北里大学

薬学部の創薬研究から北里大学発ベンチャー「PRD Therapeutics株式会社」の設立~天然物由来新規脂質代謝制御剤による希少疾病用医薬品の社会実装を推進~

大学ニュース  /  先端研究

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2021年9月1日、北里大学薬学部低・中分子創薬講座 細田 莞爾 特任助教らが、研究開発型創薬ベンチャー「PRD Therapeutics株式会社(以下「PRD Therapeutics」)」を設立し、シードラウンド*1で資金調達を実施した。

●2022年4月、北里大学の設置者である学校法人北里研究所(以下「北里研究所」)とPRD Therapeuticsが、天然物由来新規脂質代謝制御剤「PRD化合物」に関する特許の独占的ライセンス契約を締結し、治療法の少ない希少疾患に対する医薬品や生活習慣病治療薬の開発を目指す。
●PRD化合物は、北里大学の大村 智 特別栄誉教授、供田 洋 名誉教授(PRD Therapeutics社外取締役)らが発見した微生物由来新規化合物を元に、同大学薬学部の長光 亨 教授らによって最適化する過程で合成した300個以上の化合物群。

■背景
 北里研究所は、北里大学薬学部 低・中分子創薬講座 供田 洋 特任教授 兼 名誉教授らの研究グループが医薬基盤研究所の支援*2を受け、開発を進めてきたPRD化合物の研究活動と知財化を支援してきました。2019年からは、同化合物の中で最も優れたプロファイルを持つPRD001による医薬品の社会実装を目指して、同講座の細田 莞爾 特任助教を中心に、ベンチャー設立に向けた活動を開始し、「NEDO Technology Commercialization Program 2019」*3で優秀賞を受賞するほか、AMED「橋渡し研究プログラム」*4の公募型研究課題に採択されました。
 2020年8 月からは、大鵬薬品工業株式会社のコーポレート・ベンチャーキャピタルである大鵬イノベーションズ合同会社(以下「大鵬イノベーションズ」)とインキュベーションのための共同研究をスタートさせ、起業の見極めのため、PRD001の不足している種々のデータを取得すると共に、開発戦略や知財戦略の策定を実施しました。
 その後、細田 莞爾 特任助教と供田 洋 名誉教授が創業者となり、2021年9月1日付で、北里大学発ベンチャーのPRD Therapeuticsを起業しました。PRD Therapeuticsの代表取締役には、細田 莞爾 特任助教、社外取締役には、供田 洋 名誉教授及び大鵬イノベーションズのパートナー森 文隆 氏が就任し、シードラウンドとして大鵬イノベーションズから資金調達を実施しました。
 2022年4月、北里研究所は、PRD TherapeuticsとPRD化合物に関する特許の独占的実施許諾契約を締結してPRD化合物を独占的にライセンスすると共に、同社との共同研究を通じて、引き続き研究開発を支援していきます。

■研究内容と今後の期待
 PRD001は、大村 智 特別栄誉教授の元で、供田 洋 名誉教授らが東京都神宮外苑付近の土壌から分離した真菌の培養液中より発見した新規化合物を、長光 亨 教授及び 大多和 正樹 准教授らが最適化した化合物で、北里大学の叡智の結集です。その後、大城 太一 教授 (本学薬学部)、Paolo Parini 教授 (カロリンスカ研究所/スウェーデン)、故 Lawrence Lee Rudel 教授 (ウェイクフォレスト大学/アメリカ)らにより、PRD001が世界初で唯一の作用メカニズムにより、サルを含む各種動物試験において、血中脂質量 (LDL-コレステロール等) を強力に減少させ、脂肪肝や動脈硬化の進展を抑制することが明らかとなりました*5。PRD001は治療法の少ない希少疾患である家族性高コレステロール血症ホモ接合体 (以下「HoFH」) や、有効な治療薬のない生活習慣病の一種である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) の画期的な治療薬になり得ると考えています。
 脂質代謝制御剤は、既に多くの薬剤が承認されていますが、これらの薬剤が効果を示すために必要なLDL受容体が遺伝的に変異しているHoFHには有効でないことや効果が不十分であることが報告されています。そのため、HoFH の患者さんは毎週病院で血漿濾過装置などの大掛かりな治療を必要としており、Quality of Lifeは著しく低くなっています。そこでPRD Therapeuticsは、PRD001を元に HoFHの患者さんにも有効な新たな飲み薬の開発に取り組み、Quality of Lifeの改善に貢献していきます。
 2022年4月からは、AMED「創薬支援推進事業・希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業」*6に採択され、2015年ノーベル生理学医学賞の受賞理由となったエバーメクチンに続く、北里大学発の新たな微生物由来の医薬品のシーズとして、学内外から期待されています。


*1 シードラウンド:「シード期」にあたるベンチャー企業が行う資金調達のこと。ベンチャー企業は、創業から事業が成功するまでの経過に応じて、シード期、アーリー期、ミドル期、レイター期という成長ステージに分類されることがある。

*2 平成18年度NIBIO保健医療分野における基礎研究推進事業「コレステロールアシル転移酵素アイソザイム ACAT2 選択的阻害剤の開発」レポート
   https://www.nibiohn.go.jp/nibio/shinko/kisoken/2006report/pdf/report06-45.pdf

*3 「NEDO TCP 2019最終審査会」を開催 (2020年2月20日)
   https://www.nedo.go.jp/ugoki/ZZ_100953.html

*4 令和2年度「橋渡し研究戦略的推進プログラム」の採択課題について (2020年3月24日)
   https://www.amed.go.jp/koubo/05/01/0501C_00112.html

*5 Ohshiro T. & Tomoda H. Isoform-specific inhibitors of ACATs: recent advances and promising developments. Future Med. Chem., 3, 2039-2061 (2011).
Ohshiro T, Ohtawa M, Nagamitsu T, Matsuda D, Yagyu H, Davis MA, Rudel LL, Ishibashi S, Tomoda H. New pyripyropene A derivatives, highly SOAT2-selective inhibitors, improve hypercholesterolemia and atherosclerosis in atherogenic mouse models. J. Pharmacol. Exp. Ther., 355, 299-307 (2015). 他

*6 令和4年度 「創薬支援推進事業―希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業―」の採択課題について (2022 年3月22日)
   https://www.amed.go.jp/koubo/11/02/1102C_00036.html

■PRD Therapeutics (ピーアールディーセラピューティクス) について
会社名 : PRD Therapeutics株式会社
所在地 : 東京都港区白金五丁目9番1号
役員 : 代表取締役社長 細田 莞爾 / 社外取締役 供田 洋、森 文隆
事業概要 : PRD化合物による新規脂質代謝性疾患 (HoFHやNASH/NAFLD等) 用医薬品の開発
資本金 : 17,000,000円
設立日 : 2021年9月1日

■問い合わせ先
≪研究開発に関すること≫
PRD Therapeutics株式会社
E-mail:info''AT''prdtherapeutics.com

≪取材に関すること≫
学校法人北里研究所総務部広報課
TEL:03-5791-6422
E-mail:kohoh''AT''kitasato-u.ac.jp

※E-mailは上記アドレス''AT''の部分を@に変えてください。