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横浜市立大学の研究グループが、患者における突然変異の発見から細胞内の“ごみ掃除”(自食)に関わる遺伝子の異常が知的障害を引き起こすことを発見

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横浜市立大学学術院医学群遺伝学の才津浩智准教授、松本直通教授らの研究グループはこのたび、SENDAと呼ばれる稀な脳の病気の原因遺伝子を同定した。この遺伝子は、細胞内で自食作用(細胞内の不要成分を自ら分解する働き)に関わっており、細胞内の自食作用の異常が脳内の細胞の異常が知的障害を引き起こす可能性が示された。この研究成果は、英科学誌『Nature Genetics』オンライン版(米国2月24日付)に掲載された。

 SENDAは、脳内鉄沈着神経変性症の一つであり、小児期早期からの非進行性の知的障害と、成人期に急速に進行する錐体外路症状(ジストニアやパーキンソン様症状)、認知症を呈する神経変性疾患である。淡蒼球及び黒質の鉄沈着に加え、T1強調MRI画像で中心の低信号領域を伴う黒質の高信号という特徴的な画像所見を呈する。

 この病気は、まれで、家族歴もみられないため、従来の遺伝学的手法では原因遺伝子を解明することができなかった。
共同研究グループは、全エクソーム解析という、新しい研究手法を2家系(患者1名ずつ)に応用し、両患者に共通してWDR45遺伝子のデノボ変異を認めた。さらに3名の患者について変異解析を行い、すべての患者でWDR45遺伝子変異を認めた。WDR45遺伝子は、オートファジー(自食作用)に必須の分子である酵母Atg18のヒト相同遺伝子であるWIPI4タンパク質をコードしている。共同研究グループは、患者由来のリンパ芽球を用いた解析により、WIPI4タンパク質の発現が著しく減少しており、オートファジー活性の低下とオートファゴソームの形成異常が認められることを明らかにした。

 この研究は、脳内鉄沈着神経変性症の原因遺伝子を明らかにしたばかりでなく、オートファジーの異常と神経変性疾患の関連に関する直接的証明がなされた画期的な研究成果である。今後、オートファジー異常という観点から病態生理の理解がすすみ、同疾患の新しい治療法や効果的な進行抑制方法の開発に大きく寄与することが期待されると共に、他の神経変性疾患や知的障害の病態理解にも寄与するものと期待される。

▼本件に関わる問い合わせ先
 (内容に関する問い合わせ)
  横浜市立大学 学術院医学群 遺伝学(才津、松本)
  TEL:045-787-2606

 (取材対応窓口、資料請求など)
  横浜市立大学 先端医科学研究課(立石)
  TEL:045-787-2527