【東京薬科大学・静岡県立大学】遠隔転移膵がんの個別化医療へ新たな知見 ―ゲムシタビン効果予測マーカー候補を見出した大学・病院連携による多機関共同研究―

■ 研究概要
本研究は、遠隔転移膵がん患者に対するゲムシタビンの治療効果に関連する遺伝子多型を探索した多機関共同前向き研究です。
膵がんは予後不良ながんの一つであり、遠隔転移を有する患者では薬物療法が治療の中心となります。ゲムシタビンは膵がん治療を支える重要な抗がん薬ですが、その治療効果には大きな個人差があり、治療開始前に効果を予測できる指標(バイオマーカー)の確立が課題となっています。
そこで、全国14施設(大学2施設、病院12施設)が共同し(図1)、患者さんの同意のもと臨床情報および血液検体を収集しました。そして、静岡県立大学にて遺伝子解析が実施され、横川貴志准教授、鈴木賢一教授、辻大樹教授らにより解析結果が取りまとめられました。

その結果、ゲムシタビンを活性化する酵素であるDCK(deoxycytidine kinase)や、薬剤排出や耐性に関与するABCC5などの遺伝子多型が、治療効果や予後と関連する可能性が示されました(図2)。これらの成果は、患者ごとの遺伝学的特徴に応じた治療選択を目指す個別化医療の実現に向けた新たな知見となることが期待されます。

■ 本研究の特徴
本研究は、大学・医療機関が連携して実施した多機関共同前向き研究です。病院で収集された臨床データと大学における高度な遺伝子解析技術を融合し、臨床現場で生じた課題を科学的に検証した“臨床×基礎”のトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)となります。
また、東京薬科大学と静岡県立大学を中心とした大学間連携に加え、全国の医療機関に所属する薬剤師・医師との研究ネットワークによって実現した点も本研究の特徴です。臨床課題を大学の研究基盤を活用して科学的に検証し、その成果を患者治療へ還元することを目指した点に、本研究の意義があります。
■ 今後の展望
今回の成果により、遠隔転移膵がん患者において、ゲムシタビン治療効果や予後と関連する可能性のある遺伝子多型が見出されました。
これらの知見は、治療開始前にゲムシタビンの効果が期待できる患者を予測し、患者ごとに最適な治療を選択する個別化医療の実現につながる可能性があります。一方で、今回の解析は探索的研究であり、今後はより大規模な患者集団を対象とした検証研究が必要です。
東京薬科大学では臨床薬学研究センターを設置し、全国の医療機関との共同研究を積極的に推進しています。今後も臨床現場で生じる課題を研究によって解決し、その成果を患者治療へ還元することを目指してまいります。
■ 謝辞
本研究は、研究参加にご同意いただいた患者さん、ならびに全国14施設のスタッフの皆様のご協力によって実現しました。ご協力いただいたすべての皆様に深く感謝申し上げます。
■ 論文情報
- 論文名
Pharmacogenomic profiling of the efficacy of gemcitabine monotherapy in metastatic pancreatic cancer: Subgroup analysis of the GENESECT study
https://bpspubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/bcp.70611 - 掲載誌
British Journal of Clinical Pharmacology - 著者
Takashi Yokokawa *, Daiki Tsuji *, Masahiro Hatori, Kazuyoshi Kawakami, Masahiko Nakao, Takuya Yano, Yuichiro Arakawa, Keisuke Matsuo, Yasukata Ohashi, Masato Ozaka, Naoki Sasahira, Yasuhiko Sakata, Yuki Kogure, Shinya Tamaki, Atsushi Wada, Yusuke Taki, Wataru Suzuki, Kazuo Kobayashi, Hiroshi Ishii, Kunihiko Itoh, Masakazu Yamaguchi, Kenichi Suzuki
*責任著者:横川貴志(東京薬科大学 臨床薬理学教室 准教授)、辻大樹(静岡県立大学 臨床薬剤学分野 教授)
本件に関するお問い合わせ先
【研究に関するお問い合わせ】
東京薬科大学 薬学部 臨床薬理学教室
准教授 横川貴志(ヨコカワ タカシ)
TEL:042-676-5796
E-mail:tyokoka[at]toyaku.ac.jp ※[at]を@に置換してください
住所:〒192-0392 東京都八王子市堀之内1432-1
静岡県立大学 薬学部 臨床薬剤学分野
教授 辻大樹(ツジ ダイキ)
TEL:054-264-5673
E-mail:d-tsuji[at]u-shizuoka-ken.ac.jp ※[at]を@に置換してください
住所:〒422-8526 静岡県静岡市駿河区谷田52-1
【取材に関するお問い合わせ】
東京薬科大学 入試・広報センター
TEL:042-676-4921
E-mail:kouhouka[at]toyaku.ac.jp ※[at]を@に置換してください
住所:〒192-0392 東京都八王子市堀之内1432-1
静岡県立大学 経営企画室
TEL:054-264-5130
E-mail:koho[at]u-shizuoka-ken.ac.jp ※[at]を@に置換してください
住所:〒422-8526 静岡県静岡市駿河区谷田52-1