立命館大学

立命館大学政策科学研究科が長野県・南信州広域連合の取り組みの調査を冊子『南信州における東日本大震災の被災者への対応―地域分散型震災支援システムの提言―』にまとめ、配布

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立命館大学政策科学研究科では、東日本大震災において光が当てられていない「県境を越えての被災者の大量受け入れ問題」に焦点をあて、現段階で示すことのできる行政制度上の課題と今後へ向けた提言を行うため、長野県・南信州広域連合の取り組みの調査を冊子『南信州における東日本大震災の被災者への対応―地域分散型震災支援システムの提言―』にまとめた。

<背景>
 東日本大震災はわが国における従来の災害対策では困難な課題を数多く発生させた。その一つが、「県境を越えての被災者の大量受け入れの問題」である。
 原発による被害が憂慮された福島県南相馬市では、震災後すぐに行政的な親交のあった長野県飯田市に約100名の住民の受け入れを要請した。飯田市ではそれに応える形で、同市が属する南信州広域連合(※)に応援を依頼し、広域連合としての被災者の受け入れを決定した。そこから、移動に必要なバスや燃料、職員を手配し、本庁の後方支援体制を整え、避難所の確保・準備などをわずか40時間足らずの間に完了させている。受け入れた避難者たちに対しては、各市町村が基礎自治体として可能なかぎりの措置を行い、地域コミュニティや住民組織と一体になって、いち早い地域への融合を図った。しかし、そうした対応から、これまでの災害救助法が想定していなかった課題や、国が推進してきた市町村合併や地方財源削減に対する反省点が浮かび上がってきた。

<調査概要>
調査期間:2011年4月17日(日)~4月19日(火)の3日間
調査エリア:長野県飯田・下伊那地域(南信州)
調査対象:飯田市、豊丘村、下條村、秦阜村、松川村の各役場、および、避難者家族
調査担当者:上子秋生、服部利幸、平岡和久、吉田友彦、森裕之(以上、立命館大学政策科学部教授)、岩本正輝(立命館大学政策科学研究科院生)

<今回の調査で明らかにした主な点>
 1.現行制度が想定する府県をベースにした災害対応のみならず、府県境を越えて直接市町村同士が行う相互支援を進めるため、災害救助法の適用範囲の拡大を含め、国として財源保障の措置を行うべきである。
 2.大量の避難者の受け入れにおいて、基礎自治体は住民生活のあらゆる面への対応をせざるをえないことから、行政分野ごとに自治体による創意工夫が発揮できるよう、国は柔軟で長期にわたる対応を支援する体制をととのえるべきである。
 3.小規模な自治体によるきめ細かな対応が避難者の受け入れにおいて重要な役割を果たしたことから、市町村合併や地方財源削減のような政策を防災政策の観点から再検討することが必要である。

<冊子について>
 発行した冊子は、南信州広域連合に関連する自治体に送付した。また広く自治体関係者やこのテーマに興味のある方に向けて、政策科学部ホームページへのデータ掲載、政策科学部事務室での無料配布を実施する。

【発行部数】
 400部
【配 布】
 (1)南信州広域連合の関係自治体や長野県庁に送付済(200部/6月16日付)
 (2)政策科学部事務室で無料配布(6月23日より開始)
 (3)政策科学部ホームページで冊子のPDFデータのダウンロード
  ※6月23日14:30より開始 URL→ http://www.ps.ritsumei.ac.jp/earthquake/doku.php?id=research:minamishinsyu

【目 次】
1.飯田・下伊那地域における被災者の受け入れ
2.飯田市における被災者の受け入れと対応
3.下伊那郡町村における被災者の受け入れと対応
4.居住空間からみる被災者の受け入れ状況
5.飯田・下伊那地域の自治体による危機対応組織
6.分散型災害救助システムと財源保障
7.地域分散型災害支援システムと地方分権改革

■南信州広域連合と政策科学研究科の関係について
 立命館大学政策科学研究科は、2006年度から開始した大学院GP「ローカル・ガバナンスの政策実践研究」を機に、多くの自治体はNPOとの間で学術交流協定を結んでおり、南信州広域連合もその一つだったことから、避難直後の困難な状況にもかかわらず今回の調査が実現した。

 この他にも政策科学部・政策科学研究科では、東日本大震災に関連する研究活動を実施している。詳しくはホームページ http://www.ps.ritsumei.ac.jp/earthquake/ を参照。