工学院大学

工学院大学を含む国際研究チームが新たな渦巻構造を発見 ~すばる望遠鏡での観測成果をウェブサイトで発表

大学ニュース  /  大学改革  /  先端研究  /  国際交流  /  産官学連携  /  施設設備  /  その他

  • ★Facebook
  • ★Twitter
  • ★Google+
  • ★Hatena::Bookmark

このたび、工学院大学を含む東京工業大学・国立天文台・大阪大学・NASAゴダード宇宙センターの国際研究チームが、すばる望遠鏡搭載の最新鋭観測装置を用い、原始惑星系円盤の観測から新たな構造の存在を発見した。

 工学院大学・東京工業大学・国立天文台・大阪大学・NASAゴダード宇宙センターの研究者を中心とする国際研究チームが、すばる望遠鏡に搭載された最新鋭観測装置「HiCIAO」を用い、原始惑星系円盤の観測を行い、このほど新たな構造の存在の発見に至った。
 これは、惑星のなりたちという大きな謎に迫る新しい糸口を開いたと言える発見である。

 詳細は、下記ウェブサイトにて発表。
○タイトル: 原始惑星系円盤に小さな渦巻き構造を発見
        ― 密度波理論で探る惑星形成の現場 ―
○発表者: 武藤 恭之(工学院大学 基礎・教養教育部門 助教)
○URL: 国立天文台 すばる望遠鏡
 http://www.subarutelescope.org/Pressrelease/2012/04/11/j_index.html
 

▼お問い合わせ先
・研究内容について
 武藤 恭之(むとう たかゆき)工学院大学 基礎・教養教育部門 助教
 電話: 03-3340-1498/ FAX: 03-3340-1648(工学院大学 総合企画部広報課)
 電子メール: gakuen_koho@sc.kogakuin.ac.jp (同上)
※取材については工学院大学総合企画部広報課を通じてお願いいたします

・すばる望遠鏡について
 藤原 英明(ふじわら ひであき) 国立天文台ハワイ観測所 広報担当サイエンティスト
 電話: +1-808-934-5922 / FAX: +1-808-934-5984(米国・ハワイ)
 電子メール: hideaki@naoj.org
※日本との時差は -19時間です。電話でのお問い合わせの際はご配慮願います


【概 要】
 工学院大学・東京工業大学・国立天文台・大阪大学・NASAゴダード宇宙センターの研究者を中心とする国際研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された最新鋭の観測装置「HiCIAO(注1)」を用い、SAO 206462(注2)と呼ばれる若い星の周囲にある原始惑星系円盤の観測を行った。そして、この原始惑星系円盤の構造を、世界で最も鮮明かつ詳細に撮影することに成功し、円盤内に小さな渦巻き状の構造が存在していることを発見した。

 研究チームは、この渦巻き構造が原始惑星系円盤内で起こっている力学的な物理過程を反映していると推定し、この構造を「密度波理論」という理論を用いて解析した。このように、原始惑星系円盤内の構造に着目し、観測と理論を組み合わせて原始惑星系円盤の物理状態を明らかにしようという本格的な研究は今回が初めて。

 その結果、不定性は大きいものの、中心星から100天文単位程度離れた場所での原始惑星系円盤の温度が数十ケルビン程度であると推定。さらに、渦巻き構造が円盤の中を動いていく様子が今後10年から20年程度の間に観測されるかもしれないと予測した。円盤の詳細な構造の観測と円盤における力学の理論とを組み合わせた本研究は、星の周囲でどのようにして惑星が出来たのかという大きな謎に迫るための新しい糸口を開いたと言える。

 今回観測されたような渦巻き構造の原因としては、様々なものが考えられる。その一つとして、原始惑星系円盤の中ですでに形成された惑星によって引き起こされているという可能性もあり得る。研究チームは、今回の研究成果が、今後、より長波長での高空間解像度撮像観測によって、円盤内で形成中の惑星の発見 につながるかもしれないと期待している。

 この研究成果は、SEEDSプロジェクト(注3)の共同研究者である武藤恭之氏(工学院大学)ほか61名の共著者らによって2012年4月1日発行の「アストロフィジカル・ジャーナル・レター」誌に掲載された(Muto et al. 2012, ApJ, 748, L22)。

注1:
 HiCIAO(ハイチャオ)は、すばる望遠鏡に搭載された高コントラスト新コロナグラフ(High Contrast Instrument for the Subaru next generation Adaptive Optics)のことで、従来の装置に比べ約一桁高いコントラスト性能を持つ。2009年から本格的にすばる望遠鏡で稼働し始めた。

注2:
 SAO 206462はおおかみ座にある恒星。可視光での見かけの明るさは約8.7等級、太陽系からの距離は約460光年、年齢は約900万年と推定されている。星周円盤は直径約220億キロメートル(冥王星の軌道の二倍程度の大きさ)に広がっている。

注3:
 SEEDS(Strategic Exploration of Exoplanets and Disks with Subaru Telescope、すばる望遠鏡による戦略的惑星・円盤探査プロジェクト)は、すばる望遠鏡を用いた大規模観測プロジェクトである。HiCIAOを用いて様々な星の周囲の構造や惑星を直接検出することを目指すプロジェクトで、国立天文台が中心となって推進している。SEEDSは、2009年から約5年間にわたって継続中の国際共同プロジェクトであり、現在までに AB Aur、LkCa 15、HR 4796A、HD 169142 などの星の周囲にある円盤の詳細な構造を明らかにしている。

▼この配信に関する問い合わせ先
 工学院大学 総合企画部広報課
 電話: 03-3340-1498/ FAX: 03-3340-1648
 電子メール: gakuen_koho@sc.kogakuin.ac.jp