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東京薬科大学

東京薬科大学が、若くして痛風を発症する遺伝子要因を特定――痛風ハイリスク群の早期発見と発症予防に期待


防衛医科大学校の松尾洋孝講師、中山昌喜医官、東京薬科大学の市田公美教授、および東京大学医学部附属病院の高田龍平講師らの研究グループは、痛風患者の発症年齢と尿酸を運ぶ輸送体の遺伝子解析から、若くして痛風を引き起こす主な要因が「ABCG2」という尿酸輸送体の特定の遺伝子変異と強く関連していることを発見した。これにより、痛風を発症するリスクの高い人を早期に見つけて、新たな視点から予防することが可能になる。この成果は、2013年6月18日(英国時間)にネイチャー・パブリッシング・グループのオンライン総合科学雑誌「Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ誌)」に掲載される予定。


【研究の詳細】
 痛風は、激しい関節痛をもたらすだけではなく、高血圧や腎臓病、心臓病、脳卒中などのリスクとなることが近年明らかになってきています。また痛風は、日本人男性の60人に1人が発症すると言われる国民病の一つです。以前は、中年以降の男性が多く発症する病気であると考えられてきましたが、最近は20代以下での発症も見られています。この原因としては、食生活などの生活習慣が関与していると考えられますが、同じような生活習慣にもかかわらず、若くして痛風を発症する人としない人が存在することなどから、遺伝因子の関与も推定されてきました。

 防衛医科大学校の松尾洋孝講師、中山昌喜医官、四ノ宮成祥教授、東京薬科大学の市田公美教授、および東京大学医学部附属病院の高田龍平講師らの研究グループは、これまでに尿酸の排泄に働く尿酸輸送体ABCG2遺伝子(注)が痛風・高尿酸血症の主要な原因遺伝子であることを見出しました(Science Translational Medicine 1, 5ra11, 2009)。また、ABCG2を詳しく調べることにより、腸管からの尿酸排泄機能の低下が、痛風の原因となる高尿酸血症をもたらすことを発見しました(Nature Communications 3, 764, 2012)。

 そこで今回、同研究グループは、ABCG2の遺伝子変異による尿酸排泄の機能低下が痛風の発症にどのような影響を与えるのかを検討しました。まず、みどりヶ丘病院(清水徹副院長)及び東京慈恵会医科大学附属病院(細谷龍男教授)における705人の男性痛風患者を対象として、ABCG2の機能低下が発症年齢に与える影響を調べました。その結果、ABCG2の遺伝子変異により尿酸排泄機能が低下していると、発症年齢は最大で6.5歳引き下げられることがわかりました(図1を参照)。

 さらに、痛風の既往がなく血清尿酸値が正常(7 mg/dL以下)である男性1,887人を健常者群として、患者群と比較検討を加えました。すると、ABCG2の遺伝子変異がある場合、20代以下での痛風発症のリスクを最大で22.2倍高めることが分かりました(図2を参照)。また、20代以下で発症した痛風患者の約9割(88.2%)にABCG2の遺伝子変異が見出されました。なお、20代以下での痛風発症のリスクは、ABCG2の機能が中程度落ちている場合(機能50%)でも15.3倍、軽度落ちている場合(機能75%)でも6.5倍高められることが見出されました(図2の赤い棒グラフ部分を参照)。このように、ABCG2の遺伝子変異は特に若年齢層での発症を高めますが、若年層に限らず、どの年代でも痛風の発症リスクを高めることも分かりました(最小で2.5倍、50代以降での発症リスクを高めます)。
 
 今回の研究では、最近増えつつある若い痛風患者の遺伝的リスクが明らかになりました。ABCG2の遺伝子変異の検出は比較的簡便な方法で可能であることから、今回の研究により、痛風を発症するリスクの高い人を早期に発見できるという、新たな視点からの痛風の予防が期待されます。そして、特に若い世代の痛風の発症予防は、高血圧や脳卒中の予防にもつながり、痛風による生活の質(Quality of Life, QOL)の低下を防ぎつつ、長期的な医療費の削減にも結びつくことが期待されます。

【用語解説】
注:輸送体ABCG2
 輸送体(トランスポーター)とは、細胞膜などの生体膜に存在し、膜の外と中の物質(栄養分、薬物、毒物など)の輸送を担うタンパク質の総称です。濃度勾配に逆らった物質の移動や、親油性が低く生体膜を受動的に通過できない物質の移動は、輸送体を介した能動的輸送により行われます。輸送体ABCG2は、小腸・腎臓をはじめとする多くの組織に発現しています。抗がん剤を含む多数の薬物や発がん性物質などの細胞内から細胞外方向への排出を行い、異物からの生体防御を担っていることが知られています。
 なお、ABCG2 は「ATP - binding cassette (ABC) transporter, subfamily G, member 2」の略称です。
2009年のScience Translational Medicine誌への発表内容は、2009年11月5日の東京大学医学部附属病院のプレスリリース( http://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/press_archives/20091105.html )をご参照下さい。また、2012年のNature Communications誌への発表内容は、2012年4月4日の東京薬科大学のプレスリリース( http://www.toyaku.ac.jp/news/detail_j/id/1778/ )または同日の東京大学医学部附属病院のプレスリリース( http://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/press_archives/20120404.html )をご参照下さい。

