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東京医科大学(学長:林 由起子/東京都新宿区)人体病理学分野の長尾俊孝主任教授、泌尿器科学分野の下平憲治講師、大野芳正主任教授らの研究グループは、前立腺がん組織中の篩状腺管構造の占拠率と術後の生化学的再発との関連についてデジタル病理システムを用いて解析し、篩状腺管構造が術後の生化学的再発に強く関連していることを明らかにしました。この研究成果は、定期的に行われている国際泌尿器病理学会による前立腺癌の悪性度分類の改訂の際に重要なエビデンスとなると考えられ、2024年3月13日に、国際医学誌Cancer Medicine誌 (IF 4.000)にオープンアクセス論文として掲載されました。
【概要】
東京医科大学(学長:林 由起子/東京都新宿区)人体病理学分野の長尾俊孝主任教授、泌尿器科学分野の下平憲治講師、大野芳正主任教授らの研究グループは、前立腺がん組織中の篩状腺管構造(シジョウセンカンコウゾウ)の占拠率と術後の生化学的再発との関連についてデジタル病理システムを用いて解析し、篩状腺管構造が術後の生化学的再発に強く関連していることを明らかにしました。この研究成果は、定期的に行われている国際泌尿器病理学会による前立腺癌の悪性度分類の改訂の際に重要なエビデンスとなると考えられます。この研究結果は、2024年3月13日に、国際医学誌Cancer Medicine誌 (IF 4.000)にオープンアクセス論文として掲載されました。
【本研究のポイント】
●前立腺がんの組織学的悪性度の指標にはグリーソン分類が用いられており、パターン1からパターン5までの5段階に分けられています。
●悪性度の高いパターン4には、①癒合腺管、②篩状腺管、③不明瞭な管腔形成、④糸球体様構造の4型がありますが、篩状腺管構造はもっとも予後不良と言われています。しかし、パターン4のみの前立腺がんで再発との関連を解析した研究はこれまでありませんでした。
●本研究では2018年までに東京医科大学病院で行われたロボット支援前立腺全摘術を受けた1870名のうち手術検体でグリーソンスコア4+4と診断された108名についてデジタル病理解析で篩状腺管構造の占める割合と生化学的再発との関連を解析しました。
●篩状腺管構造を認める患者では、認めない患者に対して高い生化学的再発率を示しました。
●手術検体における前立腺がん面積(中央値)は427.7mm²、篩状腺管構造の面積(中央値)は8.85mm²であり、篩状腺管構造の占める割合は2.24%(中央値)であり、多変量解析では篩状腺管構造の占める割合はパターン4前立腺がんにおける独立した予後因子であることが判明しました。
【研究の背景】
前立腺がんの組織学的悪性度の指標には グリーソン分類が古くから用いられてきました。グリーソン分類は前立腺がんの腺の構造と浸潤増殖様式により1から5の5つのパターンに分類されます。1は正常な腺構造に近い形態を示し悪性度が低く、5がもっとも悪性度が高いパターンです。悪性度の高いパターン4には、①癒合腺管、②篩状腺管、③不明瞭な管腔形成、④糸球体様構造の4型がありますが、篩状腺管構造はこのなかで予後不良と言われています。
しかし、前立腺がんは1つのみのパターンだけではなく複数のパターンが含まれることが少なくありません。グリーソンスコアは最も多いパターンと2番目に多いパターンを合計し悪性度の指標としたもので、2~10の9段階に分けられます。例えば最も多いパターンが3で、2番目が4であれば、3+4=7となります。
このグリーソン分類は、定期的に行われる国際泌尿器病理学会により改訂されています。最もみられることが多いスコアは7ですが、3+4=7と4+3=7では後者の方が予後不良であるため最近の改訂ではスコアをつける際にはパターン4の割合を記載することが推奨されるようになりました。篩状腺管構造はパターン4に含まれる構造のうちもっとも予後不良と言われています。このため篩状腺管構造の含まれる割合により予後が異なる可能性があるものの、これまでパターン4のみのがん組織だけを用いた予後との関連に関する研究が行われていませんでした。
そこで今回の研究では手術検体でグリーソンスコア4+4と診断された108名についてデジタル病理解析で篩状腺管構造の占める割合と生化学的再発との関連を解析しました。
【本研究で得られた結果・知見】
今回の研究により、グリーソンパターン4における篩状腺管構造の占める割合が前立腺全摘患者の術後の生化学的再発と関連していることが明らかとなりました。
【今後の研究展開および波及効果】
今後はグリーソンスコア7(3+4と4+3)の前立腺がん症例を用いて篩状腺管構造と予後との関連を明らかにしていきたいと考えています。また今回の研究で示されたグリーソンパターン4における篩状腺管構造の占める割合が予後と関連するという新たな知見は、今後のグリーソン分類の改訂の際にも重要なエビデンスとなると考えています。
【掲載誌名・DOI】
掲載誌名:Cancer Medicine
DOI:10.1002/cam4.7086
【論文タイトル】
Significance of the cribriform morphology area ratio for biochemical recurrence in Gleason score 4 + 4 prostate cancer patients following robot-assisted radical prostatectomy
【著者】
Kenji Shimodaira¹(*), Rie Inoue², Takeshi Hashimoto¹, Naoya Satake¹, Toshihide Shishido¹, Kazunori Namiki¹, Kazuharu Harada³, Toshitaka Nagao², Yoshio Ohno¹(*:責任著者)
1 Department of Urology
