東京医科大学

東京医科大学公衆衛生学分野町田征己講師ら研究チーム「COCOAに対する市民の懸念 最も高いのはその予防効果について ~COCOA使用者の内、効果を最大限にするために必要な使い方をしている人は60.8%~」

大学ニュース  /  先端研究

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東京医科大学(学長:林由起子/東京都新宿区)公衆衛生学分野町田征己講師らの研究チームは、関東地方在住の20-79歳の男女2,013人を対象に、接触確認アプリ:COCOAに関する考えについてインターネット調査を2020年9月8日に実施しました。その研究成果が2021年4月18日に国際医学雑誌Public Health in Practiceオンライン版で発表されました。

【本研究のポイント】
●2020年9月8日に関東地方在住の20歳から79歳の市民2,013人(性別、年齢、居住地域の構成割合が人口推計と一致するように対象者を抽出)を対象にCOCOAに関する考え、使い方についてインターネット調査を実施しました。
●COCOAの懸念事項について、75.5%が「役に立つかわからない」と回答しました。
●プライバシーへの懸念、COCOAの効果に対する懸念、電池の消耗や通信費への懸念がある人ではCOCOAを使用している人が少ないことが明らかになりました。
●また、使用者のうち、初期設定を行う・Bluetoothを常にOnにするなど、COCOAの効果を最大限に活用するために必要な使い方をしている人は60.8%のみでした。
●今後の接触確認アプリの普及においては、これらの懸念を考慮した啓発活動が重要である可能性が本研究で示されました。

【研究の背景】
 新型コロナウイルス感染症において、濃厚接触者の調査(以下、接触確認)は重要な対策の一つです。接触確認は従来、電話や面談での口頭で行う方法が一般的でしたが、新たな方法として、スマートフォンのBluetooth機能を活用した接触確認アプリが開発されました。日本版接触確認アプリ:COCOAは2021年4月時点で総ダウンロード数は約2,700万件であり、多くの方が使用している一方で、より効果を高めるためにはさらなる普及が必要になっています。本研究はCOCOAに関する市民の考えとその使用状況を明らかにすることを目的に行われました。

【本研究で得られた結果・知見】
 COCOAについて、回答者のうち75.5%が「役に立つかわからない」と回答しました。また、回答者の約半数がプライバシーやセキュリティ、接触者と分かったときの煩わしさ、電池の消耗や通信費への懸念があると回答しました。COCOAを実際に使用していると答えた429人のうち、初期設定を行う・Bluetoothを常にOnにするなど、COCOAの効果を最大限に活用するために必要な使い方をしている人は60.8%のみでした。
 また、多変量解析を用いて、COCOAの使用者がどのような対象に少ないかも解析しました。その結果、心理的要因としては、プライバシーへの懸念、COCOAの効果に対する懸念、電池の消耗や通信費への懸念がある人ではCOCOAを使用している人が少ないことが明らかになりました。さらに、社会統計学的要因としては、働いていない人や所得が低い人でCOCOAを使用している人が少ないことが明らかになりました。

【今後の研究展開および波及効果】
 接触確認アプリは、最大限に効果を発揮した場合に有効な感染症対策になることがシミュレーション研究で報告されています。1) また、ワクチンなどの特異的な治療・予防法と比較して迅速に開発が可能であることから、今後さらなる未知の感染症が流行した場合の初期の感染症対策として重要になる可能性があります。
 しかし、接触確認アプリの導入率は、プライバシーに関する懸念やアプリケーションに関する問題などから、世界的にも芳しくない状況です。今後の接触確認アプリの普及においては、本研究で明らかになった市民の懸念事項を考慮するとともに、その使用方法についても啓発を行うことが重要であると考えられます。

【掲載誌名・DOI】
 Public Health in Practice
 DOI: 10.1016/j.puhip.2021.100125

【論文タイトル】
 Survey on Usage and Concerns of a COVID-19 Contact Tracing Application in Japan

【著者】
 町田 征己、中村 造、小島 多香子、齋藤 玲子、中谷 友樹、埴淵 知哉、高宮 朋子、小田切 優子、福島 教照、菊池 宏幸、天笠 志保、渡邉 秀裕、井上 茂

【主な競争的研究資金】
 本研究は東京医科大学より支給された研究費を用いて行ったものです。

○その他の新型コロナウイルス感染症に関する東京医科大学公衆衛生学分野の研究結果
 https://www.tokyo-med.ac.jp/univ/covid-19/information.html#new2
研究結果(1):感染予防行動のうち「目鼻口に触らない」の実施率が最も低い
研究結果(2):予防行動に関する行動変容は男性と低所得者で少ない
研究結果(3):COVID-19 アウトブレイク下において 風邪症状のある労働者の多くが十分に自主隔離できていない
研究結果(4):COVID-19 パンデミック下においても マスクを正しく使用している者は少ない ~マスクマネジメントに関するさらなる啓発が求められている~
研究結果(5):新型コロナウイルスの流行下で一般市民のメンタルヘルスは悪化した ~悪化したのは特に低所得者、呼吸器疾患を抱える者だった~
研究結果(6):日常生活での手洗い回数は1日10回では不十分
研究結果(7):低所得者のメンタルヘルスは感染者が減少してもすぐには改善しない
研究結果(8):新型コロナワクチン予防接種の普及にはワクチンは効果があるという認識や自分が 予防接種を受けることで他者も守るという思いが重要
研究結果(9):COVID-19流行下の在宅勤務者で職場勤務者よりも仕事中の座位時間が1時間以上長い
研究結果(10):新型コロナウイルス感染症の流行下、『医療機関での感染恐怖』の払拭が治療中断や病状悪化予防に重要な可能性

○参考文献
1) Robert Hinch WP, Anel Nurtay, Michelle Kendall, Chris Wymant, Matthew Hall. Effective Configurations of a Digital Contact Tracing App: A report to NHSX
 https://cdn.theconversation.com/static_files/files/1009/Report_-_Effective_App_Configurations.pdf?1587531217

▼本件に関する問い合わせ先

総務部広報・社会連携推進課

住所

: 〒160-8402 東京都新宿区新宿6-1-1

TEL

: 03-3351-6141

E-mail

d-koho@tokyo-med.ac.jp

chart.jpg 図:COCOAに関する市民の懸念事項