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ビールの苦味成分が手足の痛みや痺れ、腹痛を抑制することを発見 糖尿病合併症や抗がん剤の副作用等、従来の鎮痛薬が効かない痛みにも効果 -- 近畿大学

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近畿大学薬学部(大阪府東大阪市)教授 川畑 篤史(専門:病態薬理学)らの研究グループは、ビール原料の1つで、苦味や香りづけなどに使用されるホップの成分が、リウマチの痛みや神経損傷による痛み、また過敏性腸症候群患者に見られる腹痛など幅広い痛みの治療に応用できることを発見し、マウスを用いた実験において実際に足の痛みや腹痛を抑制することを証明しました。特に、モルヒネをはじめとする麻薬性鎮痛剤が効かない神経障害性疼痛(糖尿病の合併症、ヘルペス後神経痛、抗がん剤の副作用など)にも有効である可能性が高く、今後の臨床応用に大きな期待がされています。
本研究成果は、平成30年(2018年)6月19日(日本時間)付で、エルゼビア社の学術雑誌「Neuropharmacology」オンライン版に掲載されました。

【本件のポイント】
● ビール原料のホップに含まれる6-プレニルナリンゲニンと関連化合物が、知覚神経に発現するCav3.2 T型カルシウムチャネルを阻害することを発見
● 神経障害によって起こる痛みや結腸過敏によって起こる腹痛が抑制されることをマウスを用いた実験で実証に成功
● 臨床応用に向けた製薬企業との共同研究が現在進行中

【本件の概要】
 糖尿病患者や抗がん剤で治療中の患者によく見られる手足の痺れや痛み(神経障害性疼痛)、過敏性腸症候群患者に見られる腹痛など麻薬性鎮痛剤が効かない(使用できない)痛みに対する有効な治療薬の開発が、望まれています。
 この度、薬学部教授 川畑 篤史は、故・松田秀秋(元近畿大学薬学部教授、【専門:薬用資源学】 2017年逝去)の協力を得て、生薬の一種である苦参から「Cav3.2 T型カルシウムチャネル」を阻害するソホラフラバノンGの同定に成功、さらに、類似構造をもつ天然物質の中から、ホップの成分である6-プレニルナリンゲニンが、知覚神経に発現する痛みの原因分子であるCav3.2を最も強く阻害することを発見しました。また、マウスの実験を通じて、この化合物が神経障害による痛みや結腸過敏による腹痛を抑制すること、Cav3.2を欠損させたマウスでは鎮痛効果が消失することを実証しています。一方、鎮静作用や心血管系への副作用がないことが確認されており、今後ヒトへの応用が期待されます。

【掲載誌】
・雑誌名:''Neuropharmacology''[インパクトファクター:5.012 (2016)]
    ※(英)エルゼビア社の学術雑誌
・論文名:Blockade of T-type calcium channels by 6-prenylnaringenin, a hop component, alleviates neuropathic and visceral pain in mice(6-プレニルナリンゲニンによるT型カルシウムチャネルの遮断によってマウスの神経障害性疼痛と内臓痛が緩和される)
・著者:川畑篤史(責任著者)、松田秀秋(元薬学部教授)、関口富美子(薬学部准教授)、坪田真帆(薬学部講師)、村田和也(薬学部准教授)、吉田 繁(元理工学部教授)、西川裕之(薬学部研究員)、出口貴浩(ア・ファーマ近大)、藤田友代(薬学部医療薬学科2014年卒)、山岡 桜(薬学部医療薬学科2016年卒)、友近 拳(薬学部創薬科学科2017年卒)、大野 菫(薬学研究科薬科学専攻博士前期課程2016年修了)、市井真紀(薬学部医療薬学科2016年卒)、市川美緒(薬学部医療薬学科2017年卒)、洞口大和(薬学部医療薬学科2018年卒)、植野裕美子(薬学部医療薬学科6年)、小池寧々(薬学部創薬科学科4年)、谷野公俊(徳島文理大学准教授)、Huy Du Nguyen(富山大学大学院博士後期課程3年)、岡田卓哉(富山大学大学院博士後期課程3年)、大久保つや子(福岡看護大学教授)、豊岡尚樹(富山大学教授)

▼本件に関する問い合わせ先

総務部広報室

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: 〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1

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