酪農学園大学

酪農学園大学農食環境学群の堂地修教授が「第111回日本繁殖生物学会大会」で技術賞を受賞 -- ウシ受精卵の凍結保存技術の簡易化と受胎率向上への貢献が評価

大学ニュース  /  先端研究

  • ★Facebook
  • ★Twitter
  • ★Google+
  • ★Hatena::Bookmark

酪農学園大学(北海道江別市)農食環境学群循環農学類の堂地修教授(家畜繁殖学研究室)が、「第111回日本繁殖生物学会大会」において技術賞を受賞した。同大会は2018年9月12日から16日まで長野県信州大学で開催。受賞対象となった研究テーマは「ウシ胚の直接移植法の開発および胚移植による受胎率向上」で、堂地教授は同大会で受賞講演を行った。

 堂地修教授は、農林水産省勤務時から、ウシ受精卵の凍結保存技術の簡易化と受胎率向上に取り組んで来た。1991年には、従来の耐凍剤であるグリセリンとは異なるエチレングリコールを用いた新しい直接移植法と呼ばれる簡易化したウシ受精卵の凍結技術を学会発表し、当時の標準であった40%前後よりも高い69%の受胎率、かつ簡易で実用性の高い方法であることを報告した。以後20年以上に渡って生産現場に根ざした普及活動を行い、現在では国内で凍結されるほとんどの受精卵にこの方法が用いられている。

 堂地教授は、「世界の誰もウシではやったことのないこの方法を学会で発表した時は、会場がいっぱいになり大変驚いたことを良く覚えています。ところが、翌年にアメリカのグループがほぼ同じ方法を国際学会で発表して特許を取得し、この方法を用いて来た人々に特許権使用料を請求する動きがあるという話が伝わってきました。幸いなことに、私たちが技術指導していた海外の研究者の一人がアメリカのグループより前に欧州の国際学会で発表していた事実を確認することができました。恐らくそのことが功を奏して、現在に至るまで世界中の人たちが使用料なしにこの技術を使うことができています。
 開発した技術を生産現場に普及・定着させるためには、開発の何倍もの時間が必要です。うまく行かないという人たちのところに出向き、現場で何時間もかけて問題点を見つけ、試験を繰り返し、指導を行い、20年を超える活動を続けてきました。今ではこの技術を開発したのが私たちであることを知らずに現場で使っている技術者は多いですが、それが広く普及した証拠だとうれしく感じています。
 この技術を開発したきっかけは、20代の時のふとした思いつきと偶然からでした。若い人の発想力は、時として経験ある研究者にはできない思いがけない発見につながります。学生の皆さんには、何かアイディアがあれば、周りの人間がどう言おうととにかくやってみるべきだと話しています。そこから新しいものが産まれてくるからです」と話す。

・プロフィール
堂地修 農食環境学群循環農学類 教授
【研究分野】
畜産学・獣医学、畜産学・草地学
【所属学協会】
日本畜産学会、日本繁殖生物学会、日本獣医学会、日本哺乳動物卵子学会、国際胚移植学会
【受賞歴】
平成14年度 (社)中央畜産会 畜産大賞・研究開発部門最優秀賞

■日本繁殖生物学会
 飼育動物、野生動物など、主として動物の繁殖に関する学術研究の振興および、その成果の普及を図ることを目的として、1948年に設立された学会。繁殖や生殖に関する学問分野で、世界的にも古くから先導的役割を果たしてきた。
 近年のバイオサイエンス分野における最先端研究の一翼を担っており、人工授精や受精卵移植、遺伝子導入動物やクローン動物に至るまで、同会会員が主導的な役割を果たしている分野は幅広く、研究内容は多岐にわたっている。
 現在、年に1回の学術集会および総会を開催し、会員の一般講演や、学会内外から講演者を招いてのシンポジウムなどを行っている。

・日本繁殖生物学会大会: http://reproduction.jp/NewHP/Meeting_J.html

□酪農学園大学
 http://www.rakuno.ac.jp/

堂地先生受賞写真1.jpg 堂地修教授

堂地先生受賞写真3.jpg 日本繁殖生物学会の宮野理事長と

堂地先生受賞写真2.jpg 日本繁殖生物学会の宮野理事長と

堂地先生記念講演写真3.jpg 受賞者記念講演