2 Department of Anatomic Pathology
3 Department of Health Data Science
東京医科大学(学長:林 由起子/東京都新宿区)人体病理学分野の長尾俊孝主任教授、泌尿器科学分野の下平憲治講師、大野芳正主任教授らの研究グループは、前立腺がん組織中の篩状腺管構造(シジョウセンカンコウゾウ)の占拠率と術後の生化学的再発との関連についてデジタル病理システムを用いて解析し、篩状腺管構造が術後の生化学的再発に強く関連していることを明らかにしました。この研究成果は、定期的に行われている国際泌尿器病理学会による前立腺癌の悪性度分類の改訂の際に重要なエビデンスとなると考えられます。この研究結果は、2024年3月13日に、国際医学誌Cancer Medicine誌 (IF 4.000)にオープンアクセス論文として掲載されました。
【本研究のポイント】
●前立腺がんの組織学的悪性度の指標にはグリーソン分類が用いられており、パターン1からパターン5までの5段階に分けられています。
●悪性度の高いパターン4には、①癒合腺管、②篩状腺管、③不明瞭な管腔形成、④糸球体様構造の4型がありますが、篩状腺管構造はもっとも予後不良と言われています。しかし、パターン4のみの前立腺がんで再発との関連を解析した研究はこれまでありませんでした。
●本研究では2018年までに東京医科大学病院で行われたロボット支援前立腺全摘術を受けた1870名のうち手術検体でグリーソンスコア4+4と診断された108名についてデジタル病理解析で篩状腺管構造の占める割合と生化学的再発との関連を解析しました。
●篩状腺管構造を認める患者では、認めない患者に対して高い生化学的再発率を示しました。
●手術検体における前立腺がん面積(中央値)は427.7mm²、篩状腺管構造の面積(中央値)は8.85mm²であり、篩状腺管構造の占める割合は2.24%(中央値)であり、多変量解析では篩状腺管構造の占める割合はパターン4前立腺がんにおける独立した予後因子であることが判明しました。
【研究の背景】
前立腺がんの組織学的悪性度の指標には グリーソン分類が古くから用いられてきました。グリーソン分類は前立腺がんの腺の構造と浸潤増殖様式により1から5の5つのパターンに分類されます。1は正常な腺構造に近い形態を示し悪性度が低く、5がもっとも悪性度が高いパターンです。悪性度の高いパターン4には、①癒合腺管、②篩状腺管、③不明瞭な管腔形成、④糸球体様構造の4型がありますが、篩状腺管構造はこのなかで予後不良と言われています。
しかし、前立腺がんは1つのみのパターンだけではなく複数のパターンが含まれることが少なくありません。グリーソンスコアは最も多いパターンと2番目に多いパターンを合計し悪性度の指標としたもので、2~10の9段階に分けられます。例えば最も多いパターンが3で、2番目が4であれば、3+4=7となります。
このグリーソン分類は、定期的に行われる国際泌尿器病理学会により改訂されています。最もみられることが多いスコアは7ですが、3+4=7と4+3=7では後者の方が予後不良であるため最近の改訂ではスコアをつける際にはパターン4の割合を記載することが推奨されるようになりました。篩状腺管構造はパターン4に含まれる構造のうちもっとも予後不良と言われています。このため篩状腺管構造の含まれる割合により予後が異なる可能性があるものの、これまでパターン4のみのがん組織だけを用いた予後との関連に関する研究が行われていませんでした。
そこで今回の研究では手術検体でグリーソンスコア4+4と診断された108名についてデジタル病理解析で篩状腺管構造の占める割合と生化学的再発との関連を解析しました。
【本研究で得られた結果・知見】
今回の研究により、グリーソンパターン4における篩状腺管構造の占める割合が前立腺全摘患者の術後の生化学的再発と関連していることが明らかとなりました。
【今後の研究展開および波及効果】
今後はグリーソンスコア7(3+4と4+3)の前立腺がん症例を用いて篩状腺管構造と予後との関連を明らかにしていきたいと考えています。また今回の研究で示されたグリーソンパターン4における篩状腺管構造の占める割合が予後と関連するという新たな知見は、今後のグリーソン分類の改訂の際にも重要なエビデンスとなると考えています。
【掲載誌名・DOI】
掲載誌名:Cancer Medicine
DOI:10.1002/cam4.7086
【論文タイトル】
Significance of the cribriform morphology area ratio for biochemical recurrence in Gleason score 4 + 4 prostate cancer patients following robot-assisted radical prostatectomy
【著者】
Kenji Shimodaira¹(*), Rie Inoue², Takeshi Hashimoto¹, Naoya Satake¹, Toshihide Shishido¹, Kazunori Namiki¹, Kazuharu Harada³, Toshitaka Nagao², Yoshio Ohno¹(*:責任著者)
1 Department of Urology
2 Department of Anatomic Pathology
3 Department of Health Data Science
▼本件に関する問い合わせ先 |
|
企画部 広報・社会連携推進室 | |
住所 | : 〒160-8402 東京都新宿区新宿6-1-1 |
TEL | : 03-3351-6141 |
大学・学校情報 |
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大学・学校名 東京医科大学 |
URL https://www.tokyo-med.ac.jp/ |
学長(学校長) 宮澤 啓介 |