芝浦工業大学

【芝浦工業大学・東京都市大学】気泡緩衝材を潰した時の破裂音「プチッ」で異物を見つける!~安全・低コスト・非破壊で異物を検出、環境にも優しい新手法~

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芝浦工業大学(東京都江東区/学長 山田 純)工学部の細矢直基教授(機械工学課程 機械動力学研究室)と東京都市大学(東京都世田谷区/学長 野城 智也)理工学部の矢作修一准教授(機械工学科 機械力学研究室)を中心とする研究チームは、気泡緩衝材の破裂音を音源として利用する、電力を必要としない新しい非破壊検査システムを開発しました。本システムは、ウェーブレット解析を用いて配管内部の異物位置をおよそ2%の誤差で特定可能であり、高価な装置や電力を必要とせず、可燃性物質が存在するような環境下でも安全に使用できる、低コストな非破壊検査手法として期待できます。

■背景:より安全で簡便な非破壊検査を目指して 非破壊検査(NDT: Non-Destructive Testing)は、構造物を破壊せずに健全性を評価する技術であり、配管、タンク、橋梁、機械などの保守に広く用いられています。従来の手法では、スピーカー、レーザー誘起プラズマ、火薬、電気スパークなどを音源として使用していますが、これらは高出力が必要で、可燃性物質が存在するような環境や狭所での使用に課題がありました。
こうした課題を解決するため、芝浦工業大学の細矢教授、東京都市大学の矢作准教授を中心とする研究チームは、身近な気泡緩衝材に着目し、安全かつ簡便な音響検査の可能性を探りました。

■研究概要:気泡緩衝材の破裂音が高精度な音源に
本研究には、芝浦工業大学の清水俊希氏(2021年度卒業)、稲寺正也氏(2019年度卒業)、北海道大学の梶原逸朗 教授が参加しました。本研究は卒業研究として実施されました。彼らは、気泡緩衝材の破裂音が最大40 kHzの周波数成分を含む再現性の高いインパルス音源であり、非破壊検査に用いられる高価な音源装置の代替となり得ることを発見しました。
細矢教授は
「私たちが目指したのは、小型・安価・安全で、どんな環境でも使える音源です。気泡緩衝材は大量生産されており、電源も不要で、建設現場などでも活用できます。」と述べています。
検証実験と成果 研究チームは様々な気泡緩衝材の音圧、パルス幅、周波数帯域などの音響特性を評価することで、非破壊検査に適した気泡緩衝材を選定しました。そして最適な気泡緩衝材を破裂させそのインパルス音源を生成し、これをマイクで測定する非破壊検査システムを構築し、ウェーブレット解析によって反射音を解析することで、配管内部の異物位置を高精度に特定しました。
このシステムは、従来のスピーカー、レーザー誘起プラズマ、火薬などのインパルス音源と比べて、配線の煩雑さや火災リスクを回避でき、可燃性物質が存在するような環境でも安全に使用可能です。シンプルな構成ながら、測定精度は従来装置と同等レベルを達成しました。さらに、気泡緩衝材の大きさや硬さ(フィルム厚)を調整することで音の強度や指向性を制御できることから、気泡緩衝材を非破壊検査に利用できる音源として昇華させました。

■今後の展望:身近な素材から技術革新を
本研究は、荷物を開けたときに、ついプチっとつぶしてしまう。その身近な行為から着想を得たものであり、身近な素材を科学的に再評価することで新たな応用を見出す好例です。
研究チームは今後、温度や圧力条件の異なる環境下での性能評価を進め、携帯型(ハンディタイプ)装置への展開を目指しています。将来的には、より高感度化を図り、複雑構造や深部欠陥の検出にも対応できるよう改良を重ねていく予定です。
細矢教授は次のようにまとめています。
「革新は、必ずしも大規模装置や高価な材料から生まれるとは限りません。身近な素材の中に、社会を支える技術の種があります。」

著者
矢作修一(芝浦工業大学 機械工学第二学科2010年度卒業、現東京都市大学准教授)
清水俊希(芝浦工業大学 機械機能工学科2021年度卒業)
稲寺正也(芝浦工業大学 機械機能工学科2019年度卒業)
梶原逸朗(北海道大学 教授)
細矢直基(芝浦工業大学 教授)

▼本件に関する問い合わせ先

入試・広報部 企画広報課

茂木あずさ

住所

: 〒135-8548 東京都江東区豊洲3-7-5

TEL

: 03-5859-7070

FAX

: 03-5859-7071

E-mail

koho@ow.shibaura-it.ac.jp

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