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抗がん剤の原料植物 奄美・沖縄で独自進化 他人の空似をDNAで解明 生物多様性の証に -- 摂南大学

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摂南大学(大阪府寝屋川市)薬学部の伊藤優講師と岡山理科大学自然フィールドワークセンターの東馬哲雄准教授、インド・シバシ大学植物学科の‪シュリラング・S・ヤダフ教授らの国際共同研究グループは、抗がん剤イリノテカンの製造原料の一つであり、インドからスリランカ、東南アジア、台湾、奄美・沖縄に広く分布するとされてきた常緑樹クサミズキについて、奄美・沖縄・台湾のものと他の地域のものがそれぞれ独自に進化した2つの独立種であることを突き止めました。

【本件のポイント】
●世界自然遺産に登録された「奄美・沖縄」の多様性を特徴づける発見
●がん研究に興味を持っていた学生の卒業研究で偶然見つかった新知見
●SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」につながると期待

 本研究グループは、抗がん物質カンプトテシンを含有し、抗がん剤イリノテカンの製造原料の一つであるクサミズキに着目し、インドやカンボジア、中国、台湾、奄美・沖縄で収集したクサミズキ及びその近縁種のDNAの塩基配列を調べ、分子系統解析※1を行いました。その結果、インド西部に分布しているクサミズキと、奄美・沖縄と台湾に分布しているクサミズキは、それぞれ独自の進化を遂げた別種であることが示されました。本成果は、生物多様性ホットスポット※2の一つである日本列島の中でも突出した多様性を誇る世界自然遺産「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」を特徴づける発見であり、またSDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう※3」につながると期待されます。

 なお本研究は、本学薬学部の卒業研究において、がん研究に興味を持った学生が本学薬学部附属薬用植物園の温室で偶然クサミズキを手に取って調べたことがきっかけとなり行われました。伊藤講師の研究室では今後も、国内有数の規模を誇る薬用植物園で維持管理されている貴重な植物資源の基礎研究を推進していきます。

 本研究成果は、欧州の植物科学誌「Plant Systematics and Evolution」(2021年12月15日付)に掲載されました。
 URL: https://doi.org/10.1007/s00606-021-01797-6

用語説明:
※1 DNAの塩基配列をコンピューター上で比較し統計処理をすることで、従来の外部形態の比較では分からなかった種の違いや進化の道筋を明らかにする手法。
※2 世界でその地域にしか生息していない固有種を多く含む貴重な生態系を持つ地域で、絶滅の危機に瀕している動植物も多いため、重点的な保全策が必要な地域でもある。
※3 人類がこれまでに享受してきた地球からの恩恵を今後の世代にも受け継ぐための世界共通の目標の一つで、本研究で得られたような分類学的知見を基に、保護すべき動植物種や生態系の選定が行われている。

▼本件に関する問い合わせ先

学校法人常翔学園 広報室

大野・坂上

住所

: 大阪府寝屋川市池田中町17-8

TEL

: 072-800-5371

1.png 分子系統解析により得られた系統樹。インド西部のクサミズキ(赤)と奄美・沖縄と台湾のクサミズキ(青)がそれぞれ独自に進化した独立種であることを示す。