昭和大学

10万人以上を対象としたBRCA1/2遺伝子の14がん種を横断的解析 -- 東アジアに多い3がん種へのゲノム医療の可能性

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理化学研究所(理研)生命医科学研究センター基盤技術開発研究チームの桃沢幸秀チームリーダー、碓井喜明特別研究員(岡山大学客員研究員、愛知県がんセンター任意研修生)、関根悠哉大学院生リサーチ・アソシエイト(研究当時、現秋田大学大学院生)、東京大学の村上善則教授、松田浩一教授、愛知県がんセンターの松尾恵太郎分野長、国立がん研究センター中央病院の吉田輝彦部門長、佐々木研究所附属杏雲堂病院の菅野康吉科長、昭和大学病院の中村清吾特任教授らの国際共同研究グループ*は、乳がんなど4がん種の発症リスクの上昇に関与する遺伝子(原因遺伝子)とされるBRCA1・BRCA2の両遺伝子(BRCA1/2遺伝子)が胃がん、食道がん、胆道がんの発症リスクも上昇させることを明らかにしました。本研究成果により、BRCA1/2遺伝子のゲノム情報を用いた個別化医療がより幅広い形で進展することが期待できます。なお、本研究は、科学雑誌『JAMA Oncology』オンライン版(4月14日付:日本時間4月15日)に掲載されます。

 今回、国際共同研究グループはBRCA1/2遺伝子について、バイオバンク・ジャパン[1]が保有している日本人集団における14種のがんについて、がん患者とその対照群の合計10万人以上を対象として、世界最大規模のがん種横断的ゲノム解析を行いました。その結果、BRCA1/2遺伝子は既に関連が知られている乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膵がんの4がん種に加えて、東アジアに多い胃がん、食道がん、胆道がんの3がん種の疾患リスクを高めることを発見しました。この結果は、BRCA1/2遺伝子に病的バリアント[2]を持つ患者に対して、既知の4がん種だけでなく新たに同定した3がん種についても、早期発見スクリーニングの実施や、PARP阻害剤[3]の治療効果が期待できることを示しています。

 本研究は、科学雑誌『JAMA Oncology』オンライン版(4月14日付:日本時間4月15日)に掲載されます。

※詳細は添付PDFを参照。

■補足説明
[1] バイオバンク・ジャパン
 日本人集団27万人を対象とした、世界最大級の疾患バイオバンク。オーダーメード医療の実現プログラムを通じて実施され、ゲノムDNAや血清サンプルを臨床情報と共に収集し、研究者へ分譲している。2003年から東京大学医科学研究所内に設置されている。

[2] 遺伝的バリアント、病的バリアント
 遺伝的バリアントは、遺伝子の塩基配列の変化を指し、生物の多様性を生じさせる。また、遺伝的バリアントのうち疾患発症の原因となるものを病的バリアントという。

[3] PARP阻害剤
 DNAの相同組換え修復機構が機能していないがん細胞に、特異的に細胞死を誘導する新しい分子標的薬のこと。PARPはPoly (ADP-Ribose)Polymeraseの略。

