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日本工業大学・石川教授が、単層カーボンナノチューブの低温垂直配向成長に成功

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日本工業大学(埼玉県宮代町)石川豊教授が、単層カーボンナノチューブを400℃で成長させることに成功した。
 従来は一般的に600℃以上の温度が必要であったため、LSI製造工程に、単層カーボンナノチューブの成長工程を組み込むことはできなかったが、本研究により、それを可能にすることが示された。

 日本工業大学(埼玉県宮代町・学長 柳澤章)電気電子工学科・石川豊教授が、単層カーボンナノチューブを400℃で成長させることに成功した。成果は、3月19日にApplied Physics Express誌上でweb公開される。

 単層カーボンナノチューブは、結晶構造によって金属的にも半導体的にもなり、また、金属性の場合、高い電気伝導性を持っている。このためLSI*1素材としての応用が期待されており、液晶ディスプレイの電極材料として、さらに、MEMS*2の部品材としても有望な材料とされている。

*1:LSI(大規模集積回路)とは、IC(集積回路)のうち、素子の集積度が1000個~10万個程度のもの。
*2:MEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)とは、電気的な要素(電子回路、センサーなど)と、機械的な要素(機械要素部品、アクチュエータなど)を一つの基板の上に集積化したデバイス。

 製造方法としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学気相堆積(CVD)法などが試みられてきたが、その中でCVD法は大量生産に向き、比較的低温で成長が可能であるために、実用上有望とされている。
 しかし、その成長温度は、一般的には600℃以上であり、LSI構造の耐熱温度450℃を超えている。したがって、現在のLSI製造工程に、既存の方法による単層カーボンナノチューブの成長工程を組み込むことはできなかった。今回、石川教授は、単層カーボンナノチューブを400℃で成長させることに成功し、LSI製造工程に単層カーボンナノチューブの成長工程を組み込む可能性を示した。

 今回用いた方法は、1400~1700℃程度に熱した炭素フィラメント(炭素の棒)で原料のエチルアルコールを分解し、400~450℃に加熱したシリコンウェハー表面に付着させた触媒金属のコバルト微粒子に炭素を供給したもの。エチルアルコールを用いているため、安全性も高い。

 今回の成果は、原料にエチルアルコールを用いたことと、高温の炭素フィラメントにより原料が分解され低温に保った触媒に供給されたことがキーとなっている。

● 写真1は、シリコンウェハーの上に400℃30分で成長させた単層カーボンナノチューブによる膜の断面電子顕微鏡写真である。厚さは0.2μmある。これにより、LSI製造工程に単層カーボンナノチューブの成長工程を組み込める可能性が示され、さらに、単層カーボンナノチューブの成長のための下地基板に、ガラス等耐熱性の低い材料を選択することが可能となり、応用分野が広がることが期待される。

●写真2は、シリコンウェハー表面に450℃30分で成長させた単層カーボンナノチューブ膜の、断面電子顕微鏡写真である。シリコンウェハー表面からきれいに垂直方向に、ブラシのように成長した単層カーボンナノチューブによる膜の厚さは3μmに達している(垂直配向成長)。

● 写真3-1は、このシリコンウェハー表面に水滴を垂らして側面から撮影したものである。写真3-2の単層カーボンナノチューブのない通常のシリコンウェハー表面の水滴に比べて、水滴がシリコンウェハー表面にはじかれ、接触角が大きくなっていることが分かる。接触角は130°である。単層カーボンナノチューブの膜により、シリコンウェハー表面に高撥水性が得られた。

※概要は以上の通りですが、記事にするため、さらに詳しい資料を要望される方、また直接、石川教授に取材を希望なさる方は、下記へご連絡ください。

▼技術的問い合わせ先: 電気電子工学科 
 教授・石川 豊 
 TEL: 0480-33-7669(直) 
 FAX: 0480-33-7680 
 E-mail: yishika@nit.ac.jp

▼取材・広報に関する問い合わせ先: 広報室
 TEL: 0480-34-4111(代表) 
 E-mail: kouhou@nit.ac.jp 
 http://www.nit.ac.jp

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455 写真3-1

452 写真3-2