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東京女子大学(東京都杉並区、学長:森本あんり)心理・コミュニケーション学科コミュニケーション専攻の藤田恵理特任講師、同専攻の平工志穂教授、東京農工大学(東京都府中市/小金井市、学長:千葉一裕)の田中幸夫教授(*論文出版当時。現在、東京女子大学非常勤講師)の研究チームは、体育実技授業に出席した大学生を対象とした実験によって、こころの準備運動としての「笑い準備運動」が、メンタルヘルスに効果的であるとともに、コミュニケーション・スキルの向上といった大学体育授業の教育効果を高めることを明らかにしました。この成果は「大学体育スポーツ学研究」に掲載され、同誌2023年度優秀論文賞に選出されました。
■研究の背景
近年、大学新入生の約25%が抑うつ症状を有しており、大学生の自己肯定感の低さや対人緊張、コミュニケーション能力の未熟さからおこる疲労感や抑うつ、不安症などコミュニケーション能力の低下やメンタルヘルスの不調が指摘されています。このような時代において大学体育の果たす役割は大きく、大学体育授業により体力向上などの身体的効果や、不安低減などの精神的効果、社会的効果が得られることが報告されていますが、大学体育授業によるコミュニケーション・スキル向上の方法については十分な研究がなされていませんでした。
近年、大学新入生の約25%が抑うつ症状を有しており、大学生の自己肯定感の低さや対人緊張、コミュニケーション能力の未熟さからおこる疲労感や抑うつ、不安症などコミュニケーション能力の低下やメンタルヘルスの不調が指摘されています。このような時代において大学体育の果たす役割は大きく、大学体育授業により体力向上などの身体的効果や、不安低減などの精神的効果、社会的効果が得られることが報告されていますが、大学体育授業によるコミュニケーション・スキル向上の方法については十分な研究がなされていませんでした。
人とコミュニケーションをとるときに相手の表情から受ける影響は大きく、ポジティブな信号を発する笑顔は、社会的コミュニケーションにおいて重要な役割を担っています。さらに、笑いはストレスや緊張を和らげるなどの精神的に良い影響をもたらすことが認められています。笑いによって起こるポジティブな感情は、自分への自信につながり運動を行う際にも好影響をもたらすため、笑いによるこころの準備運動は、メンタルヘルスやコミュニケーション・スキルの向上といった大学体育授業の教育効果へのアプローチとして有効であると考えられます。
そこで本研究では、コミュニケーションを円滑にする効果やポジティブな感情を喚起する効果が期待できる「笑い」を大学体育授業内で活用し、コミュニケーション・スキル向上も意図した「笑い準備運動」を開発することを考えました。
■研究手法
関東圏の四年制大学において体育実技授業を受講した大学生28名を研究対象者としました。本研究での「笑い準備運動」では、実験参加者はロールモデルが笑い準備運動を実施する映像を視聴しながら、ロールモデルの動きを模倣することにより、笑顔を意識的に作ります。笑い準備運動は「スマイル」、「大笑い」、「お腹をかかえて笑う」、「手をあげて笑う」で構成されており、全体として約2分間です。さらに、通常の準備運動として3分程度ストレッチをおこないました。一方、対照群は、通常の準備運動としてストレッチのみを行いました。授業の開始時および終了時に質問紙調査を行い、POMS2短縮版により気分・感情を、コミュニケーション・スキル尺度(ENDCOREs)によりコミュニケーション・スキルを評価しました。
関東圏の四年制大学において体育実技授業を受講した大学生28名を研究対象者としました。本研究での「笑い準備運動」では、実験参加者はロールモデルが笑い準備運動を実施する映像を視聴しながら、ロールモデルの動きを模倣することにより、笑顔を意識的に作ります。笑い準備運動は「スマイル」、「大笑い」、「お腹をかかえて笑う」、「手をあげて笑う」で構成されており、全体として約2分間です。さらに、通常の準備運動として3分程度ストレッチをおこないました。一方、対照群は、通常の準備運動としてストレッチのみを行いました。授業の開始時および終了時に質問紙調査を行い、POMS2短縮版により気分・感情を、コミュニケーション・スキル尺度(ENDCOREs)によりコミュニケーション・スキルを評価しました。
