京都産業大学

【京都産業大学】植物の光合成のオンオフを切り替える 酸化還元タンパク質「チオレドキシン」の新たな制御機構を解明--米国植物科学専門誌「The Plant Cell」オンライン版に掲載

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京都産業大学生命科学部 本橋 健 教授らは、酸化還元タンパク質「チオレドキシン」が、光合成の電子伝達経路の1つ「光化学系Iサイクリック電子伝達経路」の制御に関与し、その制御が植物の成長に必要であることを初めて明らかにした。

植物は吸収した太陽の光エネルギーを電子伝達反応により化学エネルギーに変換し、空気中の二酸化炭素を有機物に固定する光合成をおこなう。光合成電子伝達経路には、リニア電子伝達経路と光化学系Iサイクリック電子伝達経路の2つの経路が知られており、これまで、光化学系Iサイクリック電子伝達反応が植物の光合成と光防御反応に重要であることはわかっていたが、その制御機構については、解明されていなかった。

京都産業大学生命科学部の 本橋 健 教授らは、チオレドキシンという酸化還元制御タンパク質が光化学系Iサイクリック電子伝達経路に関わるPGRL1タンパク質とジスルフィド結合複合体を形成することにより、光化学系Iサイクリック電子伝達経路を直接的に制御することを明らかにした。

植物は周りの環境変化を避けることができないため、環境ストレスに対応するための様々な防御機構を持っている。今後詳細に解析することで、様々な光環境ストレスに対応する光合成の仕組みをさらに深く理解できると考えられる。また、将来的には、光合成の制御機構を改変することで刻々と変化する光環境ストレスに強い作物の開発につながる可能性もある。

むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

<関連リンク>
・光合成のオンオフを切り替えるチオレドキシンの光合成調節における新たな役割を解明
https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20201010_400a_thnews.html
・京都産業大学 生命科学部先端生命科学科 本橋 健 教授
https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/ls/motohashi-takeshi.html
・京都産業大学 生命科学部
https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/ls/

▼本件に関する問い合わせ先

京都産業大学 広報部

住所

: 〒603-8555 京都市北区上賀茂本山

TEL

: 075-705-1411

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E-mail

kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp

d01.jpg 図1 葉緑体における光合成反応
植物は葉緑体のチラコイド膜上で光合成電子伝達反応をおこなうことによって太陽の光エネルギーを化学エネルギーに変換する。光合成電子伝達反応にはリニア電子伝達系路と光化学系Iサイクリック電子伝達系路がある。赤矢印はサイクリック経路による電子の流れを示している。

d08.jpg 図2 シロイヌナズナの多重変異株の植物の生育
m型Trx欠損変異株(trxm124)は野生株より植物個体が小さく生育阻害を示す。一方、光化学系Iサイクリック電子伝達系路を欠損したpgr5変異株との多重変異株(pgr5 trx m124)では植物の生育が回復した。

d003.jpg 図3 TrxによるPSIサイクリック電子伝達活性の抑制
還元型m型Trx(Trxm3除く)が特異的にPSIサイクリック電子伝達活性を抑制した。

d05.jpg 図4 Trx m4によるPGRL1の制御モデル
暗条件でTrx m4はPGRL1と複合体を形成し、PGRL1の活性を阻害する。光合成の誘導期、Trxm4-PGRL1複合体は光合成電子伝達鎖からの還元力によって解離され、PGRL1は活性化する。光合成の定常状態では還元型Trx m4によって再びPGRL1は還元され複合体を形成する。