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【日本大学】全国約60施設・500例の無作為化比較試験「PERSIST-PWI Trial」を日本大学が主導— 持続性心房細動に対するパルスフィールドアブレーション治療で“後壁隔離を追加すべきか”を検証 —

【 概 要 】
 日本大学医学部附属板橋病院 循環器内科(研究代表者:奥村恭男 主任教授)は、日本全国規模の無作為化比較試験(RCT)*1である「持続性心房細動に対するパルスフィールドアブレーションによる肺静脈隔離術と後壁隔離併用を比較する多施設共同ランダム化比較試験(PERSIST-PWI Trial)」を開始しました。
 心房細動(AF)*2は脳梗塞や心不全、生活の質(QOL)低下と関連する頻度の高い不整脈であり、患者数は高齢化とともに増加しています。日本は世界に先駆けて超高齢社会を迎えています。発作的に止まるタイプとは異なり、進行したタイプの心房細動(持続性心房細動)治療の最適化は臨床的にも社会的にも重要な課題です。
 カテーテルアブレーションでは肺静脈隔離術(PVI)*3が治療の基盤ですが、持続性心房細動では再発が課題となる患者さんが少なくありません。左心房に後壁隔離(PWI)*4を追加する治療戦略が提案されてきたものの、従来の熱エネルギー(高周波・クライオ)では、後壁病変の耐久性確保の難しさや食道近接に伴う安全性制約などから、PWI追加の有用性が一貫して示されず、確立したエビデンスには至っていませんでした。
 近年登場したパルスフィールドアブレーション(PFA)*5は非熱エネルギーで心筋に作用し得ることから、後壁領域でもより安全かつ再現性高い病変形成が期待されます。PERSIST-PWIは、PFA(FARAPULSE)を用いて PVI単独 と PVI+PWI(後壁ボックス隔離) を直接比較し、「PFA時代に後壁隔離を追加すべきか」という世界的にも重要な臨床課題に対して、無作為化比較試験で明確な答えを提示することを目指します。
 本試験は日本全国約60施設で実施し、500例を登録予定です。すでに症例登録を開始しており、全国の参加施設で研究が進行しています。治療後12か月まで追跡し、治療成績と安全性を評価します。さらに、術前・術後の3Dマッピング評価を必須化し、後壁ブロックの耐久性と再発の関連など、機序評価も行います。本研究はjRCTに登録(jRCTs032250541)され、倫理審査を経て実施されています。

【 試験情報 】
試験名:PERSIST-PWI Trial
正式日本語名称:持続性心房細動に対するパルスフィールドアブレーションによる肺静脈隔離術と後壁隔離併用を比較する多施設共同ランダム化比較試験
登録:Japan Registry of Clinical Trials(jRCT)jRCTs032250541
規模:日本全国 約60施設、500例(1:1 無作為割付)
研究代表者:日本大学医学部 循環器内科学分野 主任教授 奥村 恭男
共同で統括管理者の責務を負う者:東京慈恵会医科大学 循環器内科学講座 教授 徳田 道史
研究資金:Boston Scientific Investigator Sponsored Research Program(ISREP13531)

【 研究の背景 】
 心房細動(Atrial Fibrillation: AF)は、加齢とともに増加し、脳梗塞や心不全、QOL低下の要因となる不整脈です。カテーテルアブレーションにおいて肺静脈隔離術(PVI)は治療の基盤として確立していますが、持続性心房細動では心房のリモデリング進行や非肺静脈性基質の関与により、再発が課題となります。
 左房後壁は心房細動維持に関わり得る領域として注目され、PVIに後壁隔離(PWI)を追加する治療戦略が提案されてきました。しかし、従来の熱エネルギーでは病変の連続性・耐久性確保の難しさに加え、後壁と食道の近接により安全性上の制約が生じることなどから、PWI追加の有用性は一貫して示されていませんでした。
 PFAは不可逆的電気穿孔を原理とする非熱アブレーションで、周辺組織への影響を相対的に抑えつつ心筋に作用し得る点が注目されています。PFAにより後壁隔離の前提条件が変わり得る現在、「PVIのみ」から一歩進めた最適戦略を、無作為化比較試験で検証する必要があります。

【 研究内容 】
 PERSIST-PWIは、症候性の持続性心房細動患者を対象に、PFA(FARAPULSE)を用いて以下の2群を無作為(1:1)に割り付け、12か月間追跡する多施設共同試験です。
・PVI単独群(対照群)
・PVI+PWI群(介入群:後壁ボックス隔離を追加)
 主要評価項目は、治療後12か月までの「臨床的に重要な治療失敗」の発生です。治療失敗は、心房性不整脈の記録(心房細動・心房粗動・心房頻拍)、再アブレーション、電気的除細動、抗不整脈薬(クラスI/III)の追加または増量などを含む複合指標として評価します。
 主な副次評価項目として、心房性不整脈の頻度、生活の質、および安全性(脳卒中/TIA、心タンポナーデ、主要血管合併症、主要出血など)を評価します。

【 本研究の意義 】
 本研究は、「PFA時代に後壁隔離を追加すべきか」という世界的な臨床課題に対し、日本全国規模の無作為化比較試験として直接的な検証を行う点に意義があります。持続性心房細動に対する最適治療戦略の確立に資することが期待され、将来の治療標準や診療指針の形成にも貢献し得ます。

【 奥村主任教授のコメント 】
 「持続性心房細動では、PVIだけでは再発が課題となる患者さんが少なくありません。PFAの登場により、後壁隔離をより安全に、かつ再現性も高く行える可能性が出てきました。日本全国の先生方と連携し、これまでの多施設共同研究で培った経験を生かして、日本発の確かなエビデンスを構築したいと考えています。PFAの登場で、長年答えを出せなかった“後壁隔離を追加すべきか”という問いに、RCTとして真正面から決着をつけることを目指します。」

【 用語解説 】
※1 無作為化比較試験(Randomized Controlled Trial: RCT)
 参加者を無作為に群分けして治療効果を比較する試験で、臨床エビデンス構築における標準的な研究デザインです。
※2 心房細動(Atrial Fibrillation: AF)
 心房が細かくふるえ、脈が不規則になる不整脈です。動悸や息切れ、疲れやすさの原因となり、脳梗塞や心不全のリスクを高めます。
※3 肺静脈隔離術(PVI)
 心房細動の引き金となりやすい肺静脈周囲を電気的に遮断するアブレーション治療の基本手技です。
※4 後壁隔離(PWI)
 左心房後壁の電気活動を遮断する追加治療で、心房細動維持に関わり得る領域を対象とします。
※5 パルスフィールドアブレーション(PFA)
 不可逆的電気穿孔を原理とする非熱アブレーションで、心筋に作用しつつ周辺組織への影響を相対的に抑え得る点が注目されています。

【 本研究について 】
 本研究は医師主導研究であり、Boston Scientific社のInvestigator Sponsored Research Programの支援を受けて実施されます。企業は、エンドポイント判定、データ解析、解釈、原稿作成に関与しません。利益相反は学会・雑誌規定に従い開示します。

本件に関するお問い合わせ先

日本大学医学部

奥村 恭男(おくむら やすお) 日本大学医学部内科学系 循環器内科学分野 主任教授

住所
〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1
TEL
03-3972-8111
E-mail
okumura.yasuo@nihon-u.ac.jp