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青山学院大学大学院理工学研究科・重里有三教授らの研究グループが高性能p型酸化物半導体薄膜の合成方法を確立

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青山学院大学大学院理工学研究科(神奈川県相模原市)重里有三教授らの研究グループはこのたび、高性能なp型半導体である一酸化錫(SnO)薄膜の合成方法を確立し、p型電導機構を解明した。この研究成果は、米国物理学協会発行の応用物理学専門誌『Journal of Applied Physics』に掲載された。

 さまざまな高精細表示素子や大容量記憶素子に応用されている酸化物半導体薄膜のほとんどは、n型と呼ばれる半導体である。しかし、近年、例外的な存在であるp型の酸化物半導体薄膜に関する研究が活発になってきた。それは、p-n接合と呼ばれる半導体デバイスの構造構築が酸化物薄膜の積層のみで可能になり、新しいデバイスの創出が期待できるからである。

 重里研究室ではドイツのフラウンホーファーFEP(有機エレクトロニクス・電子ビーム・プラズマ技術研究所) との共同研究で、反応性スパッタリングという機能性化合物薄膜合成法に超高速でのin-situフィードバックシステムを適用することに成功し、多くのn型酸化物薄膜の高速合成法を確立してきた。この合成方法では、さまざまな化合物の化学量論組成比を広い範囲で精密に制御することが可能となる。

 酸化錫は非常に興味深い物質で、最も安定な二酸化錫(SnO2)は顕著なn型の特性を示すが、一酸化錫(SnO)は二次元的な層状の結晶構造を持ち、p型の特性を示す。前述の合成プロセスにさらに工夫を重ねることで、今回、p型、n型両方の高性能な酸化錫薄膜を連続的に合成し、それらの薄膜の構造解析や電子状態解析に成功した。

 これらの研究成果は、米国物理学協会 (American Institute of Physics)が発行する応用物理学専門誌『Journal of Applied Physics』に掲載された(J.Appl.Phys.127, 185703 (2020))。

【論文の題名】
 ''p-type conduction mechanism in continuously varied non-stoichiometric SnOx thin films deposited by reactive sputtering with the impedance control''

【著者】
 賈 軍軍(元:理工学部化学・生命科学科助教・重里研究室)
 数金 拓己(理工学研究科理工学専攻博士前期課程修了・重里研究室)
 中村 新一(元:理工学部附置機器分析センター)
 重里 有三(理工学研究科教授)

▼研究に関する問い合わせ先
 青山学院大学 理工学部 化学・生命科学科 重里有三研究室
 e-mail: yuzo@chem.aoyama.ac.jp

▼取材に関する問い合わせ先
 青山学院大学 政策・企画部 大学広報課
 https://www.aoyama.ac.jp/companies/interview.html