【大阪工業学】キノコの効能に関わる分子を解明 希少な酸化ステロールの人工合成に成功
| 【本件のポイント】 ● 生体内に存在し得る化学種を利用し、多様なステロール類を簡便かつ網羅的に合成 ● 前例の少ないステロイド骨格のCD環部に酸素官能基を直接導入する方法を開発 ● 従来法では解析が難しかったステロイド骨格の第四級炭素中心の立体構造を明らかに |
ステロール類は動植物や菌類体内で生産される主要な成分の一つで、ヒトなどの動物では主にコレステロールから、菌類では主にエルゴステロールから生産されていると考えられます。また、真菌類であるキノコにおいては、ステロール成分が味覚や効能にも深く関わっていると考えられます。菌類が産生するステロール類の構造が多様なのは、菌体内で酸化的な代謝によってステロイド骨格※の各部位が酸化され、それに伴いさまざまな官能基変換や結合の切断・生成が起こっているためと考えられます。
本研究グループは、独自に考案したステロール類の生合成仮説に基づき、生体環境に類似する反応条件を用いて、反応性の低いステロイド骨格のCD環部を直接的に酸化する方法を見いだしました。特に、ラジカルが関与する酸素酸化ではステロイド骨格の14位のみが選択的に酸化されることを見いだし、酸素が導入される方向(立体化学)も完全に制御されることを発見しました。
一般にステロール類は炭素数が多く、骨格構造が複雑です。そのため、母体生物からステロール類を発見した科学者が、その立体化学も含めて正確に化学構造を決定するのは容易ではなく、誤って報告されていることも少なくありません。本研究では、信頼できる合成手法によってCD環が酸化されたさまざまな分子を供給し、その全ての化学構造を二次元核磁気共鳴や単結晶X線構造解析によって確実に決定しました。特に、議論の的となる第四級炭素中心(8位、9位、14位)の立体化学を完全決定し、その分光データを開示したことは、今後、未知のステロール類の構造決定に必ず役立つと期待されます。
更に、研究グループは、CD環を酸化した分子から、食用キノコであるシイタケやアンニンコウに含まれる希少な酸化ステロール類を合成し、それらの立体構造を初めて明らかにしました。合成分子の一つであるガルガロールCには破骨細胞の形成を阻害する活性が見出されており、今回の成果は、将来的な骨粗しょう症薬の開発にも役立つことが期待されます。
本研究グループの化学合成は、酸素や鉄イオンなどの生体内に存在し得る化学種を利用し、分子本来の反応性に沿って実施されています。従って、本研究の成果は、いまだ実証されていないステロール類の生体内での生成過程(生合成経路)の解明にも貢献するものです。
本研究の成果は、欧州化学連合Chemistry Europeのフラッグシップジャーナル、ChemistryEuropeに掲載されました。(オープンアクセス、公開2026年6月18日)
本研究は日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(C)「24K08737」の支援を受けて行いました。
用語説明:
※ステロイド骨格
ステロール類が共通してもつ母骨格のこと。3つの6員環と5員環が縮環した四環式骨格である。左下の環
から、A、B、C、D環と名付けられている。
論文情報
論文名 Bioinspired Aerobic Oxidation to Functionalize the CD Ring of the Steroid Framework: Synthesis
and Stereochemical Assignments of Gargalol C and Related Oxysterols
(和訳:生体模倣型酸素酸化によるステロイド骨格CD環の官能基化:ガルガロールC及び関連オキ
システロール類の合成と立体化学決定)
著者 Hinata Togo, Yui Kanda, Shoji Kobayashi*(*筆頭著者)
雑誌名 ChemistryEurope, 2026; 4: e70325. (Open Access)
DOI 10.1002/ceur.70325
URL https://doi.org/10.1002/ceur.70325
公表日 2026年6月18日(オンライン公開)
本件に関するお問い合わせ先
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