*国際共同研究グループ
●理化学研究所
《生命医科学研究センター》
・基盤技術開発研究チーム
 チームリーダー 桃沢 幸秀 (ももざわ ゆきひで)
 テクニカルスタッフII 笹井 瑠美 (ささい るみ)
 特別研究員 碓井 喜明 (うすい よしあき)
(岡山大学医学部血液・腫瘍・呼吸器内科学 客員研究員、愛知県がんセンター研究所 がん情報・対策研究分野 任意研修生)
 技師 岩崎 雄介 (いわさき ゆうすけ)
 研究員 水上 圭二郎 (みずかみ けいじろう)
 大学院生リサーチ・アソシエイト(研究当時) 関根 悠哉 (せきね ゆうや)
(現 秋田大学大学院医学系研究科腎泌尿器科学講座 大学院生)
 テクニカルスタッフII 遠藤 ミキ子 (えんどう みきこ)
 テクニカルスタッフII(研究当時) 稲井 智栄 (いない ちひろ)
 テクニカルスタッフI 高田 定暁 (たかた さだあき) ※高は「はしごだか」)
・がんゲノム研究チーム
 チームリーダー 中川 英刀 (なかがわ ひでわき)
《統合生命医科学研究センター(研究当時)》
 副センター長(研究当時) 久保 充明 (くぼ みちあき)
●東京大学 医科学研究所 人癌病因遺伝子分野
 教授 村上 善則 (むらかみ よしのり)
●東京大学 大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻
《クリニカルシークエンス分野》
 教授 松田 浩一 (まつだ こういち)
《複雑ゲノム形質解析分野》
 教授 鎌谷 洋一郎 (かまたに よういちろう)
(理研 生命医科学研究センター ゲノム解析応用研究チーム 客員主管研究員)
●愛知県がんセンター
《がん情報・対策研究分野》
 研究員 谷山 祐香里 (たにやま ゆかり)
 分野長 伊藤 秀美 (いとう ひでみ)
《がん予防研究分野》
 分野長 松尾 恵太郎 (まつお けいたろう)
●国立がん研究センター
《研究所 ゲノム生物学研究分野》
 ユニット長 白石 航也 (しらいし こうや)
 分野長 河野 隆志 (こうの たかし)
《中央病院 遺伝子診療部門》
 医長 平田 真 (ひらた まこと)
(東京大学 医科学研究所 人癌病因遺伝子分野 非常勤講師)
 部門長 吉田 輝彦 (よしだ てるひこ)
●佐々木研究所附属杏雲堂病院 遺伝子診療科
 科長 菅野 康吉 (すがの こうきち)
(国立がん研究センター 中央病院 遺伝子診療部門 非常勤医員)
●昭和大学病院
 ブレストセンター長・特任教授 中村 清吾 (なかむら せいご)
●QIMRベルクホーファー医学研究所 Division of Genetics and Population Health(豪州)
 グループリーダー アマンダ・B・スパードル(Amanda B. Spurdle)
 研究アシスタント マイケル・T・パーソンズ(Michael T. Parsons)

■研究支援
 本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)ゲノム創薬基盤推進研究事業「乳がん・大腸がん・膵がんに対する適切な薬剤投与を可能にする大規模データ基盤の構築(研究開発代表者:桃沢幸秀)」、同革新的がん医療実用化研究事業「がんリスクに対する環境要因・遺伝要因の公衆衛生学的インパクトを評価する大規模分子疫学研究(研究開発代表者:松尾恵太郎)」「全ゲノムクリニカルシークエンスを志向したAYA世代がん胚細胞系列ゲノム構造変化の解析(研究開発代表者:河野隆志)」、および同次世代がん医療創生研究事業「難治性若年発症婦人科がんの発症リスクに関わる胚細胞系列変異の同定とその機能評価系の構築(研究開発代表者:白石航也)」による支援を受けて行われました。またAustralian National Health and Medical Research funding(Amanda B. SpurdleおよびMichael T. Parsons)の支援も受けて行われました。

■論文情報
<タイトル>
 Expansion of Cancer Risk Profile for BRCA1 and BRCA2 Pathogenic Variants
<著者名>
 Yukihide Momozawa, Rumi Sasai, Yoshiaki Usui, Kouya Shiraishi, Yusuke Iwasaki, Yukari Taniyama, Michael T. Parsons, Keijiro Mizukami, Yuya Sekine, Makoto Hirata, Yoichiro Kamatani, Mikiko Endo, Chihiro Inai, Sadaaki Takata, Hidemi Ito, Takashi Kohno, Koichi Matsuda, Seigo Nakamura, Kokichi Sugano, Teruhiko Yoshida, Hidewaki Nakagawa, Keitaro Matsuo, Yoshinori Murakami, Amanda B. Spurdle, Michiaki Kubo
<雑 誌>
 JAMA Oncology
<DOI>
 10.1001/jamaoncol.2022.0476

