【中部大学】世界初、難しかった3個以上の染色体断片を結合させることに動物実験で成功–壊れた遺伝子を修復する技術の開発を目指す–
◆研究成果のポイント◆
・DNA を修復する遺伝子に着目し、マウス受精卵の複雑な遺伝子操作に初めて成功
・染色体断片化後再合成と呼ばれる新しいゲノム現象を検出
・複雑なゲノム構造を持つ疾患モデル動物の作製や治療法開発に期待
本研究では、Recql5変異を利用することで、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9 (注2) を介したCCRsの誘導が可能となり、3つから6つの染色体断片とメガベースサイズ (100万塩基対)単位の逆位を含むマウスを作り出しました。さらに、染色体断片化後再合成 (注3) と呼ばれる新しいタイプのゲノム現象を次世代シーケンサー (注4) で検出し (図2)、その遺伝的メカニズムを解明する手がかりを見出しました。染色体断片化後再合成は、一度に多くの染色体断片が再編成されるというCCRsの特殊な形態です。
今回開発した技術によって、特定の遺伝子や疾患関連の染色体異常を持つ新しいマウスモデルの作成が可能となり、遺伝性疾患の研究や治療法開発に貢献することが期待されます。また、染色体再編の精密な制御によって遺伝子修復法への道を開く可能性があります。
本研究で開発したRecql5変異マウスは理化学研究所バイオリソース研究センターへの譲渡を予定しており、理研を通じて全世界の研究者が利用可能となります。
本研究はJSPS科研費 (21H02395)、日本私立学校振興・共済事業団 学術研究振興資金による助成を受けて行われました。
【論文情報】
雑誌名:GENETICS
論文タイトル:A Recql5 mutant facilitates complex CRISPR/Cas9-mediated chromosomal engineering in mouse zygotes
著者:Satoru Iwata, Miki Nagahara, Risako Ido, Takashi Iwamoto
DOI: 10.1093/genetics/iyae054
URL: https://doi.org/10.1093/genetics/iyae054
【用語解説】
(注1)染色体再編成
染色体の一部が反対方向となった「逆位」や、2つの染色体の一部が入れ替わった「転座」のようなゲノム配列の大きな変化で、がんや先天性疾患の原因となります。
(注2)ゲノム編集技術CRISPR/Cas9
任意のゲノム配列を削除、置換、挿入することができる技術です。CRISPR/Cas9は、標的配列を決めるguide RNA(gRNA)とDNA切断酵素のCas9 nucleaseだけで標的のDNA配列を切断、破壊ができます。
(注3)染色体断片化後再合成 (chromoanasynthesis)
がんの進行は遺伝子のわずかな変異が段階的に起こり、加齢と共に悪性化すると考えられています。しかし、染色体断片化後再合成は、それまでの理解を超えて複雑な再編成が一度に劇的に形成されることを示す新しい概念です。この現象では、DNAの複製プロセス中に多数の染色体断片が不正確に再結合することで、複数の遺伝的変異が一斉に発生します。chromoanasynthesisは直訳すると染色体再合成ですが、ここでは単なる染色体再編成と区別するために染色体断片化後再合成という名称を使用しています。
(注4)次世代シーケンサー
DNA配列を高速かつ大規模に解読する技術です。これにより、生物の遺伝情報を詳細に分析することが可能となり、疾患のメカニズム解明につながります。
【お問い合わせ先】
(研究内容について)
中部大学 実験動物教育研究センター 講師 岩田 悟
電子メール satoru_iwata@isc.chubu.ac.jp
電話 0568-51-9803(直通)
本件に関するお問い合わせ先
中部大学 学園広報部広報課
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