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日本大学・泰羅雅登教授らのグループが「隠匿情報の検出」に関する論文を科学誌『ニューロイメージ』に発表──脳は「本人しか知り得ない事実」に無意識に反応する

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日本大学大学院総合科学研究科(東京都千代田区・中村二朗科長)の泰羅雅登(たいら・まさと)教授(生命科学専攻、医学部応用システム神経科学)及び野瀬出(のせ・いずる、文教大学)、村井潤一郎(むらい・じゅんいちろう、文京学院大学)のグループが、機能的MRIを使った『脳活動から隠匿情報の有無を明らかにする』の論文を発表。科学誌『ニューロイメージ』に掲載された。

・雑誌名: NeuroImage 2009 Feb 15; 44(4):1380-6
・論文名: Disclosing concealed information on the basis of cortical activations
      脳活動から隠匿情報の有無を明らかにする
・著 者: Izuru Nose, Jun'ichiro Murai, and Masato Taira
      野瀬 出、村井潤一郎、泰羅雅登

(要 旨)
 一般に行われるポリグラフ検査(うそ発見)では、事件と関連する情報を容疑者に提示した際の、容疑者の生理的反応(皮膚電気活動、呼吸曲線、脈波など)を観察して、容疑者がその情報を知っているかどうかを判定している。本研究は、機能的MRIを使って、その際の脳内メカニズムを明らかにし、また、脳活動のパターンから、「本人しか知り得ない事実」を持っているかどうかを高確率で判定できる可能性を示した。

 実験では38名の被験者を、5枚のトランプカードの中から1枚を選択させて、そのカードの情報を「本人しか知り得ない事実」として持たせた「隠匿情報ありグループ」(19名)と、何もしていない「隠匿情報なしグループ」(19名)に分けた。その後、すべての被験者に、6枚のカードを繰り返し次々にランダムな順序で見せて、ある特定のカード(隠匿情報ありグループが選択したカードとは異なるカード)が出たらボタンを押すという課題を行わせて、MRI装置を使い脳活動を計測した(機能的MRI)。

 その結果、「隠匿情報ありグループ」の被験者では、自分が選択したカード、すなわち「本人しか知り得ない事実」が提示されると、特にそのカードに対して何の反応(行動)も求められていないにもかかわらず、特異的な脳活動パターンがみられた。なかでも、前頭前野腹外側部(VLPF)の反応は、各被験者が「本人しか知り得ない事実」を持っているかどうかの判定に最も有用で、この領域の活動量に基づいて「隠匿情報ありグループ」19名中16名、「隠匿情報なしグループ」19名中16名の被験者を正しく判定することができた(正判定率:84.21%)。

 MRI装置による検査は、一般のポリグラフ検査に比べ、装置や検査状況・条件が特殊であるので犯罪捜査などへの応用にはまだハードルがある。しかし、その特性から考えた場合、「本人しか知り得ない事実」を持っていることを明らかにするというよりは、持っていないことを証明したい場合に、ポリグラフ検査と合わせて活用できる可能性がある。

▼本件についての問い合わせ先
 日本大学医学部応用システム神経科学
 教授 泰羅 雅登(たいら・まさと)
 東京都板橋区大谷口上町30-1
 TEL: 03-3972-8111(内線2231)
 E-mail: masato@med.nihon-u.ac.jp