金沢大学

金沢大学が「里山里海プロジェクト」を展開中――自然と人の調和を「生物多様性」という視点から考える「知のプラットホーム」を構築

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金沢大学では、2005年度から「里山里海プロジェクト」を展開している。これは、里山および里海を利用した教育・研究活動を推進することを目的としたもの。地域の里山の保全や整備、修復活動の支援や調査活動などを通して、地域社会の活性化や自然共生型のライフスタイルの確立、里山および里海の問題解決に向けた政策の提言を行うことを目指す。

 「里山里海プロジェクト」は、自然に恵まれた同大の角間キャンパスを広く市民の学習の場として開放し、自然学習およびボランティア活動に関するプログラムを実施することを目的に発足した「角間の里山自然学校」(1999年~)に端を発している。

 同プロジェクトではこれまで、能登半島珠洲市にある廃校舎を「能登学舎」として活用し、環境に配慮した農業人材の育成を行う「能登里山海マイスター養成プログラム」をはじめ、3年間で1,000人の学生や研究者を能登に呼び込むことを目的とした「のと半島里山里海アクティビティの創出」事業、里山里海のいきものと人々の繋がりを伝える「能登いきものマイスター」の養成講座などのプログラムを実施。能登の里山里海とその文化を「SATOYAMA、SATOUMI」として世界に発信する活動を展開してきた。「能登里山里海マイスター養成プログラム」(2007~12年)は現在、後継事業「能登里山里海マイスター育成プログラム」(2012年~)に引き継がれている。

 また、石川県が提案者となり、金沢大学が実施主体として,国際協力機構(JICA)により採択されたJICA草の根技術協力事業「世界農業遺産(GIAHS)『イフガオの棚田』の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」(略称:フィリピン・イフガオ棚田支援プロジェクト)は,国連食糧農業機関(FAO)が主催した世界農業遺産(GIAHS)国際フォーラム(2013年5月)において採択された「能登コミュニケ」を実現するものであり,国際的にも注目を集めている。

 こうした活動は、同大が行う統合的環境研究「里山再生学」として集約されている。「里山再生学」では持続可能な共存社会を構築する力を備えた人材(学士課程)および地域再生に必要な高度な知識および技能を有する国際人材(大学院博士課程)の養成を目指し、能登の里山里海の歴史的変遷の解明や環境配慮型の農林水産業の構築、バイオマスの活用技術の開発などを行っている。

 このプロジェクトをさらに推進するため、支援組織として角間キャンパス内の「里山ゾーン」の保全を行う「角間里山本部」、および地域連携活動を持続的に発展させるための「能登オペレーティング・ユニット」を設置。学内のサポートを充実させている。

 同大は今後も自治体や民間企業などと連携し、里山里海を利用した教育・研究活動のみならず、「自然共生型地域づくり」を目指した活動を行っていく。

◆能登里山マイスター養成プログラム
 生物多様性など環境配慮型農業を実践し、能登の自然と文化資源を活かした新ビジネスの拠点を創り出す地域リーダーを養成するプログラム。就農・起業を志す45歳以下の人を対象に2年間の講習を行い、5年間で62人を育成している。
 講習では、能登の自然と文化の魅力や地域資源をはじめ、地理情報システム(GIS)の農業への活用、ブランド戦略など起業に必要な発想やノウハウを学ぶ。実学も充実しており、同大の「里山駐村研究員」制度を生かして現場での経営技術を学んだり、自治体やNPO、地元企業などのトップから直接リーダーシップを学んだりすることができる。卒業が認定されると大学から「里山マイスター」の称号を授与され、独立後も金沢大学や石川県、連携自治体などから支援を受けることができる。
能登里山マイスター養成プログラムは2012年から、能登里山里海マイスター育成プログラムとして名称を改め、大学と地域自治体による独自財源での運営、地域塾(輪島市、能登町)の充実、国際性を重視したワークショップの開催など新たなコンセプトを導入した運営となっている。

◆イフガオ里山マイスター養成プログラム
 JICA草の根技術協力事業「世界農業遺産(GIAHS)『イフガオの棚田』の持続的発展のための人材養成プログラムの構築支援事業」(略称:フィリピン・イフガオ棚田支援プロジェクト)。
 イフガオの棚田は、ユネスコの世界文化遺産、そして世界農業遺産に認定されているが、若者の農業離れや都市部への流出により、耕作放棄地の増加が懸念され、独自の生活・文化を継承していく人材の養成が急務となっている。そのため、金沢大学がフィリピン大学オープン・ユニバーシティ、ならびにイフガオ州立大学と連携し、能登で実践している人材育成のノウハウを「イフガオ里山マイスター養成プログラム」として、現地の実情に応じた、魅力ある農業を実践やする若手人材を養成するプログラムを構築する。地域での問題解決をソフト事業として移出するモデルとしても注目される。
 3月25日に社会人受講生20人を迎え開講式を執り行った。4月からはイフガオの生物多様性と農業、伝統文化などをテーマに月2回の授業。秋(9月予定)には受講生が能登と佐渡で学びと交流を繰り広げる。

●金沢大学 里山里海プロジェクト
 http://www.adm.kanazawa-u.ac.jp/satoyama/

▼本件に関する問い合わせ先








金沢大学地域連携推進センター
〒920-1192 石川県金沢市角間町
TEL: 076-264-5903
FAX: 076-234-4045

金沢大学広報戦略室 福田

TEL: 076-264-5024
FAX: 076-234-4015
koho@adm.kanazawa-u.ac.jp