立命館大学

立命館大学が、社会ニーズに対応する新しい研究領域の研究センターを設置──「間文化現象学研究センター」「医療経営研究センター」

大学ニュース  /  先端研究  /  産官学連携  /  施設設備

  • ★Facebook
  • ★Twitter
  • ★Google+
  • ★Hatena::Bookmark

立命館大学は、2009年度から社会ニーズに対応する新しい研究領域の研究センター、「間文化現象学研究センター」及び「医療経営研究センター」を設置する。

1. 間文化現象学研究センター
1) 趣旨
 20世紀において、哲学のみならず社会学・精神医学などを含めて一大潮流を形づくった現象学運動の世界的進展により、各国に現象学の研究センターが設立されている。他方、長い研究蓄積を誇るわが国は現象学に軸を置いた研究機関がなく、世界の研究動向に立ち遅れている。

 そこで、立命館大学が日本初の現象学研究センターを設立し、国際連携を推進することによって、世界の研究動向に対応した独自性のある研究拠点構築を図り、国際的な現象学研究の方向性を拓くことを目的として、「間(かん)文化研究センター」を設置する。

2) 概要
[1] 名称と位置づけ
 名称は「間文化現象学研究センター」(英文:Research Center for Intercultural Phenomenology)とする。
 衣笠総合研究機構人文科学研究所のもとに設置する研究センターとする。

[2] 研究内容と特色
 日本初の現象学研究センターとなる本センターは、世界各地の現象学研究センターのなかでも、世界的文化都市京都で間文化性の現象学的解明に力点を置いた研究を展開することを特色とする。
 より具体的には、異文化との遭遇が日常生活のなかで生じるようになって以後、その経験に即した仕方で、その経験そのものの構造、問題、可能性を解明することがますます必要になってきた。しかし、諸文化を単純に比較するというだけでは、諸文化が(外的に)横並びに捉えられてしまい、「異文化」と「自文化」の遭遇がもつ切迫した具体的関係は明らかにならない。

 このセンターは、これをいわば内側から解明するのに最も適した方法としての「現象学」を中心に据える。センターでは、一方でこのテーマが要求する異文化の現象学研究者との交流・連携を実現するが――これによって新分野・新構想の問題意識を共有しつつ、国際的な共同研究の実践経験を蓄積する――、他方で、文化は歴史的継承と歴史形成に深く関わるので、それに対応できる世代間の連携研究体制を整備しつつ――これによって先行世代の研究の批判的継承と、現今の間文化状況に対応した同世代の問題意識の醸成する――、たえず変遷する間文化性の構造・問題・可能性を研究する。
 これによって教育的側面では、一方で世界各地の研究動向と連携しつつ、他方で独自の新分野・新構想研究を長期的に展開していくことのできる間世代性の形成を可能にする。

 研究センターに関係する教員間において、既にコペンハーゲン大学・ソウル大学等海外8大学と定期的なセミナー・研究会などを開催している。この活動を継続しながら、内外の先端的研究者のみならず若手研究者(主に大学院生・ポスドク層)の相互派遣を行い、緊密な連携的研究展開をはかる。その成果を書籍等で出版するとともに、次世代の若手研究者を国際連携の中で育成していく。

 原則として施設設置は行わず、教員および関連する研究者の自立的・組織的な活動を基本とする。

[3] メンバー(職名は3/30現在)
  【氏名   所属学部・職名(専門)】
 谷 徹(センター長)   文学部教授 (現象学)
 加國尚志   文学部教授 (現象学・フランス哲学)
 日下部吉信   文学部教授 (ギリシア哲学・ハイデガー哲学)
 服部健二   文学部教授 (ドイツ近現代哲学・日本哲学)
 北尾宏之   文学部教授 (倫理学)
 亀井大輔   文学部非常勤講師 (デリダ・現象学)
 神田大輔   文学部非常勤講師 (フッサール・現象学)
 青柳雅文   文学部非常勤講師 (批判理論・現象学)
 佐藤勇一   文学部非常勤講師 (メルロ=ポンティ・現象学)
 小林琢自   文学部非常勤講師 (フッサール・現象学)
※10名

