ページ上部

【三重大学・金沢工業大学】子どもの発達と腸内細菌の関係を探る。日本の未就学児を対象に、成長・行動特性と腸内細菌叢の関連を解析

【三重大学・金沢工業大学】子どもの発達と腸内細菌の関係を探る。日本の未就学児を対象に、成長・行動特性と腸内細菌叢の関連を解析
■当プレスリリースは金沢工業大学 バイオ・化学部 市川 俊輔教授が、三重大学教育学部在職中に行った研究成果です。
■三重大学を中心とする研究チームは、日本の未就学児を対象に、便に含まれる腸内細菌と、成長・行動特性との関連を調べました。
■子どもの年齢、身長、体重と関連する腸内細菌の特徴に加え、睡眠、注意、情緒、攻撃性などの行動特性と関連する腸内細菌や代謝機能の候補を見出しました。
■本研究は、腸内細菌とこころの発達に関する新しい研究の手がかりになります。
■便に含まれるDNAを調べることで、体の中の見えない微生物の世界と子どもの発達を結び付けて考える、生命科学・教育学・医学を横断する研究です。

■当プレスリリースは金沢工業大学 バイオ・化学部 市川 俊輔教授が、三重大学教育学部在職中に行った研究成果です。
■三重大学を中心とする研究チームは、日本の未就学児を対象に、便に含まれる腸内細菌と、成長・行動特性との関連を調べました。
■子どもの年齢、身長、体重と関連する腸内細菌の特徴に加え、睡眠、注意、情緒、攻撃性などの行動特性と関連する腸内細菌や代謝機能の候補を見出しました。
■本研究は、腸内細菌とこころの発達に関する新しい研究の手がかりになります。
■便に含まれるDNAを調べることで、体の中の見えない微生物の世界と子どもの発達を結び付けて考える、生命科学・教育学・医学を横断する研究です。

【概要】
三重大学教育学部、三重大学ゼブラフィッシュ研究センター、三重大学大学院医学系研究科を中心とする研究チームは、日本の未就学児を対象に、腸内細菌の構成と予測される代謝機能が、身体的成長や行動特性とどのように関係するかを調べました。
本研究では、保護者が自宅で採取した便から腸内細菌のDNAを解析し、子どもの年齢、身長、体重、ならびに保護者回答式の行動評価尺度であるChild Behavior Checklist for Ages 1½–5(CBCL 1½–5)のスコアとの関連を調べました。その結果、年齢や体格に伴う腸内細菌の変化に加え、注意、睡眠、情緒、社会的引きこもり、身体的訴え、攻撃性などの行動特性と関連する腸内細菌や代謝機能の候補が見つかりました。

【背景】
幼児期は、脳、体、行動、生活リズムが大きく変化する時期です。同時に、腸の中にすむ細菌の集まりである腸内細菌叢も発達していきます。近年、腸内細菌が作る物質や免疫反応を通じて、腸と脳が情報をやり取りする「腸脳相関」が注目されています。たとえば、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸、胆汁酸、アミノ酸代謝物などは、免疫、神経、ホルモンの働きと関係することが知られています。
これまでにも、腸内細菌と子どもの発達や行動との関連を調べた研究は行われてきました。しかし、多くの研究は欧米の集団、疾患リスクの高い集団、または特定の診断を受けた子どもを対象としていました。日本の一般的な未就学児を対象に、腸内細菌の種類だけでなく、腸内細菌がどのような代謝機能を持つ可能性があるかまで含めて、成長や複数の行動特性と系統的に調べた研究は限られていました。
本研究では、日本の未就学児を対象に、腸内細菌の構成、腸内細菌の多様性、予測される代謝機能と、身体的成長および行動特性との関連を調べました。