【研究施設と研究者】
 本研究は、日本国内17箇所の研究施設に所属する29名の研究者による、多施設共同研究として実施されました。また、本研究は、松尾洋孝、市田公美、高田龍平、中山昌喜の4研究者が同等に貢献した成果として論文発表しています。
○防衛医科大学校 分子生体制御学講座 松尾洋孝(講師)、中山昌喜(通修医官)、河村優輔、井上寛規、岡田千沙、清水聖子、崎山真幸(研究科生)、千葉俊周(通修医官)、四ノ宮成祥(教授)
○東京薬科大学 薬学部 病態生理学教室 市田公美(教授)
○東京大学医学部附属病院 薬剤部 高田龍平(講師)、鈴木洋史(教授)
○防衛医科大学校 衛生学公衆衛生学 中島宏(講師)、櫻井裕(教授)
 同・数学研究室 中村好宏(准教授)
 同・共同利用研究施設 高田雄三(助教)
 同・医学科学生 小縣開(4年)
○九州大学 生体防御医学研究所 附属遺伝情報実験センター 山本健(准教授)
○東邦大学 理学部 生物学科 及川雄二、丹羽和紀(教授)
○名古屋大学大学院 医学系研究科 予防医学 内藤真理子、菱田朝陽、若井建志
○同・医療行政学 浜島信之(教授)
○聖隷予防検診センター 森厚嘉(所長)
○帝京大学 薬学部 人体機能形態学研究室 細山田真(教授)
○大阪大学大学院 医学系研究科 生体システム薬理学 金井好克(教授)
○東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科 細谷龍男(教授)
○みどりヶ丘病院 清水徹(副院長)

【研究の分担内容】
 研究のデザイン: 松尾、市田、高田(龍)、中山、細山田、鈴木、金井、四ノ宮
 患者解析: 松尾、市田、中山、細谷、清水
 遺伝子解析: 松尾、市田、中山、河村、高田(雄)、山本、井上、及川、岡田、清水、崎山、千葉、小縣、丹羽、四ノ宮
 検体の収集: 松尾、中山、内藤、菱田、若井、森、浜島
 統計解析: 中島、中村、櫻井
 論文執筆: 松尾、市田、高田(龍)、中山、四ノ宮

【発表論文】
 雑誌名: Scientific Reports
 論 文: Matsuo H, Ichida K, Takada T, Nakayama A, et al. Common dysfunctional variants in ABCG2 are a major cause of early-onset gout. Sci. Rep. 3:2014 doi: 10.1038 / srep02014 (2013).
 掲載日: 日本時間6月18日18時/英国時間6月18日10時(オンライン版)
※本論文はオープンアクセスでの出版のため、報道関係者や一般の方も含めて、無料で論文の全文をダウンロードできます。

▼内容に関する問い合わせ先
 東京薬科大学
 薬学部 病態生理学教室 教授 市田公美
 TEL: 042-676-5111(代)(内線2604, 2624)
  E-mail: ichida@toyaku.ac.jp

 防衛医科大学校
 分子生体制御学講座 講師 松尾洋孝、通修医官/1等空尉 中山昌喜、教授 四ノ宮成祥
 TEL: 04-2995-1482(直通)
 FAX:04-2996-5187
 E-mail: hmatsuo@ndmc.ac.jp (松尾)
 aknak@ndmc.ac.jp (中山)
 shinomi@ndmc.ac.jp (四ノ宮)

 東京大学医学部附属病院
 薬剤部 講師 高田龍平
 TEL: 03-3815-5411(内線37514)
 E-mail: tappei-tky@umin.ac.jp (高田)

▼取材に関する問い合わせ先
 東京薬科大学
 総務課法人・広報担当 大坪、松本、葛西
 TEL:042-676-1649
 FAX:042-677-1639
 E-Mail:kouho@toyaku.ac.jp

 防衛医科大学校
 事務局総務部総務課 総務係主任 佐藤
 TEL: 04-2995-1511(内線2111)
 FAX:04-2995-1283
 E-mail: adm018@ndmc.ac.jp
 〒359-8513 埼玉県所沢市並木3-2

 東京大学医学部附属病院
 パブリック・リレーションセンター 渡部
 TEL: 03-5800-9188(直通)
 E-mail: pr@adm.h.u-tokyo.ac.jp




【図1】尿酸輸送体ABCG2の尿酸排泄機能と発症年齢の関係


【図2】痛風の発症年齢と尿酸輸送体ABCG2の機能別にみた痛風の発症リスク

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