神奈川工科大学

神奈川工科大学が、ハイビジョンの16倍の超高精細映像素材を非圧縮のままIPネットワークによって伝送蓄積配信することに世界で初めて成功

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学校法人幾徳学園神奈川工科大学(以下「KAIT」、学長:小宮一三)はこのたび企業などと連携し、独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」)が主催した“さっぽろ雪まつり”の実証実験の場で、東京―大阪間の100GbpsのIPネットワークを用いて、ハイビジョンの16倍の解像度を有する超高精細映像素材を非圧縮のまま伝送・蓄積・配信する実験に成功した。2月7日(金)には、「うめきた・グランフロント大阪」(大阪市北区)の知的創造拠点「ナレッジキャピタル」(The Lab)内でこの実験を一般公開する。

 KAITは、NICT、国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (以下「NAIST」)、エヌ・ティ・ティアイティ株式会社(以下「NTT-IT」)、株式会社PFU(以下「PFU」)、日本電信電話株式会社(以下「NTT」)、アストロデザイン株式会社(以下「アストロデザイン」)と共同で、超高精細映像素材の伝送・蓄積配信の実験に取り組んだ。

 このたび世界初の試みとして、2014年2月にNICTが主催した“さっぽろ雪まつり”実証実験(注1)において、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下「NTT Com」)から提供された100Gbpsのイーサネット専用線サービス(注2)を用いて、8K(7680×4320画素・ハイビジョンの16倍)超高精細映像素材(注3)と、4K(3840×2160画素・ハイビジョンの4倍)高精細映像素材(注4)を圧縮せずに、東京-大阪間で同時に伝送・蓄積・配信する実験に成功した。この実験を、2014年2月7日にナレッジキャピタル(The Lab)内で一般公開する。

【背景および今回の実験概要】
 2020年の東京オリンピックの開催決定を契機に、8Kや4Kの高精細映像を利用するアプリケーションの研究開発が加速している。8Kの映像製作には約24Gbpsの伝送ビットレートが必要なため、映像編集や映像効果を付加するためのシステムを一カ所にまとめて構築する必要があった。

 KAITでは2013年4月より関係各社とともに、4Kの高精細映像素材を安定的に伝送、蓄積配信するストリーミングクラウド技術の研究開発をNICTのテストベッドJGN-X(注5)を利用して進めてきた。今回、回線の帯域が100Gbps化されたことにより、4Kよりもさらに高精細な8K超高精細映像も圧縮せずに伝送可能であることが実証されたため、臨場感の高い映像を、その臨場感を損なうことなく遠隔地へ市中ネットワークサービスにより中継することが可能になる。加えて、撮影場所とクラウド設備をシームレスに連携でき、編集に必要な時だけクラウドの設備を使う映像製作やCG(Computer Graphics)合成を含む映像効果をクラウド上で動作させる技術検証が可能となる。

 今回は、8Kカメラ(注6)の映像を用いて4K映像伝送装置(注7)を送信側・受信側ともに4台組み合わせ、同期処理化(注8)することで、8K高精細映像素材のリアルタイム伝送を実現している。また広帯域IP映像サーバ(注9)を2台組み合わせ、同期処理化することで、8K高精細映像素材の蓄積配信を実現している。さらにネットワーク上の安定的な配信を実現するため、高精度なネットワーク計測技術(注10)と8K映像トラヒックメータ(注11)を併用して伝送状況を実時間で観測している。

【今後の予定】
 今回の実証実験での結果を踏まえ、超高精細映像素材を用いたクラウド映像製作ワークフローの確立、マルチメディア研究との連携による新たなメディア製作手法の確立の研究開発を進める。

*この実証実験の実施にあたり、シャープ株式会社、北海道テレビ放送株式会社、NTT Com、ピュアロジック株式会社、およびトランステクノロジー株式会社の協力を受けた。また、この実証実験の一部は、JSPS科研費24800069の助成を受けて進めた。

