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徳島文理大学(学長:田村禎通)薬学部の深田俊幸教授と高知大学医学部の佐野栄紀教授らを中心とした共同研究グループ(※1)は、体内の亜鉛を運搬する分子ZIP10がアトピー性皮膚炎に関与していることを、ヒト臨床検体を用いた研究によって、世界で初めて明らかにした。この研究の成果は公益社団法人日本皮膚科学会『The Journal of Dermatology』の電子版に、日本時間12月26日(木)に掲載される。
■研究の背景
亜鉛は生命の維持に必要な9種類の必須微量元素のひとつである。食事や飲料などに含まれる亜鉛は小腸から吸収され、その後、亜鉛トランスポーター(※2)と呼ばれる亜鉛を運搬する分子によって全身の細胞内に取り込まれる。
一方、何らかの原因によって生体内の亜鉛量が低下すると、皮膚炎をはじめとするさまざまな亜鉛欠乏症の症状が現れる(※3)。
亜鉛は生命の維持に必要な9種類の必須微量元素のひとつである。食事や飲料などに含まれる亜鉛は小腸から吸収され、その後、亜鉛トランスポーター(※2)と呼ばれる亜鉛を運搬する分子によって全身の細胞内に取り込まれる。
一方、何らかの原因によって生体内の亜鉛量が低下すると、皮膚炎をはじめとするさまざまな亜鉛欠乏症の症状が現れる(※3)。
深田教授らの研究グループでは、遺伝子改変マウスを用いた実験から、亜鉛トランスポーターの一つであるZIP10が表皮を形成する細胞へ亜鉛を運搬する働きを担っており、皮膚のバリア機能(※4)に必要であること(図1)を発見し、2017年に発表した(※5)。
皮膚のバリア機能は、皮膚からの水分の蒸散や外来成分の侵入を防ぐ重要な役割を担っている。その機能の喪失は、アトピー性皮膚炎をはじめとするさまざまな皮膚病の症状として現れるが、ヒトの皮膚疾患におけるZIP10の関与は明らかにされていなかった。
そこで、患者数の増加が社会問題となっているアトピー性皮膚炎に着目し、その病変とZIP10の関連性について研究した。
皮膚のバリア機能は、皮膚からの水分の蒸散や外来成分の侵入を防ぐ重要な役割を担っている。その機能の喪失は、アトピー性皮膚炎をはじめとするさまざまな皮膚病の症状として現れるが、ヒトの皮膚疾患におけるZIP10の関与は明らかにされていなかった。
そこで、患者数の増加が社会問題となっているアトピー性皮膚炎に着目し、その病変とZIP10の関連性について研究した。
■研究手法と成果
最初に皮膚病のデータベースを用いて、アトピー性皮膚炎患者由来の臨床サンプルにおけるZIP10遺伝子の量を調査。その結果、アトピー性皮膚炎の病変部において、ZIP10遺伝子の量が有意に減少していることを見いだした(図2A)。
次に、アトピー性皮膚炎患者の皮膚組織を用いて、免疫組織染色によってZIP10タンパク質の発現を解析。その結果、検査した全ての患者の病変部において、ZIP10タンパク質が顕著に減少していることが確認された(図2B)。
これらの結果は、ZIP10の発現や機能の低下がアトピー性皮膚炎の発症や病変に大きく関わっていることを示している(図2C)。
最初に皮膚病のデータベースを用いて、アトピー性皮膚炎患者由来の臨床サンプルにおけるZIP10遺伝子の量を調査。その結果、アトピー性皮膚炎の病変部において、ZIP10遺伝子の量が有意に減少していることを見いだした(図2A)。
次に、アトピー性皮膚炎患者の皮膚組織を用いて、免疫組織染色によってZIP10タンパク質の発現を解析。その結果、検査した全ての患者の病変部において、ZIP10タンパク質が顕著に減少していることが確認された(図2B)。
これらの結果は、ZIP10の発現や機能の低下がアトピー性皮膚炎の発症や病変に大きく関わっていることを示している(図2C)。
■今後の展開と期待
今回の研究から、アトピー性皮膚炎において、表皮を形成する細胞へ亜鉛を運搬するZIP10の発現や働きが低下している可能性が示された。
現在、日本ではアトピー性皮膚炎の患者数が増加の一途をたどっているが、その治療はステロイド系等の医薬品による対処療養的な炎症の軽減が主流であり、バリア機能の正常化を促す根治的な薬や治療法はまだ開発されていない。
今後の研究によって、ZIP10の発現の促進や機能を亢進する医薬品が開発され、アトピー性皮膚炎に対する新しい治療法が確立されることが期待される。
今回の研究から、アトピー性皮膚炎において、表皮を形成する細胞へ亜鉛を運搬するZIP10の発現や働きが低下している可能性が示された。
現在、日本ではアトピー性皮膚炎の患者数が増加の一途をたどっているが、その治療はステロイド系等の医薬品による対処療養的な炎症の軽減が主流であり、バリア機能の正常化を促す根治的な薬や治療法はまだ開発されていない。
今後の研究によって、ZIP10の発現の促進や機能を亢進する医薬品が開発され、アトピー性皮膚炎に対する新しい治療法が確立されることが期待される。
なお、この研究の成果は公益社団法人日本皮膚科学会『The Journal of Dermatology』の電子版に、日本時間12月26日(木)に掲載される。
※1 共同研究グループ
徳島文理大学薬学部 病態分子薬理学研究室
高知大学医学部 皮膚科学教室
韓国 Ajou University
徳島文理大学薬学部 病態分子薬理学研究室
高知大学医学部 皮膚科学教室
韓国 Ajou University
※2 亜鉛トランスポーター
細胞内外の亜鉛の運搬を担う分子で、亜鉛輸送体とも呼ばれる。
細胞内外の亜鉛の運搬を担う分子で、亜鉛輸送体とも呼ばれる。
※3 参考文献
Zinc Signaling (second edition), editors: Toshiyuki Fukada and Taiho Kambe
Springer Nature Singapore, 2019 (ISBN 978-981-15-0556-0)
