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玉川大学学術研究所の広田修教授は、「光通信量子暗号(Y-00プロトコル)」が、これまでの暗号理論の限界(Shannon限界)を破ることを例証。その理論を用いた世界最速となる10 Gbit/secでの屋外320km伝送実験に、鹿児島大学工学部の山下喜市教授・大畠賢一准教授と共同で取り組み成功。非常に高い安全性が求められるクラウド・コンピュータシステムの実現に大きく貢献できる見通しを得た。
【背景】
高い安全性を保証した近未来型クラウドシステム実現の要望に伴い、データセンターへの通信回線を盗聴者から完全に守る、超安全なネットワーク構築の必要性が提言されている。その対応技術として、Shannon限界を破るという従来の暗号では不可能な特性を持ち、かつ大容量化が可能な光通信量子暗号(Y-00プロトコル)が注目され、ユーザが求める安全性のニーズに合わせたY-00装置の開発競争が日米で熾烈になっている。
これまで、玉川大学と日立情報通信エンジニアリング株式会社(代表取締役社長:若井勝郎)は2.5Gbit/secの光強度変調-直接検波方式のY-00送受信装置を開発し、実際の商用回線で192kmの伝送実験に成功している。また米国では、NuCrypt社製の2.5 Gbit/sec光位相変調方式Y-00による210kmの商用回線伝送実験の成功が報告されている。
【今回の成果】
今回、玉川大学は本暗号の特質である”Shannon限界超越”の必要条件の物理的意味を解明し、現行技術で実現可能なY-00装置がShannon限界を超越することを理論的に証明した。この理論に基づき、NICT委託研究において鹿児島大学と共同で開発済の10Gbit/sec装置に調整を施し、Shannon限界を超越する能力があることを確認した。さらに、玉川大学に敷設された実験用屋外光ファイバーケーブル(Tama-net 1)を用いて、日立情報通信エンジニアリングの協力のもと、320 kmの伝送実験に成功した。
この成果は、2009年8月5日に米国(San Diego)で開催されたSPIE Conference on Quantum Communication and Quantum Imagingの招待講演として公開した。また、2009年8月10日に榊 裕之:東大名誉教授などを招待して玉川大学で開催される量子情報科学と光通信ワークショップ(電子情報通信学会、光通信システム研究会共催)等においても発表する。
【今後の展望】
今後は、量子最適受信機とランダム化の研究によって、Shannon限界をより超えるための設計手法と実現法の開発を実施する。これにより、従来の単一光子量子暗号は無用となる。
また、伝送装置としての実用化に向け、地球環境も意識した小型、低消費電力、低コストを可能にするための集積化技術開発を鹿児島大学と日立情報通信エンジニアリングで推進する。さらに医療ネットワークへの応用例として、脳腫瘍の遠隔診断システムの実験等を実施し、その汎用性を示しながら本方式の国際標準化を目指す。
▼本件に関する問い合わせ先
【広報】
玉川大学
学校法人玉川学園
キャンパス インフォメーション センター
TEL:042-739-8710
E-mail:pr@tamagawa.ac.jp
鹿児島大学
国立大学法人鹿児島大学
総務部広報室(担当:東)
TEL:099-285-7035
E-mail:sbunsho@kuas.kagoshima-u.ac.jp
【研究内容について】
玉川大学
学術研究所量子情報科学研究センター
広田 修
TEL:042-739-8674
FAX:042-739-8663
E-mail:hirota@lab.tamagawa.ac.jp
大学・学校情報 |
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大学・学校名 玉川大学 |
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URL https://www.tamagawa.jp/ |
住所 東京都町田市玉川学園6-1-1 |
学長(学校長) 小原 一仁 |