ページ上部

【帝京科学大学】ヒト母乳成分が腸の構造を変え栄養吸収を高めることを実証 ― 国際誌フロントカバーに採用

【帝京科学大学】ヒト母乳成分が腸の構造を変え栄養吸収を高めることを実証 ― 国際誌フロントカバーに採用

 帝京科学大学生命科学科の西川翔准教授は、母乳に含まれる成分 2’-フコシルラクトース(2’FL)が小腸の構造そのものを変化させ、栄養吸収能力を高めることを動物モデルにより実証しました。

 本研究成果は、分子栄養学分野の国際誌 Molecular Nutrition & Food Research (20261月号)に掲載され、さらにその内容が評価され同誌のフロントカバー(表紙)に選出されました。

<本研究の背景>
 近年、エネルギー摂取過多に伴う肥満が問題となる一方で、栄養の偏りや摂取不足といった栄養不足もまた生活習慣病をはじめとした様々な疾患の原因となります。栄養の吸収は小腸が担いますが、腸管機能の重要性を示す例として、未熟児など腸管機能が未発達な乳児では腸管機能の回復が予後に大きく関わります。そして、乳児の腸管発達や機能回復における母乳摂取の有効性は100年以上も前から知られています。ヒトの母乳に特徴的に含まれる2’FLは、上記のような母乳の恩恵に寄与する重要な成分として知られ、すでに欧米では人工母乳への添加が進んでいます。
 本研究で西川先生は、 2’FLによる栄養吸収能力の向上という新たな機能性発見から母乳の神秘解明に迫ると共に、そのユニークで汎用性の高い機能を活かし、吸収効率を高めることで薬剤の効き目を高めるなど、栄養不足改善だけでなく生活習慣病予防など社会実装が大いに望まれる成果を報告しました。

以下に研究概要を示します。

<本研究で明らかにしたこと>
① 2’FLをマウスに摂取させると、マウスの小腸長や柔毛密度が増加し(小腸のリモデリングが誘導される)、吸収能力が向上すること、
②吸収能力向上に伴い、脂溶性成分であるDHA(詳説1)やクルクミン(詳説2)、水溶性薬剤の吸収が上昇する。
③クルクミンや水溶性薬剤(β3アドレナリン受容体作動薬)の吸収が増加することで、その機能性が増強されること(詳説3)

の3点を示しました。

<本研究成果の意義>
①2’FLがなぜ母乳に含まれるのか?栄養吸収能力の向上という生物学的意義の一端を示したこと。
②2’FLといった非栄養素が腸管リモデリングを介して栄養吸収能力を高めることを世界ではじめて示し、新たな食品機能性評価軸を提示したこと。
③吸収能力そのものを増加させるため、栄養素に限らず食品因子や薬剤など、あらゆる成分の利用効率を高めることが可能であること。

<将来の展望>
 腸の形成と機能は、乳幼児の成長のみならず、高齢者のフレイル予防や生活習慣病対策にも深く関与しています。また、腸管形成や栄養吸収に関係する遺伝子やタンパク質の発見による医療への応用も期待できます。従って本研究の成果は、将来的に腸管機能の改善を通じた幅広い世代での健康維持から飢餓問題の新たな解決手段など幅広い応用が期待されます。
(詳説1)
DHAは青魚に豊富に含まれる他、母乳に必須の栄養素です。乳児の発達だけではなく成人での脳機能維持にも重要な成分です。
(詳説2)
クルクミンはウコンなどターメリックに含まれる黄色色素で世界中で食されています。多様な健康機能があり、著者らもこれまでに肥満予防に関係する論文を同紙に報告しフロントカバーに採用されています(Mol. Nutr. Food Res, 2018年62巻3月号)。
(詳説3)
白色脂肪組織中で熱産生タンパク質(UCP1)が増加することでエネルギーが熱として消費されるため、エネルギー消費の増加による体脂肪の低下、肥満の抑制が期待されます。
(詳説4)
脂質や糖、タンパク質、ビタミンの様に私たちの体にとって必須ではないものの、様々な身体調節作用を有する食品成分のことです。身近なものにはβカロテンなどの色素成分やカプサイシンなどの香辛料成分が挙げられます。この様に非栄養素は私たちにとって非常に身近で、その多様な健康機能性を活かしてサプリメントとしても世界中で活用されています。

 なお、本研究の成果は、JSPS科研費NO.21K11584、及び本学の研究支援助成である教育推進研究費の支援を受け遂行され、特許出願(特開2025-149158)も行っています。
 また本研究は、本学で着想され本学の環境で単独に遂行され、学生実習向けに開発した技術を基盤として、それを研究用途へと発展させて得られた成果でもあります。

<論文情報>

掲載誌: Molecular Nutrition & Food Research

論文タイトル:Two ′ -Fucosyllactose, a Human Milk Oligosaccharide,Promotes Intestinal Remodeling and Enhances Nutrient and Functional Component Absorption

著者:Sho Nishikawa、Hidetoshi Yamada、Yuto Funasaki、Wakana Jike、Mai Taromaru、 Satomi Ozaki、Izuki Tarushima、Ryoto Tanaka、Sayuki Nishimaki、Miyu Sato、Hanami Goto、Masaya Kato、 Masayoshi Okuzawa、Raimu Miyasaka

掲載情報:2026年70巻1号e70376

DOI: 10.1002/mnfr.70376

論文リンクはこちらから

著者所属と連絡先:

帝京科学大学 生命科学科 生命コース

准教授 西川 翔 

(メール)sh-nishikawa@ntu.ac.jp (西川)

教員紹介(大学ホームページ内)はこちら

本件に関するお問い合わせ先

帝京科学大学 入試・広報課
E-mail:koho@ntu.ac.jp

本研究を通じて帝京科学大学に興味を持たれた方はお気軽にお問合せください。
また、本学ではオープンキャンパスも実施しています。西川先生も参加していますので、是非直接お話を聞いてみて下さい。
オープンキャンパス詳細:https://www.ntu.ac.jp/admissions/weboc/

E-mail
koho@ntu.ac.jp

添付資料