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今回のパンデミックにおいて世界各国で導入されたデジタル接触確認アプリ(Digital Contact Tracing apps)は、日本にて導入された COCOA と同じく、その多くが既に運用を終了しています。
感染抑制に効果があるのであれば継続的に運用することが合理的なはずのなか、これら各国のアプリが、いつ、どういう理由で終了したのかという点は整理されていませんでした。
そこで、158 か国・地域の 184 アプリを対象に運用状況を網羅的に調査したところ、7%が既に運用を終了していることが明らかとなり、その終了理由を5つに整理することができました。
一部の国では DCT アプリを終了した後に更なる感染拡大がみられたことからも、今回の成果は、今後必要となる「パンデミックを通して継続的に運用可能な DCT アプリ」の開発に向けた基盤となることが期待されます。
■研究の背景
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックにおいて、各国はデジタル接触確認 (Digital Contact Tracing: DCT)アプリを導入しました。
これらは新たな感染対策技術として期待されたものの、感染抑制には有効でなかったという評価もあります。
一方で、国によっては、ある程度有効であったという評価も示されています。
日本で導入された COCOA は患者の全数把握が終了した 2022 年末に終了しましたが、もし接触確認技術が感染抑制に有効なのであれば、改良したうえで運用を継続する選択肢は無かったのでしょうか?この問いに答えようとしても、そもそも、世界各国において導入されたこれらのアプリが、どのように運用を継続し、あるいは終了したのかについて、網羅的な調査は存在しませんでした。
■研究の方法
そこでまず、これまでに公開されてきた、158 か国・地域に跨る 184 の DCT アプリを特定し、網羅性の高い台帳を構築しました。
そのうえで、英語に加えて、これらのアプリを公開した各国の公用語であるフランス語、アラビア語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語にて、各アプリの運用状況と終了理由をオンライン調査しました。
また、平行して、各国の感染者数データ、ワクチン接種率データを集積し、各国の感染動向と各アプリの導入、終了のタイミングを比較可能な形に整理しました(図 1)。
■本研究で分かったこと
世界的に導入された DCT アプリのうち、45.7%が既に運用を終了しており、その背景に、 (1)政策の転換、(2)プライバシー上の懸念、(3)技術的制約、(4)利用者の信頼・受容、(5)感染状況・流行段階の5つの要因がありうることを整理することができました。
また、DCT アプリの運用状況を各国の感染状況と比較することで、感染終息前に運用終了、感染の終息後まで継続運用、運用終了後に再流行、といった各パターンに整理することができました。
さらに、 Google/Apple の提供する接触確認技術を利用しない DCT アプリは、プライバシーや技術的な問題から早期に終了しやすい傾向があったことを明らかにしました。
■本研究の意義・示唆
今回世界中で導入された DCT 技術は、新たな感染症対策技術として、来るべき次のパンデミックのみならず、今後のさまざまな感染症への対策技術として今後も改良が重ねられていくことが期待されます。
そのためには、平時からパンデミック時に至るまで継続的に運用され、感染対策技術として効果を発揮していく必要があります。
今回の研究は、その設計の更新に際した基礎となる各国の運用データ、とりわけ、運用終了と運用継続に関わる背景情報を網羅的に整理した点に大きな価値があります。
また、今回の調査を通じて、運用状況が不明であるアプリが数多く存在することが分かりました。
これは、技術の継続的な改良の制約となることからも、公的な台帳の確立や評価基盤の整備が望まれます。
本研究の成果は、そのための基盤としても有意義なものです。
本研究により、今後は、感染の鎮静化により運用を終了するのではなく、感染段階に応じて接触検知の閾値を動的に変化させたり、よりプライバシーに配慮した設計や特定企業への技術的な依存を低減していくような DCT アプリの実現に向けた研究の発展が期待されます。
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックにおいて、各国はデジタル接触確認 (Digital Contact Tracing: DCT)アプリを導入しました。
これらは新たな感染対策技術として期待されたものの、感染抑制には有効でなかったという評価もあります。
一方で、国によっては、ある程度有効であったという評価も示されています。
日本で導入された COCOA は患者の全数把握が終了した 2022 年末に終了しましたが、もし接触確認技術が感染抑制に有効なのであれば、改良したうえで運用を継続する選択肢は無かったのでしょうか?この問いに答えようとしても、そもそも、世界各国において導入されたこれらのアプリが、どのように運用を継続し、あるいは終了したのかについて、網羅的な調査は存在しませんでした。
