工学院大学の紀基樹客員研究員らによる研究チームが、生まれたてのジェットとガス雲が衝突する瞬間の撮影に成功
*:電波ローブとホットスポット
電波ローブとは、活動銀河の両側に電波で観測される二つ目玉の構造で、活動銀河中心核から放出されるジェット噴出流の「吹き溜まり」。ホットスポットとは、電波ローブの中の明るく輝く部分のこと。ホットスポットは、高速ジェット噴流の先端に発生する。3C84の電波ローブは生まれたてでサイズが小さいため、北側の電波ローブからの放射光は、核周円盤に覆い隠されてほぼ見えなくなっている。
●図1
日韓合同VLBI観測網(KaVA)は、日本のVERA電波望遠鏡と韓国のKorean VLBI Networkとの同時合同観測プロジェクト。下は参加局の電波望遠鏡の写真で、左からヨンセイ局(ソウル)、ウルサン局、タムナ局(済州)、水沢局、入来局、小笠原局、石垣局。
●図2
・左図:ホットスポットの位置変化。ホットスポットは、およそ1年間、狭い領域に停滞しながら反時計回りに変化する軌跡を描いた(赤点)。2018年以降は、再び南に向かって伝播を始めた(青点)。
●図3
2012年7月から2020年1月の3C84電波ローブとホットスポットの時間変化。電波ローブとホットスポットは2016年半ばまでは南方向に向かって伝播し続けていた(上段の白破線)が、驚くべきことに、2016年半ばから2017年後半にかけて、ホットスポットの伝播が止まって停滞する現象が発見された(下段の赤破線)。さらに2018年以降には、ホットスポットが消えて、電波ローブの形が歪んで暗くなる現象が発見された。
●動画1( https://www.youtube.com/watch?v=ut8mhk_uvfA / 国立天文台水沢VLBI観測所 秦和弘)
■研究者コメント
・紀基樹 客員研究員 (工学院大学教育推進機構)
ホットスポットがおよそ1年間も動きを止めている観測データを目の当たりにし、まるで宇宙における交通事故の現場を目撃したようで、とても驚きました。活動銀河中心核では、これまで考えてられていたよりも多くの高密度ガス雲が浮遊していて若いジェットと激しい衝突を起こしているのかもしれません。
・新沼浩太郎 教授(山口大学)
今後はさらに、東アジア全域とイタリアの電波望遠鏡群による地球サイズ規模のVLBI観測網で、この天体の数奇な成長過程を詳細に観察し、活動銀河核の謎の解明に迫りたいです。
■研究詳細
・タイトル:Morphological transition of the compact radio lobe in 3C84 via the strong jet-cloud collision
・著者名 紀基樹(工学院大学/国立天文台), 新沼浩太郎(山口大学), 川勝望(呉工業高等専門学校), 永井洋(国立天文台), G. Giovannini(INAF / Univ.Bologna), M. Orienti(INAF), 輪島清昭(韓国天文研究院), F.D’Ammando(INAF), 秦和弘(国立天文台), M. Giroletti(INAF), M.Gurwell(CfA / Harvard)
・研究成果掲載:米国科学誌「The Astrophysical Journal Letters(アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ)」 10月11日(現地時間)
▼取材に関するお問い合わせ先
担当:堀口・樋口・森川
TEL: 03-3340-1498