【昭和大学・生理学研究所】炎症時に感じる焼けるような痛みにはリン酸化TRPV1とアノクタミン1の相互作用が重要であることを論文発表 ― 新たな鎮痛薬開発に繋がる期待
細胞内のカルシウムによって活性化するクロライドチャネルであるアノクタミン1(ANO1)もTRPV1を持つ感覚神経に発現しており、その活性化は灼熱痛を強めることが、筆者らのこれまでの研究で明らかとなっています。活性化したTRPV1を介して細胞内に流入するカルシウムによってアノクタミン1が活性化されると神経興奮が高まるため、辛いものを食べた時に感じる灼熱痛のような急性疼痛(※1)が増悪するのですが、炎症性疼痛(※2)などにおけるこの二分子間の相互作用は不明でした。
炎症においてTRPV1は細胞内に存在するプロテインキナーゼC(PKC)というタンパク質によってリン酸化を受けます。リン酸化TRPV1は通常よりも活性化しやすくなっており、これが痛覚過敏(※3)やアロディニア(※4)の原因と考えられています。そこで今回、PMAという化合物を使ってTRPV1を人工的にリン酸化し、この炎症類似条件においてTRPV1とアノクタミン1の相互作用がどのように変化するのか電気生理学的・生化学的に解析しました。
その結果、これまで言われていたように、通常ではTRPV1をほとんど活性化しない濃度のカプサイシンや37℃という深部体温程度の熱刺激によってTRPV1は弱く活性化されました。ところが、この弱いTRPV1活性化を介してもなお、アノクタミン1は強く活性化することが判明しました。この際、リン酸化TRPV1とアノクタミン1同士の直接的なタンパク質間結合は、リン酸化させていないTRPV1の時と比べて変化はありませんでした。これらの結果は、TRPV1とアノクタミン1の相互作用においては、リン酸化TRPV1の活性化だけに依存してアノクタミン1が活性化することを示しています。
本研究成果は、完全英語化され2024年より国際誌として生まれ変わった、日本疼痛学会誌『Pain Research』において、その最初の論文として2024年1月12日に掲載されました。
■用語解説
※1 急性疼痛
怪我をした時などに感じる痛みのこと。傷が癒えると自然と感じなくなる、生物に危機的環境を知らせる重要な痛みである。
※2 炎症性疼痛
炎症を起こしている部位で感じる痛み。急性疼痛と違い、痛覚過敏やアロディニアといった生理的ではない痛みが生じる。
※3 痛覚過敏
痛みを引き起こす刺激(カプサイシンや42℃を超えるような熱刺激など)であっても程度が小さければ強い痛みは感じない。しかし、そのような弱い刺激であっても強く痛みを感じるような状態のことを痛覚過敏という。
※4 アロディニア
異痛症とも呼ばれる痛み。通常では痛みとはならない刺激(体温など)によって強い痛みが生じるような状態のこと。帯状疱疹などで服が皮膚に擦れただけで生じる、刺されるような痛みなどもアロディニアに属する痛み。
■論文情報
・掲載誌: Pain Research
・論文名: Phosphorylated TRPV1 and ANO1 ⁄ TMEM16A interaction induced by low concentration of capsaicin or innocuous heat stimulation
(低濃度カプサイシンもしくは非侵害性熱刺激により誘発されるリン酸化TRPV1とANO1/TMEM16Aの相互作用)
・著者名: Yasunori Takayama*, Makoto Tominaga (*Corresponding author)
・掲載日: 2024年1月12日
・DOI: https://doi.org/10.11154/pain.39.1
▼本件に関する問い合わせ先
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自然科学研究機構 生理学研究所 細胞生理研究部門 教授
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