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【京都産業大学】ミトコンドリアにバレル(円筒)型膜タンパク質を組み込む仕組みを解明 -- 英国科学誌「Nature」(オンライン版)に掲載

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京都産業大学生命科学部 遠藤 斗志也 教授らの研究グループは、SAM複合体が構成タンパク質を入れ替えながら、基質となる膜タンパク質に円筒形(バレル型)の形を作らせつつミトコンドリア外膜に組み込む、新規の仕組みを明らかにした。

ミトコンドリア外膜の(膜タンパク質複合体)SAM複合体について、構成サブユニット(タンパク質)が異なる二つの複合体の高分解能立体構造をクライオ電子顕微鏡解析で決定した。
ミトコンドリア外膜には小分子やタンパク質の通り道を提供するバレル型構造の膜タンパク質(β-バレル型膜タンパク質)が存在し、ミトコンドリアの機能に必須であるが、それらの膜タンパク質がどのようにバレル型をつくって膜に組み込まれるのかはこれまで不明であった。細菌の外膜にも進化的に近い組み込み装置があるが、それとは組み込みの仕組みがかなり異なることもわかった。
ミトコンドリア外膜の機能に必須のβ-バレル型膜タンパク質組み込みのメカニズムの解明により、ミトコンドリアの膜タンパク質組み込みやβ-バレル型膜タンパク質に関連する病気の治療法の開発や、ミトコンドリア膜へのタンパク質組み込みの効率を制御することで老化を防ぐなどの可能性が開けることが期待される。

この研究成果は、2021年1月7日に英国科学誌「Nature」(オンライン版)に掲載された。

むすんで、うみだす。  上賀茂・神山 京都産業大学

<関連リンク>
・ミトコンドリアにバレル(円筒)型膜タンパク質を組み込む仕組みを解明 -- 英国科学誌Nature(オンライン版)に掲載
https://www.kyoto-su.ac.jp/news/2021_ls/20210108_198_release.html
・生命科学部 先端生命科学科 遠藤 斗志也 教授
https://www.kyoto-su.ac.jp/faculty/professors/ls/endo-toshiya.html

▼本件に関する問い合わせ先

京都産業大学 広報部

住所

: 〒603-8555 京都市北区上賀茂本山

TEL

: 075-705-1411

FAX

: 075-705-1987

E-mail

kouhou-bu@star.kyoto-su.ac.jp

a001.jpg 図1: ミトコンドリアへのタンパク質配送経路とSAM複合体
1000種類以上のタンパク質のミトコンドリアへの配送経路(黒矢印)。サイトゾルで合成されたβ-バレル型膜タンパク質は搬入口のTOM複合体を通って外膜を通過し、膜間部からSAM複合体により外膜にバレル型構造を作りながら組み込まれる(図中の経路③)。

a002.jpg 図2: クライオ電子顕微鏡を用いて決定されたSAMdimer複合体の構造
SAMdimer複合体はSam50が2分子、Sam35とSam37が各々1分子ずつから構成される。左は膜面の横から見た構造、右はサイトゾル側から見た構造。

a003.jpg 図3: クライオ電子顕微鏡を用いて決定されたSAMMdm10複合体の構造
SAMdimer複合体はSam50、Sam35、Sam37、Mdm10が各々1分子ずつから構成される。左は膜面の横から見た構造、右はサイトゾル側から見た構造。

a004.jpg 図4: SAM複合体によるβ-バレル型膜タンパク質の外膜への組み込み反応サイクル
SAMdimer複合体のSam50bと基質のβ-バレル型膜タンパク(Tom40, Por1など)とが入れ替わる。基質バレル型構造を形成しながら外膜に組み込まれる。SAM複合体のもう一つのサブユニットMdm10(β-バレル型膜タンパク)がTom40と入れ替わり、バレル型構造を作ったTom40をSAM複合体から追い出す。Mdm10とSam50bが入れ替わって最初の状態に戻る。