【研究内容】
本研究には、国内の未就学児36名が参加しました。対象児の平均月齢は48.0か月、男児20名、女児16名でした。保護者の方に自宅で便を採取いただき、研究チームは便中の細菌の種類を調べるために16S rRNA遺伝子解析を行いました。
行動特性は、CBCL 1½–5という国際的に用いられている保護者回答式の質問紙で評価しました。この質問紙では、情緒的反応、不安・抑うつ、引きこもり、身体的訴え、注意の問題、攻撃的行動、睡眠の問題など、幼児期の行動特性を複数の側面から評価します。今回の対象児の多くは標準範囲のスコアでしたが、標準範囲の中にも個人差がありました。
各行動特性と、年齢、身長、体重といった身体的成長指標との関連は弱い傾向でした。このことから、幼児期の行動特性の違いは、年齢や身体的発達段階の違いだけでなく、子ども一人ひとりの特性として捉えることも重要であると考えられます。
研究協力者のうち比較的年齢が高い子どもでは、発達に伴う腸内細菌の変化が見られました。注意の問題のスコアは、腸内細菌の多様性を示す一部の指標と弱く関連していました。362種類の細菌属と411種類の予測代謝経路を解析したところ、睡眠、注意、情緒、引きこもり、身体的訴え、攻撃的行動と関連する候補が見つかりました。
たとえば、不安・抑うつに関わるスコアでは、炎症や腸のバリア機能と関連する可能性のある細菌が候補として挙がりました。睡眠の問題では、メチル基代謝やヘム生合成に関わると予測される代謝経路が候補として見つかりました。注意の問題では、糖鎖の利用や細菌の細胞表面成分に関わる代謝経路が候補となりました。攻撃的行動では、ヘム生合成、RNA処理、細胞表面構造に関わる予測代謝経路との関連が示されました。

【今後の展望】
本研究の成果は、今後の大規模研究や追跡研究で検証すべき「研究の手がかり」として重要です。本研究では、腸内細菌と行動特性が同時に測定されており、原因と結果の向きは分かりません。今後は、より多くの子どもを対象に、食事内容、睡眠習慣、薬の使用歴、生活環境などを詳しく記録しながら、同じ子どもを長期間追跡する研究が必要です。腸内細菌だけでなく、便や血液中の代謝物、炎症に関わる指標、客観的な睡眠データを同時に測定することで、腸内細菌と行動特性の関係をより精密に評価できると考えられます。将来的には、食事や生活習慣を通じて腸内環境を整えることが、子どもの睡眠や情緒、注意の発達を支える可能性について検証できるかもしれません。

【用語解説】
・腸内細菌叢:腸の中にすむ多くの細菌の集まりのことです。食べ物の成分を分解したり、体に影響する物質を作ったり、免疫の働きに関わったりします。
・腸脳相関:腸と脳が、神経、免疫、ホルモン、腸内細菌が作る物質などを通じて影響し合うという考え方です。
・16S rRNA遺伝子解析:細菌が持つ16S rRNA遺伝子の配列を調べることで、検体中にどのような細菌がいるかを推定する方法です。
・CBCL 1½–5:1歳半から5歳の子どもの行動や情緒の特徴を、保護者の回答によって評価する質問紙です。本研究では、情緒、注意、睡眠、攻撃的行動などのスコアを解析に用いました。

【論文情報】
掲載誌: Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-026-59018-4
論文タイトル: Gut microbiome composition and predicted functions relate to growth and behavior in a Japanese preschool cohort
著者: Shunsuke Ichikawa, Ayaka Shimura, Aoi Kikuchi, Rise Sanda, Kensaku Sasayama, Keiko Nonoue, Hiroko Tamura, Takahiro Kano, Yasuhito Shimada


【謝辞】
本研究にご協力いただいた児童の皆様、保護者の皆様、幼稚園・保育施設の先生方に深く感謝いたします。本研究は、松田おやつタウン財団 (https://matsuda-zaidan.jp/ )の一部助成を受けて実施されました。

本件に関するお問い合わせ先

<本研究に関するお問合せ>
学校法人金沢工業大学 バイオ・化学部 / ゲノム生物工学研究所
(研究実施期間中の主な所属:三重大学教育学部)
市川 俊輔
TEL:076-274-7906
E-mail:s.ichikawa@neptune.kanazawa-it.ac.jp

国立大学大学法人三重大学大学院医学系研究科 統合薬理学分野
島田 康人
TEL:059-231-5384
E-mail:shimada.yasuhito@mie-u.ac.jp

<広報に関するお問合せ>
学校法人金沢工業大学 企画広報課
TEL:076-246-4784
E-mail:koho@kanazawa-it.ac.jp

国立大学法人三重大学 広報・渉外室
TEL:059-231-9794
E-mail:koho@ab.mie-u.ac.jp



学校法人金沢工業大学企画部 志鷹

住所
石川県野々市市扇が丘7-1
TEL
076-246-4784
FAX
076-248-7318
E-mail
koho@kanazawa-it.ac.jp

添付資料