[4] 期間
 2009年4月1日~2014年3月31日(5年間)

[5] 今後の予定
 当面5年間(2008-2012年度)、研究を遂行し、その間に現在の海外8カ所の拠点との連携による研究を進めるが、同時に、海外拠点を増やし、研究者の相互派遣などの体制を整える。
 しかし、間文化性は今後ますます喫緊の問題となると予想されるので、今後の期間後はさらに拡大・統合した新体制と新構想をもった研究を推進できるようにする。
 これらの研究成果については、上記の拠点ならびに世界規模の組織である国際現象学学会(OPO;Organization of Phenomenological Organizations)とも連携して、内外に広く公表し、他方で、それらをつうじて次世代研究者を集め、その研究をサポートしていくこととする。

2. 医療経営研究センター
1) 趣旨
 現在の医療機関は、法人としての経済合理性、患者個人の尊厳の問題、一層の公共性が社会から問われており、患者や政府機関、医薬品産業などの利害関係者と関わる医療機関を再構築するための「医療経営」の必要性がクローズ・アップされている。さらに、院外処方など進展によるメディカル法人の運営や介護施設の併用など経営領域はメディカルからヘルスケアに拡大し、再生医療をはじめとする生命科学・医薬分野の進展への対処など、新たな経営上の課題に対応する経営学および生命科学・医薬共同の研究領域としての確立が期待されている。

 本来「医療経営」研究は、プロジェクト志向の課題解決型アプローチ(実務に即した現場志向の研究課題)を必要としており、本研究センターは、経営学、生命科学、薬学の研究者の連携をベースに、医療経営現場における課題解決型の研究を実施していく。

 また、本研究センターでは外部資金研究費の確保と医療現場との研究ネットワークを構築するために、医療経営に関する専門講座を実施している。2008年度は「医療経営講座」を本学東京キャンパスで15講座を開設し、全国から約50の医療機関より延べ250名が受講している。これらによって形成した医療機関とのネットワークを通じて医療経営に関する諸課題を把握し、現場の医療関係者と研究者が一体となって問題解決に取り組む体制を整える。

2) 概要
[1] 名称と位置づけ
 名称は、「医療経営研究センター」(英文:Research Center for Medical and Healthcare Management)とする。
 BKC社系研究機構のもとに設置する研究センターとする。

[2] 研究内容と特色
 医療を狭義のメディカルではなくヘルスケアととらえることで、医療分野だけではなく、福祉介護分野にも幅広く研究対象とし、また、中小医療機関を主たる対象として特色あるプロジェクト研究を行う。
 具体的な研究分野としては(イ)医療経営研究(人事・組織、財務・ファイナンス、経営戦略・マーケティング、医薬イノベーション)、(ロ)次世代医療人材育成プログラム開発、(ハ)国際交流事業とする。
 これらの研究活動を通して、医療経営分野における新たな成功モデルとして「立命館医療経営モデル」の創造を目指す。

(イ) 医療経営研究
 人事・組織部門では「管理者適性タイプとコンピテンシー評価の実証分析等、これからの高齢者有効活用と人事賃金処遇システムの制度設計など医療行政、経済情勢変化にも柔軟に対応できる人事、組織賃金処遇制度の抜本的見直しと再構築」を課題に実践的研究を実施する。
 財務・ファイナンス部門では民間病院の病院格差の分析・研究を実施する。具体的には財務内容が良好な病院とそうでない病院を比較検討し、優良な財務内容を支える要因はどこにあるのかを研究し、その成果をケーススタディとしてまとめていく。
 経営戦略・マーケティング、戦略部門では、患者本位の医療を実現するために先進的な経営を行っている病院に焦点をあてて、綿密な医療現場の調査に基づくケーススタディを行う。
 医薬・イノベーション部門では、国内外で進展している医薬品産業の製品開発や合併・吸収などの状況を、学術的な経営戦略の視点に基づきながら調査する。現在、盛んに重要性が増しているチーム医療の研究も大切である。コアメディカルとの連携、さらには、医師と薬剤師、看護師の医療行為の範囲のあり方も課題となるだろう。そして、今日の医療機関がいかにして医薬品産業との関わりをもちながら、経営改革を実践すべきか、といったことを考察する。

