玉川大学

世界最速・実用化レベル──玉川大学学術研究所が「大容量データの量子暗号の長距離伝送実験」に成功

大学ニュース  /  先端研究

  • ★Facebook
  • ★Twitter
  • ★Google+
  • ★Hatena::Bookmark

玉川大学 学術研究所 量子情報科学研究センターの広田修(ひろた おさむ)教授と、鹿児島大学工学部 山下喜市教授のグループは、1秒間に10ギガビットの情報を解読不可能な量子暗号に変換し、光通信を用いて300km先まで送信する実験に成功。医療や銀行などの分野にも活用できる量子暗号通信が実用可能なレベルであることを確認した。

 昨今、インターネット上での電子商品取引等が普及し、データを盗聴から守る安全なネットワーク構築の必要性が高まっている。光通信量子暗号(Y-00プロトコル)は、数学的な解読法が存在しないことが保証され、従来の暗号技術では達成できない安全性を超高速で、さらに低コストで実現できるものである。

 これまで玉川大学では、現在の光通信で用いられている毎秒2.5ギガビット、192kmの量子暗号伝送実験に成功している。今回は、次世代の光通信の基盤となる毎秒10ギガビットの暗号通信が可能であるかを実証するため、これに対応する暗号送受信装置を開発し、300kmの室内伝送実験を行った。実験の結果、実用レベルに耐えうる動作を確認した。
 10ギガビットは、全角の文字データに換算すると6億字以上、ハイビジョン放送では10局分にあたるデータ量であり、この情報量の暗号通信の実験成功は世界でも類を見ない。この実験成功を受け、2009年度は500kmの光ファイバ回線をキャンパス内に敷設し、実用化に向けた屋外環境での実験に取り組む。

 この量子暗号の開発によって、データ通信時に盗聴者から情報を完璧に守り、さらに高速で送受信することが可能になる。これにより商品取引だけでなく、郊外に大容量のデータセンターを構築し、遠隔医療や銀行データベースなど、日常生活に密接に関わりのある分野における新たなデータサービスビジネスが実現される可能性も高まっている。

*本研究は2009年8月2日から8月6日まで、米国サンディエゴで開催される”SPIE Conference on Quantum Communication and Quantum Imaging”の招待講演において、玉川大学 広田修が発表する。

*今回の実験は、情報通信研究機構(NICT)からの受託研究の一環として、日立情報通信エンジニアリング株式会社の協力のもと2009年3月23日から3月26日に実施した。

▼本件に関する問い合わせ先
 玉川学園 キャンパス インフォメーション センター
 〒194‐8610 東京都町田市玉川学園6‐1‐1
 TEL: 042‐739‐8710
 E-mail: pr@tamagawa.ac.jp