【注釈】
(注1) さっぽろ雪まつり実証実験
 NICTが新世代ネットワーク技術と放送技術の実証実験の場として、テストベッドJGN-Xを用いた実験フィールドを提供して行う。さまざまなプロジェクトが最新技術を持ち寄り、実験を行う。
(注2)100Gbpsイーサネット専用線サービス
 NTT Comの企業向け専用線サービス「Arcstar Universal Oneイーサネット専用線」のこと。
(参考)http://www.ntt.com/arcleasedline/
(注3) 8K超高精細映像素材
 8Kは現行のフルハイビジョンの約16倍にあたる3300万画素を持つ。さまざまな方式が提案されているが、今回は8Kデュアルグリーン方式,フレームレート60P, 12bit映像(24Gbps)を扱った。
(注4) 4K高精細映像素材
 4Kは2014年に開始を目指す次世代高品質テレビ規格のこと。さまざまな規格があるが、今回は、映像業界での素材として用いられる4K@60P映像(12Gbps)を扱った。
(注5) JGN-X
 NICTが2011年4月から運用している新世代ネットワーク技術の実現とその展開のためのテストベッド環境のこと。KAITはJGN-X利用プロジェクトとして2013年4月に「リアルタイム指向ネットワークコンピューティング技術を用いたストリーミングクラウド機能の検証」というプロジェクトを立ち上げた。KAITがプロジェクトリーダーを務め、NICT, NAIST, NTT-IT, PFU, アストロデザイン, NTT未来ねっと研究所の各組織と共同で、高精細映像伝送・蓄積配信実験を進めている。KAITは、JGN-Xに10Gbpsで接続を行い、NAISTとの間で各種の利用実験を行っている。
(注6) 8Kカメラ
 アストロデザインからAH-4800として製品化された単板式の超小型なカメラユニット。この製品に8K CCU(カメラコントロールユニット)のAC-4802を接続することで、8Kデュアルグリーン方式の映像が出力される。
(参考) http://www.astrodesign.co.jp/japanese/product/ah-4800
(注7) 4K映像伝送装置
 NTT未来ねっと研究所の技術を基にPFUからQool Tornado QG70として製品化されている。QG70を1台で非圧縮ハイビジョン素材(「以下HD」, 1.5Gbpsの伝送レート)を4本同時に送受できる性能を有し、装置内の同期で4Kの非圧縮素材を送受可能である。今回は、装置間の同期を行うことで、8K超高精細素材の伝送を成功させた。
 (参考)http://www.pfu.fujitsu.com/qooltornado/
(注8) 同期処理化
 今回は、HDの1.5Gbpsのレートを単位に、これを複数組み合わせて送受するマルチレーン伝送を行っている。このため、レーン間での映像のずれがないように、映像のフレーム番号と周波数同期を行う。
(注9) 広帯域IP映像サーバ
 NTT未来ねっと研究所の技術を基にNTT-ITからメディアサーバSHS-XMSとして製品化されている。このサーバ装置は、1台で4K@60P(12Gbps)を蓄積・配信できる性能を有する。今回はこのサーバ装置を2台、ネットワーク上に設置し、入出力装置として、メディアゲートウェイ SHS-4KGWを4台使うことで、8K超高精細素材の蓄積・配信を成功させた。 
(参考)http://www.mediaorchestra.com/ipvs/product/p01/index.html
(注10) 高精度なネットワーク計測技術
 JGN-Xは、高精度ネットワーク測定装置PRESTA 10Gを複数配置し多面的な計測ができる環境を用意している。PRESTA 10Gは、10Gbpsのキャプチャ・ジェネレータ機能を有する10ナノ秒粒度で測定可能なネットワーク測定システムであり、NTT未来ねっと研究所の技術を基にNTT-IT社からSHS-NM10Gとして製品化されている。今回は100Gbpsの区間の一部のトラヒックを抜き出して、計測を行った。
(参考)http://www.mediaorchestra.com/ipvs/product/p03/index.html
(注11) 8K映像トラヒックメータ
 複数台の4K映像伝送装置のトラヒックを同時に観測し、使用状況の表示ができるリアルタイムネットワークモニタを新規開発し、実際のトラヒック伝送状況の可視化を行っている。

▼本件に関する問い合わせ先
 神奈川工科大学 工学教育研究推進機構
 〒243-0292 神奈川県厚木市下荻野1030
 担当:山本 博一
 Tel:046-291-3218
 E-mail: yamamotohkz@ccy.kanagawa-it.ac.jp