■研究の方法
そこでまず、これまでに公開されてきた、158 か国・地域に跨る 184 の DCT アプリを特定し、網羅性の高い台帳を構築しました。
そのうえで、英語に加えて、これらのアプリを公開した各国の公用語であるフランス語、アラビア語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語にて、各アプリの運用状況と終了理由をオンライン調査しました。
また、平行して、各国の感染者数データ、ワクチン接種率データを集積し、各国の感染動向と各アプリの導入、終了のタイミングを比較可能な形に整理しました(図 1)。
■本研究で分かったこと
世界的に導入された DCT アプリのうち、45.7%が既に運用を終了しており、その背景に、 (1)政策の転換、(2)プライバシー上の懸念、(3)技術的制約、(4)利用者の信頼・受容、(5)感染状況・流行段階の5つの要因がありうることを整理することができました。
また、DCT アプリの運用状況を各国の感染状況と比較することで、感染終息前に運用終了、感染の終息後まで継続運用、運用終了後に再流行、といった各パターンに整理することができました。
さらに、 Google/Apple の提供する接触確認技術を利用しない DCT アプリは、プライバシーや技術的な問題から早期に終了しやすい傾向があったことを明らかにしました。
■本研究の意義・示唆
今回世界中で導入された DCT 技術は、新たな感染症対策技術として、来るべき次のパンデミックのみならず、今後のさまざまな感染症への対策技術として今後も改良が重ねられていくことが期待されます。
そのためには、平時からパンデミック時に至るまで継続的に運用され、感染対策技術として効果を発揮していく必要があります。
今回の研究は、その設計の更新に際した基礎となる各国の運用データ、とりわけ、運用終了と運用継続に関わる背景情報を網羅的に整理した点に大きな価値があります。
また、今回の調査を通じて、運用状況が不明であるアプリが数多く存在することが分かりました。
これは、技術の継続的な改良の制約となることからも、公的な台帳の確立や評価基盤の整備が望まれます。
本研究の成果は、そのための基盤としても有意義なものです。
本研究により、今後は、感染の鎮静化により運用を終了するのではなく、感染段階に応じて接触検知の閾値を動的に変化させたり、よりプライバシーに配慮した設計や特定企業への技術的な依存を低減していくような DCT アプリの実現に向けた研究の発展が期待されます。
■論文について
掲載誌
Informatics in Medicine Unlocked (Elsevier 社)
タイトル
Cross-national survey on the termination of Digital Contact Tracing apps: Have we killed the goose that lays the golden eggs?
URL
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352914825000838
DOI
https://doi.org/10.1016/j.imu.2025.101694
原稿公開日
2025 年 11 月 6 日 (オンライン公開)
▼本件に関する問い合わせ先 |
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入試・広報部 企画広報課 | |
立岩 | |
住所 | : 〒135-8548 東京都江東区豊洲3-7-5 |
TEL | : 03-5859-7070 |
FAX | : 03-5859-7071 |
大学・学校情報 |
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| 大学・学校名 芝浦工業大学 |
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|
| URL https://www.shibaura-it.ac.jp/ |
| 住所 東京都江東区豊洲3丁目7−5 |
| 理工系大学として日本屈指の学生海外派遣数を誇るグローバル教育と、多くの学生が参画する産学連携の研究活動が特長の大学です。 東京都(豊洲)と埼玉県(大宮)に2つのキャンパス、4学部1研究科を有し、約9,500人の学生と約300人の専任教員が所属。 2024年には工学部が学科制から課程制に移行。 2025年にデザイン工学部、2026年にはシステム理工学部で教育体制を再編し、新しい理工学教育のあり方を追求していきます。 創立100周年を迎える2027年にはアジア工科系大学トップ10を目指し、教育・研究・社会貢献に取り組んでいます。 |
| 学長(学校長) 山田 純 |
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