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東邦大学院生が「サッカーボール型分子 フラーレンC60」誘導体の新たな合成手法を開発――日本化学会主催「CSJ化学フェスタ」の優秀ポスター発表賞を2年連続で受賞

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東邦大学大学院(千葉県船橋市)理学研究科化学専攻の内山幸也さん(博士前期課程2年)と同大理学部化学科の森山広思教授はこのたび、選択的に合成するのが難しい多付加フラーレン誘導体の新たな合成手法を開発し、一連の誘導体である「アルコキシフラーレン」とよばれる新規分子「C60(OR)8 (R=CH3,C2H5,…)」の合成に成功した。この手法は有機薄膜太陽電池やライフサイエンスなどさまざまな分野への応用のほか、さらなる新物質の開発にもつながることが期待される。またこの成果は、産学交流の促進を目的に学生らが研究の発表や展示を行う「第3回CSJ化学フェスタ」において優秀ポスター発表賞を受賞。内山さんは昨年度に続いての連続受賞を果たした。

 「フラーレンC60」とは、一般に炭素原子が60個集まった、サッカーボール型分子のこと。フラーレンは有機薄膜太陽電池のn型半導体として開発が進められているほか、抗酸化作用をもつことから、最近では化粧水などに含まれていることでも知られている。

 この分子の最大の特徴は、さまざまな物質(原子や分子)を付加したり、中に閉じ込めたりすることができることである。このうち「多付加フラーレン誘導体」と呼ばれる物質群は、フラーレンが持ち得ない、付加分子に由来するさまざまな性質を有する魅力的な化合物。同大が開発に取り組む有機薄膜太陽電池といったエネルギー分野の他、半導体や医薬剤などさまざまな分野で応用が期待されており、現在、多付加フラーレン誘導体の新たな可能性の開拓のため、日々研究・開発が行われている。

 多付加フラーレン誘導体を合成する際、付加位置の異なる化合物(付加位置異性体)との混合物となり、単一の生成物として得難いことが問題となっている。その解決方法のひとつとして、単一の生成物として得ることのできるハロゲン化フラーレン(ハロゲン:周期表において第17族に属する元素でフッ素〔F〕・塩素〔Cl〕・臭素〔Br〕等)を出発物質として用い、そのハロゲン部位を置換するという手法が考えられる。これまで一般的に出発原料として用いられてきたのは、有機溶媒に溶けやすい塩素化フラーレンだが、反応制御が困難なため、内山さんらは臭素化フラーレンC60Br8とアルコールを反応させ、臭素〔Br〕部位の置換を試みた。臭素化フラーレンは有機溶媒にほとんど溶解しないという問題があったが、銀(Ag)を脱臭素剤として添加し、臭素化フラーレンが溶けなくても、平衡が生成物側に移動することで反応をスムーズに進めることを可能としたことで、新たな多付加フラーレン誘導体(ここではアルコキシフラーレン)C60(OR)8を単一生成物として得ることに成功。さらにC60(OR)8はC60Br8と同様の付加形態を有していることをX線結晶構造解析で確認した。C60Br8と同様の付加形態を有するフラーレン誘導体の合成法は知られておらず、本研究で確立した手法が唯一の方法になるため、2件の特許出願(特願 2012-194209 ; 特願 2013-046948)がなされている。

 この研究成果は、日本化学会主催の「第3回CSJ化学フェスタ」において優秀ポスター発表賞を受賞。内山さんは昨年の「第2回CSJ化学フェスタ」に引き続いての連続受賞という快挙となった。
 この研究で新規に合成された多付加フラーレン誘導体は、有機薄膜太陽電池やライフサイエンスなどさまざまな分野への応用が期待されている。

▼本件に関する問い合わせ先
 東邦大学 法人本部 経営企画部 森上 需
 〒274-8510 千葉県船橋市三山2-2-1
 TEL/FAX: 047-494-8571 
 E-mail: press@toho-u.ac.jp
 www.toho-u.ac.jp


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