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工学院大学中尾教授らの研究がCRESTに採択――分子レベルの膜技術を核に統合的分散型水処理システムの開発を目指す

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分子レベルの先進的な膜技術の研究に取り組む、工学院大学工学部環境エネルギー化学科中尾真一教授を代表とする研究チームが、独立行政法人科学技術振興機構(JST)の平成21年度戦略的創造研究推進事業(CREST)に採択された。

 分子レベルの先進的な膜技術の研究に取り組む、工学院大学工学部環境エネルギー化学科中尾真一教授を代表とする研究チームが、このほど独立行政法人科学技術振興機構(JST)の平成21年度戦略的創造研究推進事業(CREST)に採択された。

 CRESTの研究領域である「持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」において、研究課題「地域水資源利用システムを構築するためのIntegrated Intelligent Satellite System(IISS)の適用 」が新規に採択。研究期間は今年11月からの5年5か月間である。
 今回の研究では、(株)日立プラントテクノロジーと、(株)日立製作所、東京大学、東北大学が共同研究として参画している。

 JSTの戦略的創造研究推進事業(CREST)は、社会・経済の変革につながるイノベーションを生み出すシステムの一環として、戦略的に重点化した分野における目的基礎研究を推進し、今後の科学技術の発展や新産業の創出につながる革新的な新技術の創出を目的としたチーム型研究である。研究領域のカテゴリーには、環境やナノテク、ライフサイエンスなどがある。

 今回採択された研究は、複数の膜技術を統合した革新的な水処理システムの開発である。本研究における水処理システムは、適用地域の規模に合わせて50~1000m3/day(一日当たりの容量)の処理能力を有する施設を分散配置するものだ。さらに成熟した自然エネルギーの活用技術や、個々の施設を有機的に連携して運用する情報管理技術を融合して、従来にはない独創的な地域水資源利用システム(IISS)の構築を目指す。
 中核となる膜技術の研究では、膜表面の水構造という分子レベルのミクロな視点から、新たな低ファウリングNF/RO膜(注1)を開発する。また、ファウリングを抑制するMBR(注2)システムを開発する。

 この研究成果により、水資源の乏しい地域において、小規模な施設による下水道の再利用を可能とする分散型水処理システムを構築し、低コストで水処理を実現する。
 
 中尾教授らの研究チームは、先新的な膜技術による水処理のプロセスと、複数の水処理システムを統合して管理運用するシステムの必要性に着目しました。分子レベルのミクロな膜技術を化学的なアプローチよって高度化すると共に、分散配置した水処理システムを統合的に運用するシステム構築に関して実用的な研究を進めていく。

 この研究は、気候変動等により将来さらに深刻化する国内外の水利用の課題に対して、持続可能な水利用を解決する革新的な水処理システムの実現と、人口増加による水不足問題を抱える地域への適用が期待される。

 工学院大学 中尾真一教授は、「我々の地域水資源利用システム(IISS)の構築により、新たな発想の水処理システムを実現し、国内外の水不足の解決に寄与してきたい」と語っている。

参考情報:CRESTの発表内容については、こちら。
       http://www.jst.go.jp/pr/info/info670/index.html


(注1) NF/RO膜
逆浸透膜法(RO膜)の中で、孔の大きさが大体1~2ナノメートルでイオンや塩類(塩の阻止率は0.6以下)などの阻止率が概ね70%以下と低いものをNF膜(Nanofiltration Membrane)。
(注2) MBR (membrane bioreactor) 膜式活性汚泥法
下水や排水の浄化に使われる活性汚泥法で、活性汚泥と処理水との分離に精密ろ過膜を使う方式。
 

▼本件に関する問い合わせ先
 工学院大学広報部
 〒163-8677 東京都新宿区西新宿1-24-2
 TEL: 03-3340-0126
 FAX: 03-3340-2440