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理工学研究科・建築計画研究室の院生と理工学部・建築都市デザイン学科の学生がデザインした住宅が「2014年度 グッドデザイン賞」を受賞――立命館大学

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理工学研究科・建築計画研究室の院生と理工学部・建築都市デザイン学科の学生がデザインした住宅が「2014年度 グッドデザイン賞」を受賞した。

 今回の取り組みは、立命館大学と滋賀県栗東市に本社を構える株式会社タナカヤ、株式会社ルポハウスとの共同プロジェクトである。
 
 株式会社タナカヤが持つ滋賀県草津市内の建売物件住宅街の1 区画に、院生・学生がデザイン設計した住宅をモデルハウスとして建設するという取り組みで、昨年7月に学内コンペ(3人1組、8チームが応募)をとして、デザインを募り、応募者による公開プレゼンテーション・投票を経て、グランプリになったチームのアイデアをベースに理工学部の宗本晋作准教授と藤井健史助手のアドバイスを受けながらデザインの検討を重ね、基本設計を行った。

 受賞したデザインは、「距離感の家」と題した20~30代の若い家族の住まいをイメージした戸建住宅で、最大の特徴は、家族同士や近隣とのつながりとプライベート空間の確保という、相反する課題を「距離感」によって両立したことである。

 昨今の住宅は、個室にしっかりと区切られた間取りの住宅が多く販売されている。こうした住宅では、プライベート空間を重視するあまり、家族同士の会話が減ってしまっているという問題を抱えている。

 また、若い世代に見られる傾向として、自治会の行事への参加や近隣との強いつながりを避けて古くからある住宅地ではなく、比較的新しい住宅地を好む傾向がある。こうした新興住宅地では、近隣同士での交流も少なくコミュニティとしての機能が低下しているとも言われている。しかし、近隣同士のコミュニティ機能が低下すると災害時にうまく協力し合えなかったり、街自体に活気がなくなったりという問題を引き起こす。

 こうした現状を踏まえ、院生・学生たちは新興住宅地が抱える課題を解決できる住宅をデザインしようとさまざまなアイデアを出し、検討を重ねた。

 その中で参考にしたのが、コミュニケーションに関する「3mの輪」という距離の概念である。直径 3mの範囲に集れば、無理なく会話が生まれ、一体感のあるコミュニケーションが取れると一般に言われる。オフィスなどにおいては多用される考え方であるが、住宅のデザインとして用いられることはあまりない。今回、この概念をヒントにそれを少し拡張した「4.5mの輪」をデザインに取り入れ、家の中央に「みんなの部屋」と呼ぶスペースを設け、部屋と部屋とが輪の中でつながることができるようにした。

 実際には、部屋と部屋の間は可動式の間仕切りを開閉することでライフルタイルや用途に応じて部屋のレイアウトを変えることができる。そして、家族同士の適度な距離、近隣との交流を促す距離を実現している。

 この住宅は、個人のプライバシーを尊重しつつ、家族同士の会話を弾ませ、また新興住宅地のような元々コミュニティのない場所に近隣とのつながりを生み出し、新しいコミュニティを築いていく効果を評価され、今次のグッドデザイン賞受賞にいたった。

 設計の中心メンバーである田本将之さん(理工学研究科2回生)は「最初の提案では、まったく壁の無いオープンな家を提案していた。しかし、実際に売れる家を作ろうと思ったら、それでは住みづらく購入してもらえない。プロの方に消費者のニーズを教えていただきながら、可動式の間仕切りをつくる、ということでコンセプトをいかしつつ、現実的なデザインに落とし込んでいった。このやり取りが実践的で大変勉強になった」と語った。

 また、同じく中心メンバーである岩瀬功樹さん(理工学研究科2回生)は「住宅は部屋と部屋を壁で区切られた個室で出来ているのが当たり前と考えられている。可動式の間仕切りで、プライベート空間は保障できるが、あえて壁の無い家を作ることでその価値観を変えるような新しい家族の暮らし方を提案したいと思った」と述べている。

※この住宅は11月に見学会を実施し、販売もする予定です。
 詳しくは株式会社タナカヤにお問い合わせください TEL.077-553-8184

6101 外観

6103 家の中。中央に吹き抜けがあり、1階と2階の一体感が生まれます

6102 田本さん(左)と岩瀬さん(右)