卵巣がん転移を抑える新しいメカニズムの解明 セラミド合成酵素2の活性化で卵巣がん細胞の運動能低下 — 摂南大学薬学部・北谷和之講師ら
卵巣がんは婦人科の悪性腫瘍の中で最も予後が悪く、新たながん治療薬の開発が望まれています。
● 卵巣がんは予後不良のがんであり、その原因としてがんの転移が深く関与している
● 高い転移性を示す卵巣がん細胞において、CerS2の発現量は低下していることが判明した
● がん細胞の運動能の促進は転移能を高めることが知られており、CerS2の活性を抑制すると、卵巣がん細胞の運動能は促進し、一方で、CerS2の活性を増強すると、運動能が抑制された
【研究詳細】
卵巣がんは婦人科悪性腫瘍の中で最も予後不良ながんであることが知られています。この予後不良を来す原因が転移です。このがん転移のメカニズムを解明することで、卵巣がんだけでなくさまざまながんに対する新たな治療薬の開発に大きく貢献できることが期待されます。
摂南大学薬学部薬効薬理学研究室の北谷和之講師らのグループは、これまでに生体構成分子であるスフィンゴ脂質セラミドとがんの関連について研究を行っています。今回、セラミド合成を担うセラミド合成酵素2(CerS2)の発現量が転移性がん細胞において低下していること、またCerS2の発現を抑えることで卵巣がん細胞の運動能と転移能が促進することを見い出したことにより、CerS2が抗転移性作用を示すことを明らかにしました。
次に、セラミドには炭素側鎖長の異なる複数の分子種が存在しており、そのうちCerS2によって産生された極長鎖C24:1-セラミドが、卵巣がん細胞の運動性を抑える分子種であることが新たに判明しました。C24:1-セラミドは小胞体(細胞内小器官)でCerS2の触媒作用により生成された後、細胞形質膜に移行します。このセラミドは、セラミド分解酵素セラミダーゼによって代謝分解されます。このセラミダーゼの活性を抑えると、C24:1-セラミド量が上昇するとともに葉状仮足の形成(細胞運動性の指標)が抑えられる現象を捉えました。
以上より、がん転移を抑えるメカニズムにCerS2とその代謝物であるC24:1-セラミドがかかわっていることが今回新たに解明されました。
※1.本成果は2021年1月10日に米国科学誌The FASEB Journal 2020に掲載されました。
(DOI: https://faseb.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1096/fj.202001504RR )
※2.支援:本研究は日本学術振興会科学研究費(16K11125) の支援を受けて行われました。
【用語説明】
注1.セラミド:生体膜を構成するスフィンゴ脂質群の一つであり、プログラム化細胞死や抗炎症応答などさまざまな生理作用の発現に関与している。
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