Zinc Signaling (second edition), editors: Toshiyuki Fukada and Taiho Kambe
Springer Nature Singapore, 2019 (ISBN 978-981-15-0556-0)
※4 皮膚のバリア機能
体表面を被う皮膚には、皮膚からの水分の蒸散や外来成分の侵入を防ぐ役目があり、これを皮膚のバリア機能という。角質を含む表皮や皮脂膜が、皮膚のバリア機能の役目を担っている。アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が著しく損なわれており、皮膚のバリア機能の損失がアトピー性皮膚炎の症状を悪化させている要因の一つとして考えられている。
体表面を被う皮膚には、皮膚からの水分の蒸散や外来成分の侵入を防ぐ役目があり、これを皮膚のバリア機能という。角質を含む表皮や皮脂膜が、皮膚のバリア機能の役目を担っている。アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が著しく損なわれており、皮膚のバリア機能の損失がアトピー性皮膚炎の症状を悪化させている要因の一つとして考えられている。
※5 参考文献
Proc Natl Acad Sci USA, 114:12243-12248, 2017
Proc Natl Acad Sci USA, 114:12243-12248, 2017
図1
・A:ZIP10が欠損すると表皮が著しく薄弱化する(右図)。生後間もない仔マウスの全身像を上段に、皮膚の断面図を下段に示す。
・B:ZIP10が欠損すると皮膚のバリア機能が失われる。バリア機能を失った皮膚は、濃い緑色に染色されている(下段)
・A:ZIP10が欠損すると表皮が著しく薄弱化する(右図)。生後間もない仔マウスの全身像を上段に、皮膚の断面図を下段に示す。
・B:ZIP10が欠損すると皮膚のバリア機能が失われる。バリア機能を失った皮膚は、濃い緑色に染色されている(下段)
図2
・A:アトピー皮膚炎患者の病変部では、ZIP10遺伝子の減少が認められる。
・B:アトピー皮膚炎患者の病変部では、ZIP10タンパク質の減少が認められる(免疫組織染色像:ZIP10タンパク質が褐色に染色されている)。
・C:本研究結果の模式図
健常者の皮膚では、ZIP10が表皮の形成を促してバリア機能を獲得することで健康的な皮膚を形作るが(左)、アトピー性皮膚炎患者の病変部では、ZIP10が減少して皮膚の脆弱化が進み、バリア機能を喪失して病状が悪化することが考えられる(右)。
・A:アトピー皮膚炎患者の病変部では、ZIP10遺伝子の減少が認められる。
・B:アトピー皮膚炎患者の病変部では、ZIP10タンパク質の減少が認められる(免疫組織染色像:ZIP10タンパク質が褐色に染色されている)。
・C:本研究結果の模式図
健常者の皮膚では、ZIP10が表皮の形成を促してバリア機能を獲得することで健康的な皮膚を形作るが(左)、アトピー性皮膚炎患者の病変部では、ZIP10が減少して皮膚の脆弱化が進み、バリア機能を喪失して病状が悪化することが考えられる(右)。
■原論文情報
【著者】
【著者】
Kimiko Nakajima, Mi-Gi Lee, Bum-Ho Bin, Takafumi Hara, Teruhisa Takagishi, Sehyun Chae, Shigetoshi Sano, and Toshiyuki Fukada
【論文タイトル】
【論文タイトル】
Possible involvement of zinc transporter ZIP10 in atopic dermatitis
【雑誌および論文情報】
雑誌: The Journal of Dermatology
DOI: 10.1111/1346-8138.15190
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/journal/13468138
【雑誌および論文情報】
雑誌: The Journal of Dermatology
DOI: 10.1111/1346-8138.15190
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/journal/13468138
▼研究に関する問い合わせ先
徳島文理大学薬学部 病態分子薬理学研究室 教授 深田俊幸
TEL:088-602-8593(教授室)、-8592(実験室)
FAX:088-655-3051
E-mail: fukada@ph.bunri-u.ac.jp
研究室ホームページ: http://p.bunri-u.ac.jp/lab22/
徳島文理大学薬学部 病態分子薬理学研究室 教授 深田俊幸
TEL:088-602-8593(教授室)、-8592(実験室)
FAX:088-655-3051
E-mail: fukada@ph.bunri-u.ac.jp
研究室ホームページ: http://p.bunri-u.ac.jp/lab22/
▼本件に関する問い合わせ先
徳島文理大学 広報企画官 戸川友美
TEL:088-602-8611
徳島文理大学 広報企画官 戸川友美
TEL:088-602-8611
FAX:088-626-6264
E-mail: togawa@tks.bunri-u.ac.jp
E-mail: togawa@tks.bunri-u.ac.jp
大学・学校情報 |
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大学・学校名 徳島文理大学 |
URL https://www.bunri-u.ac.jp/ |
住所 徳島市山城町西浜傍示180 |
学長(学校長) 田村 禎通 |