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【東京薬科大学】薬学生がVRで「口腔アセスメント」を学ぶ新たな教育モデルを開発~薬剤師・歯科医師の連携を支える実践型教育の可能性を検証~

【東京薬科大学】薬学生がVRで「口腔アセスメント」を学ぶ新たな教育モデルを開発~薬剤師・歯科医師の連携を支える実践型教育の可能性を検証~
近年、薬剤師には、抗がん剤治療に伴う口腔粘膜炎や薬剤関連顎骨壊死などの口腔有害事象を早期に発見し、歯科医師をはじめとする専門職へ適切につなぐ役割が期待されています。一方、薬学教育では、患者への声掛けや口腔内の観察手順を実践的に学ぶ機会は限られていました。
東京薬科大学薬学部医薬品安全管理学教室 吉田謙介講師、清海杏奈講師、杉浦宗敏教授らの研究グループは、新潟大学医歯学総合病院 医療連携口腔管理治療部の黒川亮特任助教との共同研究により、Virtual Reality(VR)を活用した薬学生向け口腔アセスメント教育プログラムを開発し、その教育的有用性を探索的に評価しました。本プログラムを薬学部2年生13名に実施した結果、薬剤師と歯科医師の連携への理解や口腔アセスメントを実施する自信、関連知識の向上が認められました。本研究は、薬学生が臨床場面を疑似体験しながら口腔アセスメントと多職種連携を学ぶ新たな教育モデルの可能性を示すものであり、薬学教育や医療人材育成への応用が期待されます。研究成果は、国際学術誌『Frontiers in Virtual Reality』に2026年7月17日付で掲載されました。

ポイント

  • 薬学生の口腔アセスメント手順の正答率が15.4%→84.6%へ大幅改善
  • 薬剤師・歯科医師の連携に対する理解と実戦への自己評価が有意に向上
  • 日本有病者歯科医療学会指導医と日本医療薬学会指導薬剤師が共同監修した実践型VR教材

概要

薬物療法に伴う口腔粘膜炎や薬剤関連顎骨壊死などの口腔有害事象は、患者の生活の質(QOL)や治療継続に影響を及ぼします。そのため、薬剤師が口腔内の変化に気づき、歯科医師と連携して患者を支援することが重要です。しかし、薬学部教育では、患者への声掛けや観察時の姿勢、口腔内の確認手順などを臨床場面に近い形で学ぶ機会が十分ではありませんでした。
そこで本研究では、歯科医師と薬剤師の共同監修により、360度映像を用いたVR教材を開発しました。教材では、患者が座った状態と横になった状態での口腔アセスメント、適切な観察方法と不適切な方法の違いなどを、臨場感のある映像で学べるようにしました。
歯科医師による講義、VR体験、薬剤師による振り返りを組み合わせた教育プログラムを実施し、受講前後のアンケートと知識試験を比較した結果、薬剤師と歯科医師の連携に対する理解、口腔アセスメントへの関心、実践に対する自信が向上しました。また、患者とのコミュニケーション、口腔アセスメントの手順、口腔粘膜炎が生じやすい部位に関する知識でも改善が認められました。

研究背景

がん薬物療法の高度化に伴い、薬剤師には薬剤の適正使用を支援するだけでなく、治療に伴う有害事象を早期に把握し、他の医療職へつなぐ役割が求められています。特に、口腔粘膜炎などの口腔有害事象は、患者の食事、会話、服薬、治療継続に影響する可能性があります。
一方、口腔アセスメントには、観察する部位、患者の姿勢、声掛け、照明の当て方など、視覚的・空間的な理解が必要です。講義や静止画像のみでは、実際の臨床場面を具体的にイメージすることが難しいという教育上の課題がありました。
VRは、患者に直接接触することなく、臨床場面を学習者の視点から疑似体験できる教育手法です。しかし、薬学生を対象に、口腔アセスメントと薬剤師・歯科医師連携を組み合わせて評価した報告は限られていました。

研究内容

本研究は、東京薬科大学薬学部2年生13名を対象とした、単施設の前後比較による探索的パイロット研究です。参加者には、大学における歯科教育およびVR機器の使用経験がありませんでした。
教育プログラムでは、まず歯科医師が薬剤師に必要な歯科・口腔領域の基礎知識を講義しました。その後、学生はヘッドマウントディスプレイ「Meta Quest 3」を用い、360度映像による口腔アセスメントを体験しました。VR教材には、患者への声掛け、口腔内の観察手順、患者の姿勢、適切な方法と不適切な方法の比較などを盛り込みました。VR体験では、歯科医師・薬剤師による解説を交えながら360度映像を視聴し、体験後には薬剤師が口腔粘膜炎の評価や観察上の留意点について補足説明を行いました。受講前後の比較では、薬剤師と歯科医師の連携を具体的に説明できるという自己評価や、口腔アセスメントを実施できるという自信が大きく向上しました。知識試験では、患者の口腔内を観察する際の薬剤師の適切な対応に関する正答率が15.4%から84.6%へ上昇しました。
受講後には、参加者全員がVRを用いて口腔アセスメントを学ぶことができたと肯定的に評価しました。没入感、手順の理解しやすさ、映像の明瞭さが評価された一方、機器の重量の軽減、観察部位を拡大する機能の拡充、VR機器の台数の確保など、今後の改善点も明らかになりました。

今後の展望

本研究は、少人数を対象とした探索的なパイロット研究であるため、今後は対象者数を拡大し、従来型の教育方法との比較、学習内容の長期的な定着、実際の技能への影響を検証する必要があります。
また、口腔粘膜炎の重症度評価、多様な患者事例、服薬指導、病棟での多職種連携などを取り入れた、より双方向性の高いVR教材の開発を進めます。将来的には、薬学生だけでなく、薬剤師、歯科医師、医師、看護師などを対象とする多職種連携教育への展開を目指します。
さらに、研究グループがフランスの医療従事者と進めている薬剤師主導の口腔ケア教育プログラムの国際共同研究とも連携し、VR教材を含む教育モデルの国際展開を検討します(参考:日本発の薬剤師主導「口腔ケア教育プログラム」〜フランスでの実装に向け国際共同研究を開始~)。ヘルスアクションプログラム(Health Action Program:HAP)注1の理念に基づき、薬学教育・歯学教育を横断する取り組みとして、医療DXを活用した新たな医療人材育成モデルの構築と社会実装を進めていきます。

論文情報

掲載誌:Frontiers in Virtual Reality
論文タイトル:Implementation and evaluation of a virtual reality-based oral assessment training program for pharmacy students: a pilot study
掲載日:2026年7月17日
DOI:10.3389/frvir.2026.1867017

用語解説

注1:「ヘルスアクションプログラム(HAP)」は、薬学教育・歯学教育の連携によって、科学的根拠に基づく健康教育を社会に実装することを目的とした取り組みです。

本件に関するお問い合わせ先

【研究に関するお問い合わせ】
東京薬科大学 薬学部 医薬品安全管理学教室 講師 吉田謙介(ヨシダ ケンスケ)
〒192-0392 東京都八王子市堀之内1432-1
電話:042-676-6622
E-mail:yoshida[at]toyaku.ac.jp ※[at]を@に置換してください

【取材に関するお問い合わせ】
東京薬科大学 入試・広報センター
〒192-0392 東京都八王子市堀之内1432-1
電話:042-676-4921
E-mail:kouhouka[at]toyaku.ac.jp ※[at]を@に置換してください

住所
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TEL
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E-mail
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