白鴎大学

作家・楽月慎さん 母校で過ごしたかけがえのない時間を小説に

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今年3月、楽月慎の第三作「思川(おもいがわ)バルーン」(発行・幻戯書房)が刊行された。爽やかな青空に赤と黄色の風船が浮かぶ、やさしい表紙の本だ。

 不安・焦燥・期待・・・既存の言葉では表現できない、簡単に表現されたくない心の形、それが「バルーン」。誰もが今にも壊れそうな「バルーン」を抱え、大切にし、あるいは持て余し、いっそ壊したくなりながら生きている。そんな不安定な自分を打破し、「革命」を願う主人公の日々を、軽やかな言葉で綴った小説だ。読み終わり、本を閉じた時の心境は、表紙の風景にぴったりと重なっているのではないだろうか。

 作者である楽月氏は、白鴎大学経営学部の卒業生(1998年度)。作中にはユニークな教授も登場し、主人公は教授の人間性に惹かれて講義を受けていたりする。短いが心のこもった描写に、作者は実際の大学生活の中でも、教授との心に残る出会いがあったのだろうと推測させられる。

 本作の題名にもある「思川」は、白鴎大学のそばに流れる実在の川で、大学の名前の由来も、この思川に「かもめ」が飛来していたことによるという。楽月氏はまさに、白鴎大学から巣立ち、大空を飛び始めたカモメだ。今後の躍進が期待される。

楽月慎(らくづき・しん)
1975年宮城県生まれ。白鴎大学経営学部卒業。
2005年、『陽だまりのブラジリアン』で第16回朝日新人文学賞を受賞。