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帝京大学観光経営学科が大学生の「海外旅行意識調査」を実施 ~若者の海外旅行熱は減退しているか?~

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近年、若者たちの間でかつてのような海外旅行熱が薄れているのではないかとの指摘があり、旅行業界でもそうした傾向を懸念しているという。こうした中、帝京大学経済学部観光経営学科の石井昭夫ゼミでは、同大生の海外旅行に関する意識調査を実施。その調査結果に基づき、ゼミ内では活発な議論が繰り広げられている。

 今回行われた調査は「帝京大生の海外旅行に関する意識調査」。近年、若者たちの間でかつてのような海外旅行熱が薄れているのではないかとの指摘があり、旅行業界でもそうした傾向を懸念しているという。これまで、こうしたテーマに直接関わる調査が行われた事例が見当たらないため、帝京大学経済学部観光経営学科の石井昭夫ゼミが企画し、大学事務当局および諸先生の協力を得て、ゼミの調査研究の一環として意識調査を実施した。

 調査の方法は「アンケート調査」による。ゼミ授業の一環として行うため、ゼミの授業時間である7月3日(金)の第3時限(13:00~14:30)に行われる帝京大学八王子キャンパスの授業の中から無作為に24の授業を選び、担当の諸先生方の協力を得て質問票を配布・回収して行った。回収結果は1,056票、うち有効回答1,055票を得た。

◎調査結果の概要
【1】海外旅行の経験
  1)帝京大学八王子キャンパスの学生の海外旅行経験率は51.5%
  2)性別では女性のほうが海外旅行率が高い(男性49.5%、女性54.2%)
  3)海外旅行の経験回数は「1回のみ」が49.7%、「リピーター」が44.0%
  4)「中学・高校」で72.2%が海外旅行を経験、大学生になってからは14.7%が経験
  5)「両親や親戚の人と」が51.9%、「修学旅行で」が41.0%
  6)行く先は近隣アジア諸国とハワイ・グアム・サイパンなどのビーチリゾートがともに約40%

【2】大学生のうちに海外旅行の予定(希望)は?
  1)「是非したい」39.4%、「できればしたい」35.7%、「する気はない」8.7%、など
  2)海外旅行に行くなら誰と?
    「友達と」(84.6%)、「家族と」(25.9%)、「一人で」(20.8%)、など
  3)行ってみたいところは「ヨーロッパ」がダントツの73.2%
  4)積極的に海外旅行したいと思わない人の理由は?
    「お金がない」(53.9%)、「言葉がわからなくて不安」(37.8%)、「先に国内旅行したい」(35.4%)、
    「そもそも海外旅行に興味がない」(24.8%)、「飛行機が嫌だから」(9.8%)、
    「ほかにしたいこと(ほしいもの)がある」(11.8%)、など
  5)ほかにほしいもの(したいこと)って?
    ほしいもの:バイク、パソコン、車、楽器、服・アクセサリー、などなど
    したいこと:友達と楽しむ(遊ぶ)、興味のあることの勉強、マンション購入のための貯金、行事の資金、
          趣味に使う、部屋の改善、本の収集、などなど

【3】「若者の海外旅行離れ」についてどう思う?
    「そうは思わない」50.5%、「そう思う」34.3%、「その他」(12.4%)など

◎調査の結論
 調査の目的は「若者(学生)の間で海外旅行熱が低下しているか」との問題提起に対して答えを見出すことであったが、調査結果をもとに石井ゼミにて学生たちと論議してみた結果では、「かならずしもそうではない」、あるいは「そういうためには検証してみるべきことが多い」という結論となった。

 論点としては、
●若者世代の海外旅行の実数が減少していることについては、例えば10年前の若者世代より若者の人口自体が減少していることとの関係を確認する必要がある。
●年齢別、性別の海外旅行統計を詳細にチェックし、ライフスタイルとの関係を調べて、その中で現在の若者の特徴をみると面白いのではないか。
●海外旅行の統計では目的別のデータが公表されていない。観光ないし観光に準ずる旅行のほうが、業務出張その他の義務的旅行より、相対的に円安、不景気、安全といった要素に左右されやすい。この点では若者、とくに学生は業務出張などの機会がなく、また、熟年層より金銭的自由度が少ないなど、行きたくないのではなく「お金がなくて行けない」が圧倒的なのだから、これを海外旅行「熱」の高低いに還元することには疑問がある。
●「海外旅行熱が減退している」といっても、「いつと、何と比較して」そういうのかが明確にされていない。海外旅行が困難で高嶺の花であった時代に比べれば、行こうと思えば簡単に行ける時代なので、飢餓感のような海外旅行熱が薄れるのは当然である。大学の1~2年生が73%を占める母集団の51.1%が海外旅行を経験しているということ自体が海外旅行への関心の高さを証明しているともいえる。もう少し違う視点の調査が必要であろう。
●海外よりも前に「国内旅行をしたい」と答えた人が35.4%あることも考慮すべき点である。大学生になって、まだ自前でそれほど旅行する機会がない時点では、「国内旅行か海外旅行か」という選択の優先順位についてもう少し詳しく見てみる必要があるだろう。
 などが挙げられている。

 石井ゼミでは、今回得られた論点について、既存の調査統計資料を検討しながら、今後のゼミ授業の中で整理していきたいとしている。

▼本件に関する問い合わせ先
 帝京大学経済学部観光経営学科教授 石井昭夫
 TEL・FAX: 042-486-2706
 E-mail: pai-ishii◎msj.biglobe.ne.jp
 ※「◎」は「@」(アットマーク)を示します。