▼発表者・機関窓口
<発表者> ※研究内容については発表者にお問い合わせください。
●理化学研究所 生命医科学研究センター 基盤技術開発研究チーム
 チームリーダー 桃沢 幸秀 (ももざわ ゆきひで)
 特別研究員 碓井 喜明 (うすい よしあき)
(岡山大学医学部血液・腫瘍・呼吸器内科学 客員研究員、愛知県がんセンター研究所 がん情報・対策研究分野 任意研修生)
 大学院生リサーチ・アソシエイト(研究当時) 関根 悠哉 (せきね ゆうや)
(現 秋田大学大学院医学系研究科腎泌尿器科学講座 大学院生
 TEL: 045-503-9326
 FAX: 045-503-9606
 E-mail: momozawa@riken.jp(桃沢)

●東京大学 医科学研究所 人癌病因遺伝子分野
 教授 村上 善則 (むらかみ よしのり)

●東京大学 大学院新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 クリニカルシークエンス分野
 教授 松田 浩一 (まつだ こういち)

●愛知県がんセンター研究所 がん予防研究分野
 分野長 松尾 恵太郎 (まつお けいたろう)

●国立がん研究センター 中央病院 遺伝子診療部門
 部門長 吉田 輝彦 (よしだ てるひこ)

●佐々木研究所附属杏雲堂病院 遺伝子診療科
 科長 菅野 康吉 (すがの こうきち)
(国立がん研究センター 中央病院 遺伝子診療部門 非常勤医員)

●昭和大学病院
 ブレストセンター長・特任教授 中村 清吾 (なかむら せいご)

<機関窓口>
※今般の新型コロナウイルス感染症対策として、理化学研究所では在宅勤務を実施しておりますので、メールにてお問い合わせ願います。
●理化学研究所 広報室 報道担当
 E-mail: ex-press@riken.jp

●東京大学医科学研究所 国際学術連携室(広報)
 TEL: 090-9832-9760
 E-mail: koho@ims.u-tokyo.ac.jp

●東京大学大学院新領域創成科学研究科 広報室
 TEL: 04-7136-5450
 E-mail: press@k.u-tokyo.ac.jp

●愛知県がんセンター 運用部経営戦略課企画・経営グループ
 TEL: 052-762-6111(代表)
 E-mail: tmushika@aichi-cc.jp

●国立がん研究センター 企画戦略局広報企画室
 TEL: 03-3542-2511
 FAX: 03-3542-2545
 E-mail: ncc-admin@ncc.go.jp

●佐々木研究所 財団事務局
 TEL: 03-3294-3286
 FAX: 03-3294-3290
 E-mail: otani@po.kyoundo.jp

●昭和大学 総務部総務課 大学広報係
 TEL: 03-3784-8059
 E-mail: press@ofc.showa-u.ac.jp

●岡山大学 総務・企画部広報課
 TEL: 086-251-8415
 E-mail: www-adm@adm.okayama-u.ac.jp

●秋田大学
 TEL: 018-889-3019
 E-mail: kouhou@jimu.akita-u.ac.jp

<AMED事業について>
●日本医療研究開発機構(AMED)
・ゲノム・データ基盤事業部ゲノム医療基盤研究開発課 ゲノム創薬基盤推進研究事業事務局
 TEL: 03-6870-2228
 FAX: 03-6870-2244
 E-mail: genomic-medicine@amed.go.jp
・創薬事業部 医薬品研究開発課 次世代がん医療創生研究事業
 TEL: 03-6870-2219
 E-mail: cancer@amed.go.jp
・ゲノム・データ基盤事業部 医療技術研究開発課 疾患基礎研究事業部 疾患基礎研究課 革新的がん医療実用化研究事業
 TEL: 03-6870-2286
 E-mail:kakushingan@amed.go.jp

昭和1.jpg 本研究で明らかにした病的バリアント保持者の85歳までの累積罹患リスク