■研究の成果
実験の結果、「笑い準備運動」の実施により、体育実技後の気分・感情変化評価では笑い群のほうが「抑うつ-落ち込み」、「緊張-不安」、「総合的気分状態(主にネガティブな気分状態)」得点が有意に低下し、気分状態が改善することがわかりました。「笑い準備運動」は、笑顔を意識的に作り、笑い声を発するという行動により、脳に「笑っている」と知覚させる(自ら脳をだます)ことで、楽しい・リラックスというポジティブな気分や感情を生み出すことができると考えられます。したがって、「笑い準備運動」により授業前の緊張やストレスを緩和したことが体育授業受講時の気分に好影響を与えたと考えられます。
実験の結果、「笑い準備運動」の実施により、体育実技後の気分・感情変化評価では笑い群のほうが「抑うつ-落ち込み」、「緊張-不安」、「総合的気分状態(主にネガティブな気分状態)」得点が有意に低下し、気分状態が改善することがわかりました。「笑い準備運動」は、笑顔を意識的に作り、笑い声を発するという行動により、脳に「笑っている」と知覚させる(自ら脳をだます)ことで、楽しい・リラックスというポジティブな気分や感情を生み出すことができると考えられます。したがって、「笑い準備運動」により授業前の緊張やストレスを緩和したことが体育授業受講時の気分に好影響を与えたと考えられます。
また、コミュニケーション・スキル評価では、「笑い準備運動」の実施により「表現力」「関係調整」が有意に改善し、コミュニケーション能力の向上が示されました。「表現力」はコミュニケーションの基礎となる言語的な能力であり、「関係調整」は円滑な社会的相互作用を行うための対人スキルです。本研究の「笑い準備運動」により大頬骨筋や眼輪筋などの笑いを表出する顔面表情筋をあらかじめ動かしておくことが、運動前に関節可動域を増加させるストレッチ等の準備運動のように機能して、笑う表情を作りやすくし、顔面の表情によるコミュニケーションの機会を増加させた結果、体育授業内で周囲の仲間への声掛けやコミュニケーションを円滑にすることができたのではないかと考えられます。さらに、準備運動として皆で笑い合うことにより楽しくリラックスした気分を共有し、円滑なコミュニケーションをはかる下地ができたことが、体育授業受講者間の良好な関係を築き、コミュニケーション・スキルの向上といった大学体育授業の教育効果を高めることにつながったと考えられます。
■今後の展開
本研究で開発した「笑い準備運動」は、ユーモア刺激を伴わずに意識的に笑顔を作ることによりポジティブな感情を高める準備運動です。手軽で簡単、費用もかからず万人に適用しやすいことも特徴です。笑うことは自らの心身を整えるだけではなく、まわりの人々にもいい影響を与えます。従って個人のパフォーマンスにも、チームのパフォーマンスにも好ましい結果が得られることが期待できます。今後は大学体育にとどまらず、大学授業で広く活用できる、また日常生活に落とし込み、習慣化しやすい笑い準備運動の開発を進めていきたいと考えています。
■論文情報
藤田恵理特任講師、平工志穂教授(東京女子大学 現代教養学部 心理・コミュニケーション学科コミュニケーション専攻)、田中幸夫教授(東京農工大学)による共著論文「大学体育におけるこころの準備運動としての「笑い準備運動」の教育効果」(大学体育スポーツ学研究、20: 33-47.)が2023年度大学体育スポーツ学研究優秀論文賞(公益社団法人全国大学体育連合)を受賞しました。
▼本件に関する問い合わせ先 |
|
東京女子大学 | |
広報課 | |
住所 | : 〒167-8585 |
TEL | : 03-5382-6476 |
FAX | : 03-3395-1212 |
大学・学校情報 |
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大学・学校名 東京女子大学 |
URL https://www.twcu.ac.jp/ |
住所 東京都杉並区善福寺2-6-1 |
学長(学校長) 森本 あんり |