東京医科大学

【東京医科大学】血液内科の無菌室長期療養患者の心理面におけるペット型ロボット(aibo)の支援効果を確認

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 東京医科大学(学長:林 由起子/東京都新宿区)血液内科学分野は、無菌室で数ヶ月の隔離治療が必要となる血液疾患の患者さんの心理的なサポートにペット型ロボット(aibo)が有効かどうかについて実証実験を行った結果aiboの介入により一定の心理的ストレス改善効果が認められた。この研究成果は、2024年2月27日にScientific Reportsに掲載された。

【本研究のポイント】
●「隔離環境下での長期入院を要する造血器腫瘍患者の精神衛生向上・改善にaiboは有用か?」という点を、患者のストレスホルモンを定期的に測定することで検証した。
● その結果、aiboの介入による一定のストレス改善効果が認められた。
● 科学的にストレス軽減を評価した同様の報告はなく、先進的な知見が得られたと考えられる。

【研究の背景】
 近年、がんは慢性疾患の一つと捉えられるようになり、がん患者の長期的な心理過程やソーシャルサポートなどの研究が進んできている。特に血液内科領域の悪性腫瘍患者は、化学療法による副作用や合併症による身体的苦痛とそれに伴う精神的苦痛に加え、無菌室という特殊環境下での孤独感、閉塞感などの精神的苦痛も経験する。
 小児科患者や慢性疾患患者の療養時の精神ケアに動物介在療法が有効であるという報告は複数あり、セラピードッグを導入している施設も多くなっているが、血液内科患者は免疫能の低下と感染予防の観点から動物介在療法の導入は困難である。
 一方で、アレルギーや人畜感染症などの課題から動物介在療法を行うことのできない対象者に対する精神的ケアをペット型ロボットで代用できないかを比較検討した試みが報告されていることから、ペット型ロボットによるセラピー効果は十分に期待できると考え、このたび本研究を実施するに至った。

【本研究で得られた結果・知見】
 隔離環境下での長期入院を要する造血器腫瘍患者に対し、患者のストレスホルモンを定期的に測定した結果、ペット型ロボットの介入による一定の心理的ストレス改善効果が認められた。また、ペット型ロボット介入による安全上の影響はなく、運用可能であると考えられる。(図1)

【今後の研究展開および波及効果】
 以前からも血液内科病棟では面会制限があり、コロナ禍でそれがさらに厳しいものになった中、aiboとのコミュニケーションは非常に有用であると考えられる。
 コロナ禍のステイホーム期間、aiboの開発元であるソニーは「運動不足解消」のため、aiboのラジオ体操機能を配信している。今回の研究においては、無菌室患者さんがaiboに「ラジオ体操を踊って」と声をかけ、aiboがラジオ体操のふるまいをした際に、患者さんも一緒にラジオ体操をする様子も見られ、導入当初は想定していなかったリハビリ向上の効果もあった。
 このことから、感情面に加え、早期の筋力改善、離床効果など身体面への効果にも期待できると考えている。

【掲載誌名・DOI】
掲載誌名:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-024-54286-4

【論文タイトル】
Robot therapy aids mental health in patients with hematological malignancy during hematopoietic stem cell transplantation in a protective isolation unit

【著者】
山田晃子*、赤羽大悟、竹内志穂、宮田香織、佐藤孝子、後藤明彦 (*:責任著者)


※aiboはソニーグループ株式会社の商標です。

▼本件に関する問い合わせ先

企画部 広報・社会連携推進室

住所

: 〒160-8402 東京都新宿区新宿6-1-1

TEL

: 03-3351-6141

E-mail

d-koho@tokyo-med.ac.jp

20240312photo.jpg 当院無菌室エリアの様子とaibo

20240312-1.jpg 図1:唾液ストレスホルモン:クロモグラニンA(CgA)を無菌室入室時、治療中、無菌室退室時に測定・比較した結果を示している。aiboと触れ合った患者さんのCgA平均値は低下することが示され、ストレス軽減効果が期待される結果となった。

20240312-2.jpg 【参考資料】ペット型ロボット(aibo)について(※掲載許諾済)