【名城大学】タイの温泉に生きるシアノバクテリアから新しい天然サンスクリーンを発見
・タイの温泉から単離したシアノバクテリアから新規のマイコスポリン様アミノ酸を同定した。
・この物質は環境ストレスに晒されることで生産量が増え、抗酸化作用と高い安定性を示した。
・この物質の合成に関与する遺伝子群を特定し、環境ストレスとの関わりを確認した。
・将来的にサンスクリーンやスキンケア製品、機能性食品への応用が期待される。
【研究の背景】
地球上には、極地や砂漠、温泉などの極限環境に適応して生きる微生物が数多く存在します。シアノバクテリア(ラン藻)(注1)は地球の至る所に存在しており、紫外線、塩分、乾燥、高温、低温といった強い環境ストレスにさらされながらも、生存に有利にはたらく特殊な二次代謝物質を生み出して多様な環境に適応してきました。その一つがマイコスポリン様アミノ酸(MAA)(注2)と呼ばれる天然の紫外線吸収物質です。MAAは紫外線を効率よく吸収することで細胞を保護すると同時に、抗酸化・抗炎症・抗老化など多様な生理活性を示すため、化粧品や機能性食品への応用が注目されています。これまでに70種類以上のMAAが知られており、シアノバクテリアをはじめ海藻や微細藻類など多様な生物から発見されています。しかし、極限環境に生息するシアノバクテリアにおける新規MAAの探索はまだ十分に進んでいませんでした。
【研究内容と本成果の意義】
本研究では、タイのラーチャブリー県にあるボー・クルエン温泉から単離したシアノバクテリア Gloeocapsa sp. BRSZ 株(図1)から、新規のマイコスポリン様アミノ酸(MAA)である GlcHMS326 を発見しました。GlcHMS326は、シアノバクテリア由来MAAとしてこれまでに報告のない「グリコシル化・ヒドロキシ化・メチル化」という三重の化学修飾を持つMAAです(図2)。
これらの成果は、極限環境に生きるシアノバクテリアが独自に代謝経路を進化させ、特殊な天然の紫外線吸収物質を生み出す仕組みの解明につながるもので、生命科学・環境科学分野における基礎的知見として大きな意義を持ちます。また、GlcHMS326は紫外線防御と抗酸化作用を併せ持つことから、将来的にはサンスクリーンやスキンケア製品、機能性食品の素材としての応用が期待されます。
【研究助成金】
本研究はJSPS科研費24K08623および日比科学技術振興財団の助成を受けたものです。
【用語解説】
注1 シアノバクテリア(ラン藻)
酸素発生型光合成を行うバクテリア。植物の葉緑体の祖先となったと考えられている。水域、陸域を問わず、地球上に多種多様なラン藻が広く分布している。
注2 マイコスポリン様アミノ酸(Mycosporine-like amino acid, MAA)
ラン藻、微細藻類、海藻などがつくる天然のサンスクリーン剤。これまでに、60種類を超える MAA 類の化合物が報告されている。共通の基本構造にアミノ酸類が結合した化合物で、UV-A, UV-B 領域の波長を吸収するという特徴がある。
【掲載論文】
雑誌名:Science of The Total Environment
タイトル:Discovery of a novel natural sunscreen from thermophilic cyanobacteria with a potentially unique biosynthetic pathway and its transcriptional response to environmental stresses
著者名:Sasiprapa Samsri#, Taiki Aono#, Sophon Sirisattha, Yasuhiro Nishikawa, Osamu Hara, Stephen B. Pointing, Hakuto Kageyama*, and Rungaroon Waditee-Sirisattha*
(#:共同筆頭著者,*:共同責任著者)
掲載日時:2025年12月2日(日本時間)に電子版に掲載
DOI: 10.1016/j.scitotenv.2025.181006
【本件に関するお問い合わせ先】
・研究内容に関すること
名城大学大学院総合学術研究科
教授 景山 伯春(かげやま はくと)
Tel: 052-838-2609
Email: kageyama@meijo-u.ac.jp
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