(ロ) 次世代医療人材育成プログラム開発
 介護福祉や医療現場では看護師不足の問題が深刻化している。日本の将来人口推計を考慮すると、看護師人材は広くアジア地域との連携をはかることがその解決策の重要な選択肢となるだろう。不足人材の補填という考え方ではなく、日本の持つ技術をアジアとの交流の中で日本とアジアが共生できる関係を構築することを目的にアプローチすべきだと考えている。具体的なビジネスプランが現場サイドから案件として提案されており、産官学の連携でその支援を行う予定である。
 また、医療経営講座を拡充し医療現場へ大学の持つ知的資産を教授するとともに、医療従事者の持つ問題意識を共有化し研究事業へと発展させる。そのためにも講習会は現在の人事・組織部門に加えて、財務・ファイナンス部門、経営戦略・マーケティング、医薬・イノベーション部門の講座を順次、開催する。

(ハ) 国際交流事業
 看護師人材についてアジア地域との連携をはかることを契機として、アジア諸国の医療関係大学との交流を深めていく。
 原則として施設設置は行わず、教員および関連する研究者の自立的・組織的な活動を基本とする。

[3] メンバー(職名は3/30現在のもの)
  【氏名  所属学部・職名 (専門)  <主たる役割分担>】
 谷口 吉弘[センター長]  生命科学部応用化学科教授 (生命化学) <全体総括>
 齋藤 清一  BKC社系研究機構チェアプロフェッサー (医療経営) <人事・組織部門>
 奥村 陽一  経営学部経営学科教授 (会計学、経営学) <財務・ファイナンス部門>
 松村 勝弘  経営学部経営学科教授 (経営財務) <財務・ファイナンス部門>
 三好 秀和  経営管理研究科教授 (ファイナンス) <財務・ファイナンス部門>
 大西 弘文  経営管理研究科教授 (財務会計) <財務・ファイナンス部門>
 肥塚 浩  経営学部経営学科教授 (経営学) <経営戦略・マーケティング、戦略部門>
 石崎 祥之  経営学部経営学科准教授 (経営学) <経営戦略・マーケティング、戦略部門>
 小嶋 愛  経営学部経営学科助教 (医療経営) <経営戦略・マーケティング、戦略部門>
 柿原 浩明  経済学部経済学科教授 (医療経済) <経営戦略・マーケティング、戦略部門>
 一川 暢宏  薬学部薬学科教授 (医療薬学) <医薬・イノベーション部門>
 藤田 卓也  薬学部薬学科教授 (分子薬物動態学) <医薬・イノベーション部門>
 木村 富紀  薬学部薬学科教授 (病原微生物学) <医薬・イノベーション部門>
 守屋 友加  薬学部薬学科助教 (医療薬学) <医薬・イノベーション部門>
 下妻晃二郎  生命科学部生命医科学科教授 (医療政策・管理学) <医薬・イノベーション部門>
 野間 昭典  生命科学部生命情報学科教授 (バイオシュミレイーション) <医薬・イノベーション部門>
※16名

[4] 期間
 2009年4月1日~2019年3月31日(10年間を予定。但し5年で見直します)

[5] 今後の予定
 上記の研究活動を推進するため、これまでイノベーション・マネジメント研究センターで実施していた医療経営講座を拡充し、医療現場へ大学の持つ知的資産を教授する活動とあわせて、経営学、生命科学、薬学他の研究者と医療従事者の問題意識を共有化した研究プロジェクトの設定と実施を行う。さらに、わが国の緊急課題である看護師人材育成をテーマに、アジア諸国の医療関係大学との交流を深めていく。また、上記活動を通じて薬学部、生命科学部が必要としているインターンシップ受け入れ医療機関との関係確立を図る。