂などがある。
 関西に目を向けると、京都には武田五一による京都大学の百周年時計台記念館、D.C.グリーンによる同志社大学の礼拝堂や彰栄館などがある。また、龍谷大学本館(大宮学舎)は、外観上は石造や煉瓦造に見えるが実際は木造の「擬洋風建築」。洋式の建築技術が日本に定着する以前の貴重なものだ。
 阪神間もモダニズム建築が多く残る地域で、神戸女学院大学の岡田山キャンパスはヴォーリズによる代表作のひとつとして名高い。また、武庫川女子大学の甲子園会館(旧甲子園ホテル)は、フランク・ロイド・ライトの弟子である遠藤新が手掛けたもの。ライト本人が手掛けた日本の建築物には自由学園明日館や旧帝国ホテルなどがあるが、甲子園会館は「東の帝国ホテル、西の甲子園ホテル」と並び称されるものだった。