法政大学

法政大学が大学での学びの意味を問う「初年次教育モデル授業」をWEBで公開

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法政大学FD推進センターでは2007年度~2008年度にかけ、同センターのホームページで文学部心理学科の初年次教育科目である基礎ゼミ(担当:藤田哲也教授)をモデル授業として、教室での授業参観だけでなくWEB上でも公開し、学内外の大きな反響を得た。社会的にも大きな関心を集めるようになってきた初年次教育の実践例として注目されている。

 法政大学では、「自由」と「進歩」という建学精神の下、自立型人材を育成するため学業支援やキャリア支援、学生生活支援など多くの先進的で多彩な独自の学生サポートを展開している。主に新入生を対象とした、高校から大学への学びの移行を促す目的で行われる初年次教育の重要性がここ数年で特に強調されてきており、法政大学でも、主に学部・学科ごとに基礎ゼミ・基礎演習・チュートリアルなどの名称で積極的に展開している。

 このうち、同大学FD推進センターの学習・教育支援プロジェクトのリーダー(任期は2008年度末まで)を務める文学部心理学科の藤田哲也教授担当の基礎ゼミI・II(心理学科の学生対象)では、2007年度と2008年度に行った授業の様子を年間を通して、実際の教室での授業参観はもちろんのこと、時間割が合わなかったり遠方在住で参観が困難な方のためにWEB上でも学内外に公開した。ビデオ撮影や編集は人文科学研究科と工学研究科の大学院生が担当した。

 公開授業の様子などの紹介ホームページのアドレスは下記を参照。研究者・関係者の方などはIDとパスワードを申請することによって、毎回の授業の様子(フルタイム版)の他、ポイントとなる場面のみを10分程度に編集した「見どころ」や、当該の授業の授業案、授業で配付したプリント類などの、より詳細なコンテンツの閲覧が可能。コンテンツは2009年度も継続公開する。
  http://fd.cms.k.hosei.ac.jp/

 「『高校生を大学生に速やかに移行させる』ための教育が初年次教育。学部によって教育目標は異なっていて当然だと思いますが、一方で、初年次教育の教育目標が明確になっていなかったり、専門への導入教育との混同などの問題もあります。このモデル授業は『理想的な授業=正解』を提示するという趣旨ではなく、それぞれの学部や学科で、初年次教育の在り方やより効果的な授業方法について効率的に議論するための参照例としてご覧いただければと考えて公開してきました」と藤田教授は授業公開の経緯を話す。

 前期授業では、高校までの受け身の“勉強”ではなく大学では自発的に“研究”をすることが求められているという学びの転換が起こっていることを学生に気づかせ,その自主的な学びを実現するために必要な、基礎的な学習スキル(ノートの取り方、テキストの読み方・要約の仕方、図書館の使い方、批判的思考、レポートの書き方など)の習得を目的とした。またそれらの学習スキルは、4年後に社会に出てから求められている「社会人基礎力」や「学士力」と通じていることも説明している。同時に、大学生として望ましい学習態度・マナー・生活習慣についても方向付けを行っている。

 後期授業では、班別での協同学習の実践を通じて、ゼミ発表スキルを伸ばすことを目的として行った。単に学生自身に班活動をさせるだけでは、本当の意味での協同にならず、「楽をして単位だけもらう=フリーライダー」が出現したり、それに対する「真面目な学生」の不満が噴出するなどの問題がある。そこでこの基礎ゼミでは、すぐに発表の準備に取りかかるのではなく、後期授業の前半を、協同学習の考え方に基づいた「班での話し合いのトレーニング」にあて、学生に「協同」の有効性を実感してもらうことを重視している。

 「班別の発表のテーマも『オープンキャンパスの場で、法政大学文学部心理学科に進学しようかどうか迷っている高校生に、どのようなことを伝えれば、法政大学文学部心理学科に入学してもらえるか』など1年生にとって自分自身の帰属意識を高め、また具体的に聴き手を想定しやすいテーマを設定しました。学科の魅力・心理学を学ぶ意義など、普段は漠然としか考えていないことを、きちんと他人に伝わるように整理し、また他人を納得させるための情報収集と伝達上の工夫をすることで、自分が所属している学科の魅力が内面化されるようにしています」と藤田教授。
 発表は“構想発表”と“本発表”の2回を設定。指定された発表時間を過不足なく使うという意識や、発表に練習をして臨むことの必要性は、一度発表してみないとなかなか実感できない。しかし、発表の機会が一度しかないと、学生は反省点のみを意識するだけで、必ずしも「自分はちゃんと発表ができる」という自信につながらない。そこで2回目の発表で「リベンジ」できる機会を設け、授業終了後には学生自身が成長を自覚できるようにしているという。
 実際にWEBで構想発表と本発表を比較してもらえればわかることだが、発表の内容・話し方は劇的に向上し、学生も「自主的・積極的に準備をすることの意義と有効性」を正しく認識できるようになるという。

 2009年度の一年間は在外研究で日本を離れカナダに渡る藤田教授は「日本では学会(初年次教育学会)も2008年度に設立されたばかりで、それぞれの大学での取り組みもまだ始まったばかりという段階にあると思いますが、その必要性や重要性を学内外の多くの大学教職員に知ってもらいたい」と話している。

▼本件に関する問い合わせ先
 法政大学 FD推進センター
 TEL: 03-3264-4285、9929
 法政大学 FD推進センターホームページ
 http://www.hosei.ac.jp/fd/